今日の 「ふしぎ発見」 に “兎歩” (うほ) というものが出てきた。陰陽師 (おんみょうじ) が行うもので、「魔物から姿を見えなくする」 という意味があるそうだ。
しかし、この画面に出てきた
兎歩
という表記は、典型的な誤記であるようだ。正しくは、
禹歩
である。どうも 「ふしぎ発見」 は、この手の雑学力不足が目立つ。
どだい、
兎 音読み=ト
であって、「ウ」 という音はない。十二支の 「う」 はウサギだからよかろう、ではない。十二支の 「う」 は 「卯」 である。
もっとも、この誤記は、かなり普及しているらしい。オモシロ半分に陰陽道について書いている記事に、「兎歩」 の表記が見られる。
兎歩 × …… 1,160件
禹歩 ○ …… 5,440件
「ふしぎ発見」 の場合、たぶん、「禹」 と 「兎」 の違いさえ見分けられないような人物が下調べをしたのだろう。歩き方がウサギみたいだから、という、「飲み込み久太」 かもしれない。
禹 「ウ」
というのは、中国の 「夏」 の国の王、「禹王」 の 「禹」 である。治水に力を入れた王で、現状視察で国内を歩きすぎて、足を痛めたそうだ。差別用語を避けるなら、「禹歩」 とは “跛行” (はこう) であろう。ある日本の書物には、
「足なへたる者を、禹歩と名つく」
とある。
「禹歩」 (ウホ) というは、そもそも、この 「禹王の歩き方」 を言ったものだという。中国で、「巫者」 (ふしゃ=シャーマン) が占いの際に、禹王の歩き方を真似たことから、「禹歩」 が邪気を除くと考えられるに至ったらしい。
「ふしぎ発見」 にも出てきたように、日本では、「禹歩」 を 「反閇」 (へんばい・へんぱい) とも称す。「閇」 というは、見ない字であるが、
【 閇 】 「閉」 の異体字
である。「閉」 は、もともと、「門」 の中に 「‡」 を書いていたもので、それが、「才」 となったか 「下」 となったか、の違いに過ぎない。「閇」 という字は 「反閇」 の場合に、独占的に使われるようである。
「反閇」 は、能でも使うコトバらしい。「翁」、「三番叟」 (さんばんそう) の足の踏み方を指す。
中国語にも 「反閉」 の語は見える。しかし、
外側から門を閉じること
という意味にすぎない。「振り返って閉じる」 ということだろう。「へんばい」 というのは、日本で発生した特殊な用法らしい。
…………………………
「兎」 というのは、ウサギの象形文字である。本来は、「兔」 (パソコンで表示される字体は誤りである。上は 「刀」 でなければならない。こういうことをするから字体が増えてしまうのだ) が正字であるらしい。しかし、日本では、従来、「兎」 の字を常用してきた。
「免」 とは字形が似ているだけで、まったく関係がない。
「冤罪」 というコトバがある。近ごろ、しきりとマスコミにも登場するコトバである。きのう今日では、“吉本事件” がそれであろう。
メディアによっては、「えん罪」 と書く。こう書く側にも理屈があるのだろうが、アッシには、
理屈バカ
としか思えない。
「冤」 (なぜか、この字の中のウサギはパソコンでも正しく表示されている。上は 「刀」 だ) という字はむずかしそうに見えるが、字源を知れば、さほど難解な文字ではない。
冂+兔
である。「冂」 は 「囲い、オリ、網」 のようなものを示す。つまり、
ウサギが捕らえられたようすをいう会意文字
である。ところから、
逃れられぬこと
ところから、
無実であるのに、訴えが聞き入れられないこと。ぬれぎぬ
を意味した。
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