昔から、どうでも良いことを真剣に考える子供でした。考えれば考えるほど、ますます判らなくなることって、あるんです。
鏡を見ると、左右が反対に映りますよね。鏡に向かって右手を上げれば、鏡の中の自分は左手を上げた形になります。でも、上下は逆にはなりません。鏡の中の自分が逆立ちしているなんてことは、ありません。
左右は逆になるのに、上下は逆にならない、それはなぜだろう、というのが、子供の頃から不思議でなりませんでした。
ある時、それはもう子供とは言えない年齢に達してからでしたが、結論めいたものを導き出すことに成功しました。それは、そもそも「上下」と「左右」という概念は性格が違うのだ、ということでした。「上下」という概念は、地球を基準にしています。地球の中心に近いほうが下、そこから遠いほうが上です。ですから、地球上にいる限り、誰にとっても上は上、下は下です。それに対して「左右」という概念は、あくまで自分を基準にしています。そこらにいる人に「右はどっち?」と聞いても、その人がたまたまどちらを向いているかによって、答えはまちまちです。
地球を基準にした垂直方向の位置関係「上下」に呼応する水平方向の位置関係は、「左右」ではなく、同じく地球を基準にした「東西南北」でしょう。これなら「東はどっち?」と聞いた場合、どっちを向いている人でも同じ方向を示すでしょう。
そこから考え付いたのですが、鏡の像を見る時、上下と左右という異なる概念を一緒くたにして考えるから判らなくなるのであって、鏡の像は上下も東西南北もひっくり返ってはいないのです。鏡の前で東側の手を上げれば、鏡の中の自分も東側の手を上げてくれるのです。
それで、やれやれすっきりした、と思っていたのですが、最近になってまた判らなくなりました。それなら宇宙空間ではどうなのだろう、と・・・。基準とすべき地球は遠い彼方です。無重力なので、人の頭や足が向いている方向もさまざまで、どちらが上とも下とも言えません。そこで鏡を見たら・・・。
考えれば考えるほど、鏡って不思議なものです。紙に文字を書いて鏡に映すと、裏返しの文字になりますが、これは紙を光にかざして、裏から見ているのと同じ形です。と言うことは、鏡に映った自分の顔も、裏から見た形なのか?顔を裏から見るとは、具体的にどういうことなのか?不思議と言うより、ちょっと不気味な気もします。
ログインしてコメントを確認・投稿する