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2026年09月09日14:42

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EUが暴いた「安値の裏側」

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********************* 集英社オンライン 小倉健一
◆□〇 〈なぜ中国EVはこんなに安いのか〉EUが暴いた「価格の裏側」…融資、土地、電池、税制まで“国家支援”…日本はどうする?

 中国製EVはなぜ、これほど安く売ることができるのか。EUが問題視したのは、車の価格そのものではなく、その「安さ」が生まれるまでの過程だった。融資、土地、税制、研究開発、さらには電池や原料まで――。
 中国政府による幅広い支援が競争条件をゆがめているとして、EUは中国製EVへの相殺関税(追加関税)に踏み切り、さらに販売価格や輸入量まで管理する新たな仕組みを動かし始めた。中国製EVの存在感が高まるなか、「政府支援の影響を受けた安さ」とどう向き合うのか。同じ問いは、いずれ日本にも突きつけられる。

◆〇 その車がどこで、どのような支援を受けて作られたか
 日本で欧州の対中電気自動車規制を語ると、話はすぐ関税率に向かう。BYD(比亜迪汽車)はいくら、SAIC(上海汽車集団)はいくら、と数字を並べれば説明した気になりやすい。
 だが、EUが本当に問題にしたのは、車の値段そのものではない。その安さが、どのように作られているのかである。

 欧州委員会が中国製電気自動車の調査を始めたのは2023年10月だった。しかも、欧州の自動車会社から正式な訴えが出たからではない。欧州委員会が自ら動いた。電気自動車を、雇用や技術、産業の将来にかかわる重要な分野と見ていたからである。
 対象も「中国企業」ではない。中国で作られた特定の電気自動車(BEV)である。このため、中国企業の車だけでなく、中国工場で生産されたテスラやフォルクスワーゲン系の車も対象になる。
 逆に、すべての電動車が対象というわけでもない。プラグインハイブリッド車(PHEV)は外れている。EUが見ているのは会社の国籍ではなく、その車がどこで、どのような支援を受けて作られたかである。

◆〇 安さの中に、政府の支援がどれだけ入っているのか
 欧州委員会が調べた支援の範囲は広い。完成車メーカーへの補助金だけではなかった。低い金利で借りられる融資、安い土地、税の優遇、研究開発への支援、電池やその原料を安く手に入れられる仕組みまで調査した。

 ここは難しく考える必要はない。普通の会社なら、工場を建てる土地を確保し、銀行などから資金を調達し、部品を仕入れ、税金を払う。
 その一つ一つが政策によって他社より有利になれば、最後に出来上がる車も安くなる。工場の働き方が特別に優れていなくても、会社の外側にある条件だけで価格差は生まれる。
 だからEUは、「中国車は安い。だから中国企業の生産性が高い」と単純には考えなかった。安さの中に、政府の支援がどれだけ入っているのかを調べたのだ。

 この見方はEUだけの主張でもない。OECDが2026年に公表した調査では、2005〜2024年に中国企業が受けた政府支援は、OECD諸国の企業の平均3〜8倍だった。
 さらに、中国企業が拡大させた世界市場シェアの約60%が、補助金によって説明できるとの分析も示された。

◆〇 中国企業の海外成長を企業努力だけで説明するのは難しい
 しかも、その支援は企業の市場シェア拡大と強く結び付いていた。一方で、生産性や利益が同じだけ改善したとは確認できなかった。
 これは電気自動車だけを対象にした調査ではないが、OECDの分析によれば、中国企業の世界市場でのシェア拡大には政府支援が大きく寄与しており、その成長を企業自身の競争力だけで説明するのは難しい。

 調査では、中国側がどこまで情報を出したかも問題になった。欧州委員会は、中国政府や一部企業から必要な資料が十分に出なかったとして、手元にある別の資料を使って判断したのだ。
 電池大手CATLは質問への回答をせず、SAICについても一部の金融支援で協力が不十分だったとされた。

 中国側は、EUの調査は政治的だと批判している。調査方法に問題があると思うなら争えばよい。実際、中国はWTOでも争っている。
 ただ、土地や融資、電池の価格が普通の市場取引で決まったと言うなら、その取引を示すのが分かりやすい。欧州委員会の認定を前提にすれば、必要とされた資料を十分に示さないまま調査結果を政治的だと批判しても、EU側を納得させるのは難しい。

 EUは2024年、中国製電気自動車に追加関税をかけることを決めた。税率は企業ごとに異なり、調査への協力ぶりなども反映された。ここで大切なのは数字そのものではない。EUが、中国製電気自動車の安さを「普通の価格競争」とは見なさなかったことである。

◆〇 中国メーカーは中国国内で欧州勢のシェアを奪い、状況に変化
 EUが問題にしたのは、中国企業が強くなったこと自体ではない。政府支援によって輸出価格が押し下げられ、その状態が続けば欧州メーカーに重大な損害が生じると判断したのである。
 欧州メーカーは、ガソリン車から電気自動車へ移るために工場や電池、ソフトウェアへ巨額の投資を続けている。被害が決定的になる前に相殺措置を取る、というのがEUの考え方だった。

 ただし、欧州の国々が最初から一致していたわけではない。特にドイツは慎重だった。
 フォルクスワーゲンやBMW、メルセデス・ベンツなどは中国で長く商売をしてきた。中国と対立すれば、報復を受けるおそれがある。中国市場で稼いでいる間は、強い対抗策を取りにくかったのである。

