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2010年05月27日16:16

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<ネタばれ注意>私だけが異常?いや、みんな異常です(映画「パーマネント野ばら」を見て)

 演技に関して、みっちゃん役の小池栄子、ともちゃん役の
池脇千鶴がめちゃめちゃ良い。まさに体当たりの演技をしている。
結構、撮影中は傷や怪我を負ったのではないだろうか。

 浮気好き、酒好き、ギャンブル好き、仕事が嫌い、
おまけに暴力を振るう等等、どうしようもない
男はこの世に多いが、どうしようもない男を
好きになってしまう女もまた多い。
周りの人間が止めとけ、と制しても
好きなものは好き。どこまでも付いていくが
最後はぼろ雑巾の如くに捨てられる可哀そうな女たち。
 新しい彼が出来たと知って、周りの人間は
ほっとするが、また前のと同じような
どうしようもない男に恋をして、また
ぼろ雑巾の如く捨てられる。
 不幸せを自分から呼びこんで、「私って異常なの?」と
自信もプライドもズタズタになりながら、
また同じ過ちを繰り返す女と男。

 
 映画「パーマネント野ばら」に出てくる女性たちは
不幸せのドツボにはまっている人たちばかり。
 浮気した男に激しい憎悪を燃やしながら最後には
許してしまうみっちゃん。次々とダメ男に
出会いまくり、その度にボロ雑巾のように捨てられる
ともちゃん。
 主人公の義理の父・カズオは、浮気相手のもとに身を寄せ、
一向に家に戻ってくる気配はない。そんな夫を
毛嫌いする母・まさ子。主人公の娘・ももは
離婚した夫にだけ心を開く有様。
 主人公のなおこは、身勝手な周りの人間に
翻弄されながらも、冷静に現実に対処している
この映画に出てくる唯一のまともな人間に見える。
なおこ自身の感情を抑え、周りの人間に外見上は
優しく接するなおこ。
 だが、なおこはこの上ない寂しさを感じていた。
誰も自分の気持ちを理解してくれないと。
 そんななおこが唯一、心を開いているのが
教師のカシマ。彼は、なおこにとって
唯一の心のオアシスだった。
 なおこはカシマだけに本音をもらす。
「この街に住んでいる人はみんなおかしいのよ。
あなたを除いて」
 
 なおこはこの作品の狂言廻し。観客も
一見、この映画は、おかしい人たちの
オンパレードな作品だと高見の見物気分で
見ていたことだろう。

 だが、ラスト。なおこは狂言廻しでも何でもなく
おかしい人たちが紡ぎだす物語の構成員で、
周りの人間も、なおこが紡ぎ出していた物語を
見ていたという事が分かる。
 この映画、登場するすべての人たちが
おかしかったのだ。
 ここで観客もハッとするはずだ。
「自分も確かにおかしい点がある。それも
盛りだくさん」と。
 
 だが、みんながそれぞれおかしい事を許容しながら、
登場人物たちはたくましく生きている。

 ダメな相手に寄り添いボロボロにされ、また
同じ事を繰り返す。「私って異常なの?」と
思っている女や男に、この映画は優しく
こうつぶやくだろう。
 「あなただけが異常じゃない、みんな
異常なのだ」と。
 人は世論・常識とは反するおかしいところ、
異常なところを常に抱えながら生きている。
いや、それを抱え続ける事自体が生きることなのだ。
 自分も含めそれぞれのおかしいところ、異常なところを
傷付きながらも苦しみながらも、明るく、笑いながら
許容する事が生きていく上で必要なたくましさなのだと
この映画は教えてくれた気がする。
 「私って異常なの?」「いえ、あなただけじゃ
ございません。みんな異常でおかしいです」と
温かく笑いながら、しっかりとこの映画が答えてくれた
気がした。

 (終わり)


PS:えぐっちゃんが出た映画やドラマを最後まで見たのは
この作品が初めてのような気がします。
 
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