将棋の話である。
第20回朝日オープン戦1次予選、村中秀史七段対山本博志五段戦を見た。結果は後手の山本五段が121手で勝ったのだが、終盤に珍しい場面が現れた。先手村中七段の玉の横に、桂馬が3枚、縦に並んだのである。どれも打った駒である。
桂馬は金銀のように玉の周囲を直接守るのが得意な駒ではない。もちろん桂馬には桂馬なりの利きがあるのだが、玉のそばに桂馬が3枚並んでいる姿は、どう見ても普通の囲いではない。ところが、その時点でAIの判断は先手56%。見た目ほど先手が悪いわけではなく、まだ互角の範囲である。
ところが数手進むと、先手の評価は35%まで落ちた。その後も20手ほど指し手が続いたが、結局村中七段が逆転することはなかった。
朝日オープンは持ち時間1時間のトーナメントである。長時間の将棋に比べれば、当然ミスも出やすいし、いったん形勢を損ねると、じっくり立て直す時間もない。その一方で、アマチュア枠や女性枠もあり、予選を勝ち抜けば一気に上位へ進める。そういう意味では、竜王戦と同じように、思わぬところからスターが出てくる可能性のある棋戦でもある。
それにしても、1週間のうちに「桂馬が3枚並ぶ」という珍しい将棋を2度も見ることになった。
将棋は名局や妙手を見るのは面白い。しかし、長く見ていると、「何だ、これは」という珍しい局面に出会うこともある。こういう将棋まで含めて楽しめるのが、将棋観戦の面白さである。
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