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2015年05月31日02:24

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『二つの宝玉』第2話

『二つの宝玉』第2話


 5月30日当日。サガとカノンはソロ邸の門の前にいた。
「…念を押しておくが、サガ、ジュリアンはおれたちが聖闘士であることも、海闘士やポセイドンのことも、何も知らんのだ。その点をわきまえて、ぼろが出ないように頼む」
「分かった」
 ライトグレーのスーツにブルーのシャツと紺のネクタイをしめてきっちりとした姿をしたサガに対し、カノンはネイビーのジャケットにオフホワイトのパンツ姿というラフなものだ。
「まあ、パーティーといっても、最初は『盛大にやりましょう』とか言うジュリアンをなだめて、何とか家族だけのささやかなものにさせた。出席者もジュリアンと、その母親と、ソレントくらいだ。気楽にやれる…と思う」
「それにしても、カノン、お前の正体を何も知らせていないというわりに、ずいぶんとジュリアン・ソロになつかれているのだな」
「一応、ジュリアンが命を狙われた時に助けたりしているし…。おれもあいつをポセイドンの依り代として利用しようとしたからな。その贖罪というか責任があるというか、全く放っておくわけにも…」
「カノン」
 気がつくとサガがうるうると瞳に涙をにじませていた。
「カノン、お前から『贖罪』とか『責任』という言葉が出るようになったとは…。本当に改心してくれたのだな。兄は嬉しいぞ」
「泣くな、鬱陶しい!」
 サガを怒鳴りつけて、カノンは歩き出した。
「行くぞ、サガ」
「うむ」
 そうして二人がソロ邸の門をくぐった瞬間。
 周囲の景色が変わった。
 頭上には空の代わりに海が広がり、海水を通して日の光がきらめいている。足元にはサンゴや貝のはりついた岩があり、ところどころ石畳も敷かれている。いく本か崩れかかった大理石の柱もあった。
 突如、移り変わった周囲の状況にサガもカノンも呆然とした。
「ここは…海界、か?」
「なんでいきなりこんな…」
 その時、カノンの目の前に上から一枚の紙がひらひらと降ってきた。
「なんだ、これ?」
 カノンが紙を拾い上げる。そこにはこう書いてあった。

『 親愛なる我が海将軍筆頭・海龍へ
  汝の誕生日を祝い、贈り物をする。潮の満ち引きを自在にするという海の秘宝「潮満珠(しおみつたま)」「潮涸珠(しおふるたま)」を汝に授ける。
  試練を乗り越え、秘宝を手に入れるように。
  至高至善の父たるポセイドンより 』

 ポセイドンからの手紙を手に、カノンがふるふると怒りで震えた。
「あの腐れ海皇が〜」
 サガがしみじみと言う。
「…カノン、お前、ジュリアンだけでなく、ポセイドンにもずいぶんと気に入られたものだな…」
「アホかー!どこが気に入ってる!?これは自分を利用しようとしたおれへの嫌がらせだ!おれで遊んでいるだけだ!」
 ポセイドンからの手紙を丸めてカノンが投げ捨てた。
「まあ、状況は分かった。ポセイドンの力で転移させられたんだ。さしずめ、放棄された海底の小神殿の一つ、というところだな」
「しかし、秘宝をくれるのはいいとして、『試練』とは…」
 その時、サガとカノンの頭上が陰った。見上げると、全長十メートルはありそうな巨大な大蛇が舌なめずりしながら二人を見下ろしていた。
「ポセイドンの□※▲○@野郎!」
 およそ良い子には聞かせられない罵声をカノンは海皇に対して浴びせていた。

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