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2015年05月30日01:10

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『二つの宝玉』第1話

 2015年双子誕。「GEMINI FESTIVAL 2015」http://green-sanctuary.raindrop.jp/geminifes2015.html参加作。
 カノンがポセイドンから海界の秘宝をもらう話。
 ジュリアンにでろでろに甘えられ、ポセイドンに遊ばれてるカノンが書きたくて書いた作品。
 「潮満珠(しおみつたま)」と「潮涸珠(しおふるたま)」は日本神話に出てくる玉で、山幸彦が海神からもらい兄の海幸彦を懲らしめるのに使った宝玉。ぐぐってみたら宮崎の鵜戸神宮に実在していた。「潮満珠」は丸い水晶玉のような形で、「潮涸玉」は円柱を四つ重ねたような形だった。こういう神話に出てくる秘宝がしれっと実在してるから日本神話は侮れない。
 ジュリアン(ポセイドン)とカノンの話は『倫敦三重奏』『鮫人の涙 土中の碧』『ボスポラスの夕べ』『森の奥で死者たちは泣く』を参照。


『二つの宝玉』第1話

 
 それはカノンが珍しくソロ邸に顔を出しているときのことだった。
 ソファに腰かけて新聞を読むカノンに、ソレントが紅茶を入れながらふと言った。
「そういえば、あなたの誕生日がもうすぐでしたね、カノン」
 その言葉に一緒にいたジュリアンが驚いた。
「誕生日!?本当ですか、カノン。いつです?」
「5月30日だが」
 新聞から視線をそらしもせず、カノンは無関心そうに答えた。
「5月30日!それは素敵だ。ねえ、カノン、私があなたの誕生日パーティーを開きますよ。ぜひ出席してください!」
「無理だな」
「どうして?」
「誕生日は兄と過ごすつもりでいる」
「兄!?」
 カノンの答えにジュリアンが裏返ったような声を上げる。
「お兄さんがいるんですか、カノン!?」
「ああ。お前には言っていなかったか。おれには双子の兄がいる」
「双子!?うわっ、いいなぁ。私は一人息子だから、兄弟ってすっごく憧れます!ねえ、カノン、そのお兄さんも誕生日パーティーに呼びますよ。二人で参加してください」
 何がそんなに楽しいのかとカノンが不思議がるくらい、ジュリアンははしゃいでいた。
「いやだ」
「カノン〜、お願いしますよ〜」
 ジュリアンが後ろからカノンの首筋に抱き付いて甘える。
「面倒だ」
「カノン〜、いいでしょう〜」
「あきらめろ」
「カノン〜」
「だめだ」
 その時、カノンに甘えていたジュリアンの雰囲気が変容した。突如、威圧的で雄大な小宇宙が部屋を満たした。ずしりとした重圧感がカノンの体にかかる。
「…シードラゴン、おぬし、ジュリアンの誘いを拒む権利があると思っておるのか」
 耳元で響いた声にカノンの背筋が伸びた。
「ポ、ポセイドン…様…!」
 肩越しにジュリアンを振り向くと、カノンの目の前にポセイドンが降臨したジュリアンの顔があった。ジュリアンの瞳孔にちらちらと金色の輝きが瞬き、神の小宇宙がカノンを圧倒する。
「シードラゴン、ジュリアンの要請に従うがよい」
「…分かりました」
「本当ですか、カノン!」
 カノンが答えたその瞬間、「ポセイドン」が去って「ジュリアン」に戻っていた。
「本当にお兄さんと二人で誕生日パーティーに出てくれるんですね、カノン」
 嬉しそうに言うジュリアンの顔をまじまじとカノンは眺めた。
「…ジュリアン、お前、最近分かって使い分けてないか?」
「え?何のことですか、カノン?」
 にこにことジュリアンは無邪気に微笑んでいる。
 カノンは大きなため息をつき、そうして「サガと一緒にジュリアン主催の誕生日パーティーに出席する」ことを承諾させられたのだった。

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