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2015年09月23日05:07

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原宏一 『かつどん協議会 (幻冬舎文庫)』  幻冬舎 1999年2月刊

六年前に読んだ小説。
原宏一 『かつどん協議会 (幻冬舎文庫)』 http://goo.gl/Z8bNMQ #bookmeter 幻冬舎 1999年2月刊。2009年10月25日読了。

1997年5月にベネッセコーポレーションから刊行された第一作品集の文庫化。

この著者を読むのは初めてです。

本書をジャンル分けすればユーモア小説ということになるのでしょうか。

美味しそうなカツ丼を見事に描写する標題作と、多数決原理のデメリットを批評する「くじびき翁」と、謝罪を専門的に取り扱う職業 "謝罪士" の登場する「メンツ立てゲーム」の三篇から成る本書は楽しい時間を過ごさせてくれました。

「「くじびきで決めるだあ? と笑うことは簡単じゃ。じゃが、ほんとうにくじびきは多数決より劣っているのか、そこのところを既成概念を捨て去って、まっさらな気持ちで検証してみないことには、なにもはじまらんのじゃよ。あざけったり、あらさがししたりするまえに、そこのところをもっと真摯に考えてほしいのじゃよ」

たしかに新機軸の思想というものは、えてして、それがあまりにも新機軸ゆえに既成概念にとらわれたひとびとの嘲笑の的となる。既成概念にとらわれないゆえに新機軸であるのに、それを既成概念の枠のなかから眺めて笑っているという矛盾。

その矛盾に気づいてくれさえすれば、かならずやくじびき国家主義の素晴らしさにも気づいてもらえる。

そして、みんながこの新思想を理解したあかつきには、まずは国会における首相指名にくじびきを導入する。全国会議員の中からだれが首相に選ばれるのか、それがまったくわからないとなれば、選挙という名の人気投票の結果だって、いまとはかなり違ったものになるはずだ。

つぎに、国会の最終意思決定の場にも導入する。さらには地方行政の首長選出と議会の最終意思決定の場にまで導入する。

「この段階までくれば、くじびき国家主義のメリットが、だれの目にも明らかになっとるはずじゃ。そしていいかな、これはけっして夢物語ではない。みんながその気になれば、いつでも簡単に、なんなく実現できる夢なんじゃ!」

高らかに謳うように語りあげると、老人は、どうじゃというように水戸黄門髭をゆっくりとなでつけた。」p.124 くじびき翁

https://goo.gl/9mgl6u

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