漢字は好きだが、人名と地名だけは聞かれてもなかなか読めない。
畑の小屋のエアコン修理は、思っていた以上に大掛かりだった。本体だけでなく室外機も分解し、中の部品を交換していく。作業は結局2時間半もかかり、その間は畑の草むしりをしながら待っていた。
それほど時間がかかると分かっていれば、近くのイオンモールへ行って時間をつぶしたのだが、作業がいつ終わるのか分からないので、その場を離れるわけにもいかなかった。
修理が終わると、タブレットにサインをして作業完了。購入から5年以内だったので保証が利き無料だったが、あれだけ部品を交換していたのを見ると、有料なら相当な金額になっていたのではないか。ひょっとすると、新しいエアコンが買えるくらいだったかもしれない。
サインをしている時、担当者の名前がちらっと目に入ったので聞いてみた。
「長さんって、『ちょう』さんですか?」
「いえ、『なが』と言います。」
「珍しいですね。『ちょう』さんなら、高校の同期に一人いて呉服屋をしていました。氷見のあたりに多い名字なんですか?」
「『なが』という読み方は、富山県でも2軒ほどしかないと思います。」
漢字一文字を音読みではなく訓読みで姓にするのは実に珍しい。「長(ちょう)」という姓も珍しい。戦国時代に能登を治めた長氏を思い浮かべた。その子孫なのか、それともまったく別の由来なのか、もう少し突っ込んで聞いてみればよかった。
帰り道で、以前ホームセンターでの出来事を思い出した。レジの女性の名札に見慣れない名字があったので尋ねてみると、「鹿児島県の大隅半島のごく一部にしかない姓なんです」と教えてくれた。
姉が住んでいる金沢市の海岸部の墓地へ行くと、見覚えのない名字の墓が数多く並んでいる。能登と同じく北前船の交易などで各地から移り住んだ人たちの子孫なのだろう。日本には、ごく限られた地域にだけ残っている名字が少なくない。何気ない会話から、その土地の歴史や人の移り住みまで想像が広がる。珍しい名字に出会うたび、そんなことを考えてしまう。
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