監督脚本クリストファー・ノーラン。
古代ギリシアの詩人ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」の映画化。
長く続いていたトロイア戦争を「木馬」の奇計で以て勝利に導いたイタケの王オデュッセウス(マット・デイモン)。
戦争終結により、王妃ペネロペ(アン・ハサウェイ)と息子テレマコス(トム・ホランド)が待つ故郷イタケへの帰還の旅につくが、海の神のポセイドンの怒りを買い、彼と部下の進む先には幾多の試練が待ち受ける。
一方、イタケ本国では、帰還しないまま行方不明のオデュッセウスについて、多くの者が彼は既に死んだものと信じ始めていた。
そうした中、アンティオス(ロバート・パティンソン)らの有力者は、ペネロペと再婚し、権力を奪おうと暗躍を始める。
長編映画として史上初となる全編IMAXフィルムカメラでの撮影作品とのことで、IMAXで観賞しました。上映時間172分の大作、確かに映像は素晴らしいです。
それで、クリストファー・ノーランが描こうとしたのは、歴史冒険エンタメよりも、人間の罪と罰、贖罪といった、より真面目なテーマでしたね。
オデュッセウスの有名な「トロイの木馬作戦」については、「人間の信頼を裏切る騙し討ちであって、ゼウスの掟(クセニア)にも背くもの」との解釈。
また、トロイ陥落後の虐殺破壊行為について、それを目の当たりにしたオデュッセウスが深い罪悪感に苛まれる描写が有ります。
ただ、国際人道法や人権の概念が無かった古代においては、戦争における奇計や裏切り、虐殺破壊行為は当たり前。古代の英雄と呼ばれる人たちは、皆、そうした行為をしています。
オデュッセウス自身が、自分が用いて大勝利した木馬作戦や、その後の虐殺略奪行為について罪悪感を感じたりとか、ちょっとあり得ないです。
仮に、古代における英雄が、戦争における奇計裏切り虐殺略奪行為に深い罪悪感を感じ、以後自分はそうしたことはしないとか、配下の者にもさせないとしたならば、その国は滅びますね。
弱肉強食の時代ではそうした国は生存できません。
本作は、現代の価値観を、紀元前の世界に当てはめようとしていますが、それは無理があると思います。
もっとも、現代の国際関係では、一部の大国が、法の支配を無視した横暴な行為や、非戦闘員の殺害行為を繰り返しており、そうした国に抗議もせずに、迎合やご機嫌取りをしている国もあります。
そうした現代社会に、本作は、古代の物語の姿を借りて、人間の罪と罰と贖罪に関するテーマをあえて提示した…のかもしれませんね。
(完)
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