妻に帯状疱疹ワクチンの案内が届いた。今年65歳になるので、定期接種の対象になったのである。そういえば先日、合唱団の仲間が70歳で接種を受けたと言っていたのを思い出した。
「でも去年、自分のところには案内が来た覚えがないんだけど」
「なくしたんじゃない?」
「いや、ワクチンは大好きだから、受けられるなら放っておくはずがない」
調べてみると、昨年度から65歳を対象に定期接種が始まり、それまでに65歳を過ぎてしまった人には経過措置として70歳、75歳、80歳などの節目の年に接種できる制度になっていた。
「今71歳だから、ちょうど隙間に入ってしまったみたいだ」
「じゃあ次は75歳ね。これだと3600円だから自費で受けると結構高いね」
妻は父や知人が帯状疱疹でひどく苦しんだのを見ているので、「私は必ず受ける」と言う。そして話は思いがけず別の方向へ進んだ。
「あなたは胃瘻(いろう)をしてほしい? お父さんにはしたけど、話もできなくなって、本当に意味があったのかなと思うの」
「いや、いらん。痛みだけはモルヒネで取ってもらって、あとは自然だな」
妻の母も、自分の両親も胃瘻はせずに亡くなった。「次は自分たちの番だね」と話す年齢になったのだ。
「70歳を過ぎると急に体力が落ちるってよく聞くわ」。
最近、合唱の練習でも集中力が続くのは1時間ほどになったと話していたからだ。
「もう10年は頑張りたいね」
そう言っているうちに、話題は自然と終活へ移っていった。
帯状疱疹ワクチンの案内一枚で、老後の医療、そして人生の終わり方まで考えるきっかけになった。そんな年齢になったのだと、あらためて実感した。
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