「森の歌」のステージオーダーは最前列左端だった。OEK合唱団とやまでも、3年連続でこの位置だった。
声出し会場からコンサートホールへ向かう途中、配置を決めた副指導者から言われた。
「端だけどいいね」
「いや、別に……」
口を濁した。
練習に来ていない人を自分より前に出すなら、自分は出ないと言った。だからといって、自分が前に出たいわけではない。むしろ、練習に来ていた若いのを出せと言ったくらいだ。そもそも自分はバリトンである。普通ならバスが端に来て、バリトンはテノール側に並ぶ。なぜ自分が最前列の端なのか、そこにも疑問がある。
とはいえ、これ以上言うことはない。
今回の配置は、OEK合唱団が前列、東京混声合唱団が後列だった。これでは無理だろうと思っていたら、案の定、途中で指揮者から「混ぜて」という指示が出た。プロとアマチュアが交互に並ぶことになった。
最前列のバスは3人。自分が後ろに下がって代わった方がいいかと一瞬思ったが、若いメンバーが後ろへ移動した。自分から動くこともないだろう。そのままにした。
もっとも、今日のオーケストラ合わせで配置が変わる可能性はある。指揮者からバスの声が小さいと指摘されたのだから、声の通るプロを前列に置くのは当然だ。それで自分が後ろに下がることになっても構わない。
練習は9時過ぎに終わった。帰りにスタバに寄り、お勧めのブラックベリーフラペチーノを買って帰った。妻の分はアールグレイである。
妻が言った。
「すぐに帰って来なかったから、なんとかなったんだと思っていたけど、よかったね」
「うん、前の端っこやった。スタバに寄って買ってきた」
「ブラックベリー?」
「それは俺の。そっちはアールグレイ」
「ええ? ブラックベリーがよかったのに。ブツブツ。でも美味しいけど」
まあ、意地汚いやつだ。でも、こちらは気分がいい。許してやった。
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