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2021年10月03日14:22

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究極のSF -13の解答-

を読んだ。ファーマン&マルツバーグ編。浅倉久志他訳。
 SFアンソロジーだが、よくある既存作品を集めたものではなく、本の企画としてSFで代表的な13のテーマを設定し、それを得意と思われる著者に直接依頼して集めた作品で構成されている。

ファースト・コンタクト「われら被購入者」
フレデリック・ポール著。
 ウェイン・ゴールデンは遥か彼方の宇宙からの異星人による超光速通信波によって、操り人形として働いている。彼はその宇宙人に購入されたのだ。
そんな彼がまれにもらえる自由時間には、決まって意中のキャロリンの居場所を探すのだが・・・。
 遠く離れた異星人に購入された人間というアイデアは面白い。しかし物語のオチは納得の行かない部分があり、かつちょっと注目すべき視点がずれた感じで少々残念。
ファースト・コンタクトテーマとしてはこのオチはありがちなもので、それよりも被購入者という設定の方が興味深いのだ。

宇宙探検「先駆者」
ポール・アンダースン著。
 光速の1/5の速度で巡航できる恒星間宇宙船が開発されたが、それの搭載スペースは限られており、人間を乗せるには、その脳のデータのコピーを2人分が限度だった。
こうしてジョウルとコリーンの脳のデータのコピーを搭載した宇宙船はアルファ・ケンタウリへ向かう。
彼らは人間が生息可能と思われる惑星を発見するとそこに着陸し、彼らのクローンの身体を培養し、自分たちのデータを更にコピーして与えることで、人類が他の恒星系にたどり着くことを可能とする。
しかし惑星の環境は一筋縄ではいかず、様々な惑星で何人ものクローンが生成され・・・。
 これは名作。人間の意識を持った機械宇宙船による永遠の旅というのはそれだけでうっとりするアイデアであり、それを一定のページ数で彼らの人間らしさの表現と共に見事にまとめている。

不死「大脱出観光旅行(株)」
キット・リード著。
 貧乏な老人たちが、お金持ちたちがこぞって出かけてゆく大脱出観光旅行を羨ましがり、ある日強行突入して旅立ってゆくが・・・。
 どう不死なのかよくわからなかった。老いの表現は不死のテーマにつながるというのはわからないでもないが、だからと言ってそれで十分ではないし、旅行先の展開も納得行くものではなかった。

イナー・スペース「三つの謎の物語のための略図」
ブライアン・W・オールディス著。
 交通事故を起こした女との出会いと別れ。人間の感覚器官を遮断し、行動をコントロールする実験。地球文化を絶賛するあまり、それを改造してしまう宇宙人との会見。
 夢の記録なんだかアイデアメモなんだかそれを装った巧妙な作品なんだか、全く判断がつかない。
「お前は何を言っているのだ?」

ロボット・アンドロイド「心にかけられたる者」
アイザック・アシモフ著。
 USロボット・アンド・機械人間社は窮地に立っていた。あと2年でなんらかの結果を出さないと、会社が解体されてしまう。
最大の懸案は人間によるロボットの不信感で、そのせいで結局ロボット達は宇宙開発や惑星上の工場でしか使用されていないのだ。
研究部長のキース・ハリマンは、この問題を現在までに作られた中で最高の知能を持つロボット、ジョージ10に相談する・・・。
 意外にも既存のロボットシリーズの世界にどっぷりと根を下ろした作品で、しかもその世界をひっくりがえすような展開に。
とりあえずアシモフ独特の雰囲気のある会話シーンだけでも楽しい(笑)
しかしこの話で浮き彫りにされる疑問が。
そもそもロボットは人間をどうやって人間だと見分けていたのか???

不思議な子供たち「ぼくたち三人」
ディーン・R・クーンツ著。
 人間の能力を遥かに超越した3人の兄弟。彼らは自分たちが新たな種であると自覚し、自分たち以外の人間を滅ぼす。
しかしその内の1人が妊娠し・・・。
 あっさりショートショートだが、わかりやすくてよい。

未来のセックス「わたしは古い女」
ジョアンナ・ラス著。
 招待した客たちに自分の自慢の彼氏デイヴィーを紹介するわたし。
デイヴィーはセックスロボットだった。
 ごめんオチ書いちゃった(笑)
他のことも書かれているのかもしれないが、化夢宇留仁には上記の事しかわからなかった。
女性作家のセックステーマはほんと理解できない(笑)

未来のセックス「キャットマン」
ハーラン・エリスン著。
 テレポート能力を持つ泥棒が、高度なセキュリティーを突破し、非常に貴重な物を盗み出す。
しかし彼の前に警官キャットマンが立ちふさがった。
彼らの激しい戦いは今回は泥棒の方に軍配が上がり、キャットマンは相棒のパンサー型ロボットを失う。
家に帰った泥棒は、キャットマンである父が母と口論しているのを聞き・・・。
 なにがどうセックスなのか、ここまでの紹介ではさっぱりわからないと思うが、この話は前半と後半で内容が全然異なるのだ。
実はキャットマンを途中まで書いてから、この本の依頼が来たので後半をそれに合わせたストーリーとして仕上げたという。
製作工程はまあいいとしても、その結果上記の通り前半と後半が全然違う話になっているのではいくらなんでも雑すぎると言えるだろう。
テレポーテーション能力を持つパート泥棒と、その父のパート警官という設定は面白いのにもったいない。
それでテーマの未来のセックスだが、要するに機械とのセックスである。
ごめん、またオチ書いちゃった(笑)

