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2021年01月14日00:42

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『ただ人としての生を』第2話

『ただ人としての生を』第2話

 バイトを終えたカノンがアケローオスのマンションに戻ってくると、彼はスマートフォンを片手に誰かと会話をしていた。
「ええ、まだ、思い出してはいません。ええ、もう少し時間がかかりそうです。大学生活には適応しているようです。私もなんとか…ええ、まあ、なんとかやってます。引き続き浄化を…」
 と、そこでアケローオスがカノンの帰宅に気付いた。
「カノンが帰ってきました。ええ、ではまた」
 そこでアケローオスが通話を切った。
「ただいま〜。誰と電話してたんだ?」
 玄関で外履きの靴を室内履きに履き替えながら、カノンがアケローオスに尋ねる。
「ああ、姪とちょっとな」
 スマートフォンを片付けながらアケローオスが答えた。
「姪…なんて、あんたにいたんだ?」
「いるぞ。このマンションのオーナーなんだが…」
「え?ここってあんたのものじゃなかったの?」
 アケローオスの説明に、4LDKの、単身者にはいささか広すぎるマンションの部屋をカノンは見渡した。
「正確には違う。ここは姪のもので、おれは管理がてら住んでるだけ」
「へ〜。そうだったんだ」
 と、そこでカノンは首をひねった。
「え?でもあんたの姪って…若すぎない?それでマンションのオーナー…?」
 考えたカノンは、一人で答えを出した。
「あ、そうか。姪の親とあんたとは、年の離れた兄弟だったんだな」
「…まあ、そんなところだ」
「ふ〜ん。どんな女なんだ?」
 カノンの問いにアケローオスはため息をついた。
「親戚の間では、ちょっと困った奴扱いの姪なんだ。よく親戚の男連中とトラブルを起こしてな…。ただ姪は喧嘩が強くて、今まで勝てた奴が誰もいないんだ…」
 ため息交じりのアケローオスの説明に、カノンは少し引いた。
「え…?喧嘩に強くて男連中が勝てないって…。どんな女だよ…。女子レスリングの選手か何かなのか?」
 ゴリラのようにたくましい女性をカノンは想像した。
「いや、何を想像してるか知らんが…。顔は可愛いよ?巨乳だし」
 「巨乳」をアケローオスが強調する。
「じゃあ、巨乳のゴリラ…?」
 両胸がボインと突き出した毛深くて筋肉質な女性を想像し、ますますカノンは引いた。
「…お前、アテナの盾(アイギス)でぶん殴られるぞ…」
 ぼそっと小声でアケローオスが呟いた。
「ん?何か言った?」
「いや、いい…。ところでカノン、風呂と夕飯と、どっちを先にする?」
「ん〜?風呂に先に入るわ。もうすぐサガも帰ってくるだろ?あいつが風呂に入ったら長いもん」
「じゃあ、早く入ってこい」
「うん」
 そして入浴の準備に向かったカノンは、くすくすと笑った。
「なんか新婚夫婦みたいな会話だな〜。あなた、お風呂にする?ご飯にする?それとも、ワ・タ・シ?」
 からかうようなカノンの台詞にアケローオスが顔をしかめた。
「…ふざけてないで、さっさと風呂に行け。夕飯はテーブルの上にあるから、電子レンジで温めろ」
「は〜い」
 明るく笑って、カノンは風呂場に向かった。

 カノンが入浴を終えて上がってみると、兄のサガも帰宅していて、一足先に電子レンジで温めた夕食を食べていた。
「ああ、サガ、帰ってたのか。お帰り」
「ただいま」
 双子たちは挨拶を交わした。お前が風呂に入っているので、私は先に食事にすることにした、と、サガが説明する。
 カノンも自分の分の食事を電子レンジで温め、遅い夕食を始めた。メニューはフライドチキンと、キャベツと根菜の煮込みと、魚介のトマトシチューである。
「なあ、サガ…」
 フライドチキンを食べながらカノンがサガに尋ねた。
「そもそも、おれたち、何でここに住むことになったんだっけ…?」
「さあ…?」
 弟に尋ねられたサガも小首をかしげた。
「このマンションってアケローオスの持ち物だと思ってたけど、実は姪のものだって聞いてさ…。バイト先で会う奴とアケローオスも親戚だって聞いて…。なんかおれたちの知らないことが色々とあったんだけど、そもそもどうしておれたちがここに住んでるのかなって…」
 カノンの話に、サガも少し考え始めた。
「う〜ん…。確か、私たちが行き場所がなくて困ってるときに、知り合いのアケローオスが『だったらおれの家に来ればいい』と勧めてくれて、ここに住むことになったような…」
 違ったかな?とサガは記憶をたどったが、はっきりとは経緯を思い出せなかった。
「う〜ん、そうだよなぁ。おれたち、親もいないし、実家もないし…。そんな感じだったような…」
 カノンもあいまいな記憶に首をひねる。
「まあ、何でもいいではないか。それで特に問題があるわけでもない」
 サガはそう言って会話を打ち切った。では私は風呂に入ってくる、と、先に食事を終えたサガは、キッチンを出て入浴の準備をしに行った。
 思い出せずとも勝手に納得したらしいサガと違い、カノンはその後もはっきりとしない過去の記憶をたどり続けた。だがどうしても昔のことが思い出せず、寝台に入った後も考え続けて悶々とし、寝返りを何度も打つことになった。
「…まだ寝れないのか、カノン」
 隣のベッドにいるサガが弟に声をかける。二人は同じ寝室を使っていて、ベッドを二つ、横隣に並べて寝ている。
「う…ん、やっぱり気になって…」
「まったく…。昼の講義で寝てばかりいるから、夜が寝れなくなるのだ…」
 むにゃむにゃと呟きながら、サガはそのまま寝てしまった。兄が眠りに落ちた後も、カノンは寝付けずに悶々とし続けた。ごろん、ごろん、と、何度も寝返りを打ち、
「…くっそー!眠れん!」
 そしてカノンはあることを思いついた。

 寝ていたアケローオスは、下半身の違和感で目を覚ました。
「…なんだ…?」
 まぶたを開けたアケローオスが視線を自分の下半身に向けると、そこで何やらやっていたカノンと目が合った。
「あ、起きた?」

(この先はR-18なので割愛)

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