 だが今、その前提が崩れ始めている。中国メーカーは中国国内で欧州勢のシェアを奪い、そのまま欧州市場にも出てくるようになった。
 中国との対立を避けても、肝心の中国市場で欧州企業が負けるなら意味が薄れる。そのため2026年にはドイツ産業界からも、中国の不公正な競争にもっと強く対応すべきだという声が目立つようになった。

◆〇 中国メーカーも黙って関税を払ってはいない
 さらに重要なのが、2026年に初の個別案件が承認された「価格約束(price undertaking)」である。これは、中国から輸出する企業が一定以上の価格で車を売ると約束し、その条件をEUが認めれば、追加関税を免除できる仕組みだ。
 一見すると、関税を緩める制度に見えるが、実際には管理が細かい。EUは最低価格だけでなく、販売ルートや別商品による値引きの有無なども審査する。

 実際、最初に認められたフォルクスワーゲン安徽の案件では、輸入数量の制限やEU域内での投資まで約束に盛り込まれた。
 電気自動車だけ高い値段で売り、別の商品を安売りして帳尻を合わせるような抜け道も認めない。車一台ごとの流れまで確認し、違反すれば関税を復活させる。

 ここまで取引を管理すれば自由な価格競争は制約され、消費者がより安い車を選ぶ機会が減る可能性もある。それでもEUが踏み込んだのは、相手が通常の企業間競争ではなく、EUが「国家支援によって競争条件がゆがめられている」と認定した相手との競争
だと判断したからである。

 最初にこの仕組みが認められたのは、中国ブランドの車ではなかった。フォルクスワーゲン安徽が中国で生産するクプラ・タバスカンだった。これもEUの考え方をよく示している。
 中国企業だから規制するのではない。中国で作られ、中国の補助制度の影響を受けうる車だから見るのである。

◆〇 複雑化するEUと中国の争い
 中国メーカーも黙って関税を払ってはいない。電気自動車に関税がかかれば、対象外のプラグインハイブリッド車を増やす。中国から完成車を運ぶコストが高くなれば、欧州で作る。BYDは実際に欧州での生産を進め、短期的にはプラグインハイブリッド車も重視している。
 関税は企業の行動を変えた。ただ、中国企業を欧州市場から追い出したわけではない。中国勢の販売は続き、欧州での存在感も大きい。

 だからEUの政策も、単純な関税だけでは終わらなくなった。輸入価格を見る。販売量を見る。どこを通って売られるかを見る。EU内に本当に投資するのかを見る。中国企業が制度の境界へ動けば、EUもその境界を追いかける。
 中国はこうした措置をWTOで争っている。法的な決着にはまだ時間がかかる。その間も関税や価格約束は続く。EUと中国の争いは、すでに「関税を上げるか下げるか」という単純な話ではなくなっている。

◆〇 融資、土地、電池、原料、税制まで政府が有利にすれば、条件は同じではない
 中国製電気自動車をめぐる問題を、「安い車を消費者が買えて何が悪い」とだけ考えると、肝心な点を見落とす。
 企業が市場で資金を調達し、技術を磨き、生産性を上げて安く売るなら、それは市場競争である。だが、融資、土地、電池、原料、税制まで政府が有利にすれば、条件は同じではない。

 もちろん、中国EVの価格競争力のすべてを政府支援だけで説明できるわけではない。技術革新、巨大な国内市場、垂直統合、激しい国内競争などもコスト低下に寄与している。そのうえでEUが問題視したのが、そこに政府支援がどれだけ上乗せされているかだった。優れた車を作っているから、政府支援を無視してよいわけではない。
 EUが見始めたのは、完成車の価格のウラ側である。なぜその価格で売れるのか。資金はどこから来たのか。土地や電池はいくらだったのか。欧州で売るだけなのか、それとも雇用や投資も持ってくるのか。中国製電気自動車をめぐる争いは、そこまで広がった。

 問題は、中国車が安いことではない。その安さを作った条件まで、普通の市場競争として受け入れるのかである。EUは、そのまま受け入れないと判断している。
 中国製EVの問題は、遠い欧州だけの話ではない。政府支援を背負った安さをどこまで市場競争として受け入れるか、という問いは、いずれ日本の産業と消費者にも向けられる。

安い車を歓迎するのか、その安さを作った条件まで見るのか。EUの選択は、日本がまだ正面から答えていない問いを、静かに突きつけている。
************************ 引用ここまで
EUの中国車関税についての税率など詳しい内容の記事は、多くあるようだが
その考え方についての詳しい記事の方が重要なので、ピックアップ

EUの「表面で正当性を確保」しつつ、自分たちの立場を有利に回そうとする行動原理は
ISO/IECQなどの「規格」縛りや、CO2排出に関する「COP」等で嫌と言うほど見てきたが、新しく「貿易」の分野でも出て来たか・・と言う感じ

今、EU諸国は「右傾化」し始めた参加各国の政治状況から、大きな軋みが出始めているが、さて? いつまで「世界の中心」に「ノブリス・オブリージュ」的な立場を纏って行けるのか? な??
wikiより引用***
昔の貴族に自発的な無私の行動を促す明文化されない不文律の社会心理である。主に富裕層、有名人、権力者、高学歴者が「社会の模範となるように振る舞うべきだ」という社会的責任に関して用いられる。
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