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2009年05月09日14:42

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彼女にしたいジブリキャラ。

　先日、mixiニュースで「彼氏にしたいジブリキャラ」のランキングが報じられたが、第一位のアシタカは納得のいく結果だった。アシタカは、私が一番好きなジブリ男性キャラだからだ。もともと、宮崎駿はアシタカを主人公とした物語『アシタカ聶記（せっき）』を計画していたのだが、「ジブリ作品は、女の子を主人公にした作品がふさわしい」とプロデューサーに強く説得され、泣く泣く、タイトルを『もののけ姫』に変更、脚本を修正したのだという。アシタカの存在感に比べ、本来、主役であるべきサン（もののけ姫）のキャラに深みがなく、彼女の言動に今ひとつ共感できないのも当然だ。宮崎自身、サンよりアシタカの造型に強い愛着があったに違いないのだ。

　アシタカは優しく、純真で一途。寡黙だが高い戦闘力、内に秘めた魂の強靭さは、「彼氏にしたいジブリキャラ」第一位にふさわしい、と一人満足していた。ところが、今日、「彼女にしたいジブリキャラ」のランキングを見て、少々驚いた。第一位が、なんとナウシカなのだ。『風の谷のナウシカ』は名作中の名作、大作中の大作であることは間違いない。しかし、暗く重苦しいテーマのため、観るには覚悟が必要で、心と身体が弱っている時など、鑑賞する気には到底なれない。もちろん、私はナウシカは好きだが、あの「独り言の多さ」と「純真ゆえの暑苦しさ」「怒りに燃えた時の手のつけられない凶暴さ」を見ては、とても「彼女にしたい・・・」と思わないが、いかがだろう。

　では、私の選ぶ第一位は誰かと問われれば、自信をもって答えよう。『もののけ姫』のエボシ御前（画像：上　吹替：田中裕子）である。貧しい民を救済するためなら、自然を切り拓き、山の神々たちと戦ってでも、タタラ製鉄で自活の道を進もうとする決然たる意思。彼女はシシ神殺しさえ、厭わない。利権を奪わんとする豪族や朝廷の権力に屈せず、最新兵器で武装して対抗する。ライ病が感染しないことに気づいており、重症患者への偏見がないばかりか、隔離病棟を運営して、自ら進んで看病もする。毅然たる態度、怜悧な美しさ。全方位、隙のないスーパーヒロインではないか。彼女は自分の信念に従って行動し、決してぶれることはない。いったい、エボシ御前とは何者なのか・・・。実は、宮崎駿は物語で触れられていない、エボシ御前の隠された経歴まで作っていたのだそうだ。・・・それによると、彼女は武家の娘だった。誘拐拉致されて海外に売られ、苦界に身を沈める。そこで知り合った異国の富豪に高い知性を見出され、自由の身に。そして、苦労の果てに莫大な財を成して、密かに日本に生還したというのがエボシ御前である。この経歴を知った上で『もののけ姫』を観ると、彼女の先進性、行動力に大いに合点がいく。言葉にできない辛酸を舐め尽くしてきたエボシ御前だからこそ、強く優しく人間的な魅力に溢れているのだと私は思う。彼女にするなら、絶対にエボシ御前だ。

　サウンドトラックを担当した作曲家・久石譲に、宮崎駿が曲調の方向性を示すため、エボシ御前のイメージを以下のような文章に表現して渡したという。

エボシ御前

何ものも　おそれない鉄の心
はげしい意志　弱者へのいたわりと　敵への呵責なさ
白いうなじと細い腕と強力
自ら定めた道筋を　ゆるぎなく　進んでいく女
手下達の崇拝を一身に集めながら
お前は　はるか遠くを見つめている
そのひとみは　未来を見ているのか
それとも　かつて見た地獄を　今も　見つめているのか……

「彼女にしたいジブリキャラ」

　　