スペース・オペラ「CCCのスペース・ラット」
ハリー・ハリスン著。
 辺境の惑星で飲んだくれているネズミは、かつてはCCCのスペース・ラットという超精鋭宇宙海兵隊・・・のようなものの最初の一員だった。
彼の昔話は耳を疑うような壮絶なものだった・・・。
 宇宙ミリタリー物のパロディを主に、いつものスペオペパロディ&セルフパロディをごたまぜに。
だいたいスペース・オペラというテーマで普段からそれを否定するようなパロディー作品ばかり書いているハリスンを指名するのもどうなんんだ?
それって編者がこのテーマが時代遅れだと宣言してるということでは?

もうひとつの宇宙「旅」
ロバート・シルヴァーバーグ著。
 狂ったように騒がしい世界、蒙古人が版図を広げている世界、第2次大戦でドイツがイギリスを屈服させ、アメリカが参戦せず、枢軸国が勝利を飾った世界、核戦争で燃え続ける世界、死者の世界、元とほとんど同じ世界・・・様々な異世界を旅する男。
 主人公の目的が、当初失った彼女を探すことだと思っていたらそうではなく、そのへんがはっきりしないので読んでいる方もはっきりしない気分で、せっかく盛り上がりそうな話なのに残念だと思った。

コントロールされない機械「すばらしい万能変化機」
バリー・N・マルツバーグ著。
 人々は万能変化機という機械を被り、プログラムをセットすると、希望通りの異なる現実の世界を体験できた。
それにどっぷりはまっているハヴァフォードだったが、妻のルースは現実を見ろと文句ばかりで・・・。
 ショートショートっぽいオチがついているが、どこを見回してもテーマであるコントロールされない機械につながるとは思えない(汗)

ホロコーストの後「けむりは永遠(とわ)に」
ジェイムズ・ティプトリ・ジュニア著。
 14歳で初めての猟銃を手に入れたピーティは、小舟を鴨から身を隠すフトイの茂みの裏に進めようとするが、池の氷が思ったよりも厚く・・・17歳の少女ピラーのことを処女だと思いこんでいたが、そんなことはなく・・・彼と結婚してくれると思っていたモリーは・・・ノーベル賞確実と思われた論文を発表する直前に届いたのは・・・そして死後も意識が残り・・・。
 先日読んだ「幻想の未来」と近いところがある。
ただしこっちは視点が限られていることもあり、「幻想の未来」の壮絶なイメージとは比べ物にならず。残念。

タイム・トラベル「時間旅行士へのささやかな贈物」
フィリップ・K・ディック著。
 時間旅行機が帰還中に内破によって爆発し、搭乗していた飛行士3人は死亡した。
その死亡したはずの飛行士たちがマリールウの前に現れる。
彼らは爆発する前の時間旅行機から未来へ船外活動に出ていたのだ。つまり彼らはそのあとで過去の旅行機に戻り、爆死することになる。
飛行士の1人アディスン・ダグは、彼らが時間の輪の中に囚われており、それから脱出するために死にたいと言うが・・・。
 興味深い話だが、そもそもの時間の輪がどうやって成立するのかいくら考えてもわからなかった。個人の視点による意識のつながりからすれば、進行は一直線で最後は爆発にたどり着くので、輪になりようがない。
客観的な視点から死んだ後も意識があるということになってそこから輪が始まるのだとしても、それならどこか(例えば爆発の直後)で意識の始まりがなければならないが、そんな流れは無い。
あとオチは・・・まあ意外なものだったが、そもそも上記の問題があるのでピンと来ようがなかった(汗)

 最初はアメリカで1974年に出たそうだが、今見ると13のテーマ自体がすごく古びている。
そしてこういう依頼&競作形式に対して抱いていた不安が的中した感じで、読みにくい話が多く、そもそもちょっと気軽な短編集でもと思って手に取ったのに、なかなかヘビィーだった(汗)
誰しもあなたはこんなテーマが得意なので競作短編集に作品を書いてくださいと言われれば肩の力が入って、普段よりも難解な作品を書いてしまうのではないだろうか。
しかもテーマと書かれた時代の現在とのギャップが絡み合って、わざとボケているのかそれとも本気で衝撃を与えようとしているのか判断しにくい展開も多く、とにかく色々な意味でクラクラした(汗)
しかしそんな中でもアンダースン、アシモフ、クーンツ、ハリスン、ディックはほとんど緊張した様子もなく、いつも通りのしっかりしてわかりやすい作品を仕上げているのは流石。
特にアシモフの変化の無さは逆にすごすぎる(笑)
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