を読んだ。草上仁著。
短編集。16篇の小粋な作品。
「究極のSF」が予想以上にヘビィだったので、今度こそ軽い短編集を(笑)、ということで手に取った。
大恐竜
惑星リナーカスに巨大な恐竜の伝説があり、それが今も生きているという情報を受け取り、TV撮影ロケチームが現場に向かう。
果たして恐竜らしい足跡を発見したが、それは情報より遥かに小さく・・・。
要するに水曜スペシャル(笑)
意外にストレートなオチが用意されており、楽しい。
扉
監禁された部屋は金属の壁で囲まれていた。
見張りをノックダウンして脱出のきっかけを作ったのはいいが、見張りの話のとおりだとすると、ここは衛星軌道上のステーションの1室で、扉の外は真空・・・。
オチはまあいいとして(笑)、化夢宇留仁は換気扇の描写が気になった。
説明の通りだとすれば換気扇から空気が抜けてゆくはずでは???
マダム・フィグスの宇宙お料理教室
今日のお料理はナンブラーの不死身揚げ。
なにしろ不死身で凶悪な生物なので、注意して調理する必要があり・・・。
ありきたりと言えばありきたりだが、やはりこういうドタバタスプラッターブラックユーモア料理コメディは面白い。
最後の一夜
2年前の思い出を元に、死にゆく女性に安心を与えたいと思う男。
しかしそれは不確定要素として見えない計画を狂わしており・・・。
ほんわかする話。そもそも2年前に実行できなかったから今回もできなかったわけで。
カンゾウの木。
移植用臓器を植物によって育てる技術が開発された未来。
その第1号を開発した男の墓の傍らには、立派なカンゾウの木が・・・。
毎日3杯は飲ませすぎ(笑)
断続殺人事件
時間旅行者であるユリエ・オノは、シンジ・キクチ殺害容疑で何度も逮捕されたが、その度に釈放された。
過去に遡り、何度も同じ人物を殺すという彼女の手口は、全て法律の範囲外に属していたのだ・・・。
時間司法SFという新ジャンル(笑)
目の付け所が非常に面白い。
半身の魚
砂漠をさまよう男に、魚の半身を分けてくれ、泊まる場所も提供してくれた男がいた。
男が言うには魚は尽きることがないが、絶対に勝手に釣ってはいけないということだった。
しかし腹が減った男は・・・。
鶴の恩返しかい(笑)!
ちうかそこまで重要なことなら最初にもっと丁寧に説明すべきとしか思えない。
ひとつの小さな要素
結婚の申し込みを断る女。彼女は会社のスパコンでシミュレーションを繰り返し、その結婚の結果がどうなるかをあらかじめわかっていたのだ。
条件を変えることで彼女の気を変えさせようとする男だったが、彼女のシミュレーションにはよい結果は現れず・・・。
傑作。この展開でSFでもなんでもないそっち方面からオチに突入するとは(笑)
トビンメの木陰
農民に生まれながら独力で宇宙船を組み立て、最終的には2つの銀河にまたがる大帝国を興したビョートル竜帝の墓を発見した考古学者。
そこには竜帝が竜帝たり得た理由が生き残っていた・・・。
ちょっと星野之宣作品を思い起こさせる壮大かつ地道な物語。
異星生物SF魂が燃える。
結婚裁判所
ロボットと人間の結婚は許されるのか?
しかしその世界の人間の定義は・・・。
非常に興味深く読めるが、オチはいまいちピンと来なかった。
二つ折りの恋文が
窓に虫が当たる音がする。
惑星ノルヴィアに住んでいる地球人の「僕」は、現地の可愛い女性アイシャの態度が突然硬化したことに戸惑っていた。
そこで同室の現地人ワノフに相談してみると・・・。
めっちゃホンワカしたロマンティックなストーリー。
化夢宇留仁もほんわか(笑)
ワーク・シェアリング
雇用問題を解決するために極限まで仕事を細分化した世界。ネジを開けるのと締めるのは別の専門家があたる。
「マネージャー」の担当である主人公はなんとか仕事を迅速に終わらせたいが、あまりにも細分化された作業は遅々として進まず・・・。
一応どんでん返し的な展開があるが、基本は細分化の描写がメイン。
化夢宇留仁が嫌でも思い出すのはハバロフスクに旅行に行ったときのこと。
まだ資本主義に慣れない社会という感じで、どんなところにもお婆ちゃんが配置されていたのが印象的だった。
公衆トイレや映画館のトイレの入口にもお婆ちゃんが配置されており、手数料を払わないと入れてくれないのだ(笑)
ナイフィ
ナイフィという生物はナイフのように鋭い切れ味があるが、進化の過程上人の肌を恐れ、どうしても触れてしまう状況でも自分の形を変形させて回避する。
それを利用した子供用の玩具&ペットとして販売されて人気があるが、子供の教育に主に使用される暗示システムによって・・・。
理屈頭がうふっと笑ってしまうオチ。
状況的にはとてもじゃないが笑い事ではないが(笑)
予告殺人
ミュータントだらけになった世界で、殺人の予告告白を聞いてため息をつく警察官。
しかし彼はその予告に違和感を感じ・・・。
ミステリー的なオチがSF的な補足で台無しに(笑)
仕方がないのだけれど。
生煙草
煙草に似た動物の話。
ちょっと「トビンメの木陰」とかぶる要素も。
ユビキタス
ネットによってあらゆる情報とリンクし、身体に埋め込んだモジュールによってそれらを縦横無尽にコントロールしている人々。
しかしある日ネットが全面的にダウンし、彼らは突然迷子に・・・。
ご都合主義的なところも目立つが、イメージが気持ちよく描かれているので楽しく読めた。
こういうところはこの著者の独壇場。
ちうわけで手軽で面白い短編集という条件を完全に満たす本だった。
やっぱ草上仁は別格。
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