今年10本目にしてようやく、一瞬たりとも眠りに落ちなかった作品に出合えました。
【 首相暗殺犯に仕立て上げられた青柳雅春(堺雅人)は “ 人を信頼すること ” を唯一にして最大の武器に、そんな言葉など持たない国家権力から必死になって逃げ回る ━━ 】
警察幹部役でご出演の香川照之さんが本作を絶賛していましたが、半分は身びいきだろうと思っていました。
が、名優と言っていいその香川さんが目立たないほど、数多くの役者が痺れるような演技をスクリーンに焼き付けていき、全然誇張でないことを、いやというほど私に分らせてくれたのでした。
中でも絶品なのが、中村義洋監督作品の常連・濱田 岳。
今年の年末から来年にかけて、「イングロリアス・バスターズ」 のクリストフ・ワルツ並みに助演男優賞を獲得していくのではないでしょうか。
青柳の昔の恋人であり現在は一児の母となっている晴子役の竹内結子も、原作以上の出番を与えられ、おしゃまで好奇心旺盛な娘と共に、殺伐としがちな物語に潤いと安らぎを補充してくれました。 体を張るシーンだって。
映画賞によって主演か助演かの扱いがバラけるかもしれませんが、彼女も演技賞の有力候補となりそう。
他にも触れたい俳優は何人もいますが、長くなりすぎるので、涙を呑んで割愛します。 そうそう、昨夏の 『湯布院映画祭』 にゲストとして来てくれた渋川清彦さんも、儲け役を気持ち良さそうに演じていました。
原作は、昨年春頃に読了。 ラストで鼻の奥がつんとさせられたものです。
映画は、そんなものでは済みません。
中盤辺り、予感がしてティッシュを取り出しておいたら、案の定、数分後にまずオンボロのカローラにやられ、スクリーンの堺雅人と同じように涙をこぼしてしまう事に。
それ以降は10分おきぐらいに、ぐっとくる場面の波状攻撃 !!!!!
伊東四朗に・・・・
花火に・・・・
[ 痴漢は死ね ] に・・・・
手の甲に押されたスタンプに・・・・
泣かされた数と同じくらい、笑わせてもくれます。
緩急の絶妙のリズム。
原作を読んでいるからこそ、脚本の素晴らしさがもっと良く分ります。
ほとほと参りました。
短い出演場面でも、俳優は皆、やりがいのある役に書き上げられています。
作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞部門等でも、対象になることでしょう。
ベストテンは他作品との比較で決まるものですが、今年の日本映画マイ・ベストワンが本作になっても、何ら文句はありません。
それにしても、中村監督はこれほどの作品を撮ってしまったのが、今後、吉と出るか凶と出るか。
以後は、新作の出来映えを本作と比べられてしまうでしょうから。
来年の 『ヨコハマ映画祭』 で上映してほしい!
私を2年連続で吸い寄せる誘蛾灯のように(笑)。
1989年 2月 4日に封切られた 「ダイ・ハード」 は、バリバリの娯楽アクション映画でありながら、また年の初め頃の公開という不利を抱えながらも、その年の【 キネマ旬報ベスト・テン 】にて見事、外国映画のベストワンに輝きました。
「ゴールデンスランバー」 ━━ 2010年 1月30日公開。
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