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2015年03月30日22:52

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マズアのミサ・ソレ

ベートーヴェン作曲の最も有名な宗教教がミサ・ソレムニス。
彼の晩年に書かれた作品で、自身の難聴に加え、弟の夭逝〜甥の後見人問題、愛していた女性とは結ばれず、才能に比して収入は僅か…どちらかと言うと人生の辛酸に負けず果敢に試練に臨んだ人=ベートーヴェンというイメージ。
大バッハのように神への祈りを音楽に変えた敬虔なクリスチャンであったというイメージは殆ど無い。
(インド哲学にも傾倒する等、100年前だったら異端者とされていたなんて説もあるほど)

ただ、有名な弦楽四重奏15番、作品132の第3楽章において「神への感謝…」と題した極めて美しい旋律を書いている。色々な葛藤があった末想像に難くない。

当時の人とはかなり異なった宗教観は持っていたとしても、本当に異端なら、こんなスゴイ宗教曲は書けなかっただろうから、やはり強く信仰は持っていたのだと考える。

さて、ベートーヴェンの交響曲第9番と同じくらい長大な楽曲であるミサ・ソレムニス。

LP時代にベートーヴェン博士とも思しき、知人の勧めでクルト・マズア指揮ゲヴァントハウス管弦楽団盤を聴いて感動した。

多分20歳前後だったと思う。

次第にバッハへ傾倒していったことから、ミサ・ソレムニスは聴かなくなって行った。
また、LPしか持っていなかったし、その後CDでばかり聴くようになっていったことも手伝って、このアルバムの存在を長年失念していた。

先日、マイミクのアイチャンのコメントを見て思い出した次第。
CD時代に購入していたのは何とミヒャエル・ギーレン盤。
この人、自身が現代音楽の作曲家であり、マーラー以降現代音楽は素晴らしい手腕を発揮するがベートーヴェン以前は???が付く人。
少なくとも生演奏で聴いた彼の振るモーツァルトのピアノ協奏曲は、これまで聴いたモーツァルトで最悪の演奏だったから、彼のベートーヴェン交響曲全集にも手を出さなかった。
にも関わらず、ミサ・ソレだけは買ってあったから不思議だ。

ギーレン盤は、物凄く張り詰めた緊張感で最後までアゲアゲの高揚感が疲れる。
少なくともこの演奏は神への捧げものでは無いと思った。

しかし、アイチャンに触発されAmazonで落としたマズア盤で聴くそれは、神の威光を讃えるかのような見事の演奏。

アゲアゲではなくて、ちゃんと緩急に加えて要所要所の強弱の変化もしっかりしている。
やっぱり名演だった。

スケール感は凄まじい。
1972年のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のコンマスはゲルハルト・ボッセ氏。
この2年前の歴史的偉業であるマウエルスベルガー兄弟によるドレスデン聖十字架教会とライプツィヒ聖トーマス教会の合唱団に、このゲヴァントハウス管弦楽団が行っていたのを思い出す。

うん…そうか Vnソロもボッセだし、テナー:シュライヤー、アルト:ブルマイスターも共通だ。

後にゲヴァントハウス管をボロボロししてしまうマズアだが、この頃は真摯に作品に取り組んでいて立派。

この人、指揮者としての力量よりも政治力という人であり、同僚だったテンシュテットをはじめ実力者に辛酸を舐めさせたという意味で東独指揮者でもすこぶる評判がよろしくない。

しかし、ベルリンの壁崩壊寸前、東独市民に東独軍が銃口を向けた際、上に掛け合って発砲を止めさせたという点が評価され、半ば英雄扱いされているらしい。
確かに発砲されていたら何千、何万人が壁の前で殺されていた訳だから、それを止めた政治的手腕は評価されるべきかもしれない。

ただ、1972年にこんな演奏が出来たんだから、もっと音楽で頑張って欲しかった…と今さら思ってしまうのは私だけではないと思う。

追伸:
今回購入したCD…ベルリン・クラシックス盤は、オイロディスクのLPよりもずっと良質なリマスターが施されていてたまげた。


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