監督柴田岳志。
2025年8月にNHKで放送されたドラマの劇場版。
長崎出身で、原爆被爆者の声を集め続けたジャーナリストの伊藤明彦の実話を基にしたストーリー。
1972年、高度経済成長期の日本。
辻原保(本木雅弘)は、以前、長崎放送の記者で、原爆被爆者の体験談を取材していたが、都合により退社。
現在、個人のジャーナリストとして、引き続き各地の被爆者を訪ね歩いて、その体験談をテープに録音し、記録している。
だが、当時は被爆体験はタブー視される風潮があり、被爆者の中には取材を拒否する人も多かった。
また、辻原はフリージャーナリストの立場であり、生活費や取材活動費は、キャバレーでのアルバイトをして何とか工面している状況。
だが、彼は被爆者の体験談を集め、記録し、次の世代に語り継ぐことに使命感を感じており、まだまだ取材活動は続けていく信念である。
そんなある日、辻原は被爆者の九野和平(阿部サダヲ)と出会う。
九野は被爆による重い後遺症があり、生活保護を受けてアパートで一人暮らしをしていた。
九野は、辻原の「被爆体験を記録して次世代に伝える意義」に多いに賛同し、積極的に自己の被爆体験を詳しく語って聞かせる。辻原はそれから何度も彼のアパートに足を運ぶことに。
だが、辻原はある日、取材した体験談の整理をしていて、ある事に気が付く。それは…
九野の証言は、客観的な事実関係において矛盾する点がある。それに彼の親族で被爆時に唯一生き残り、何度も体験談に登場する、彼の姉の名前が分からない。彼は「姉」としか言わない。これは一体どうしたことか?…
NHKのドラマ版は未見です。
実在のジャーナリストの体験談を基にしており、かつ、被爆体験談がテーマなので、映画を観る前は、被爆ドキュメンタリーのような(?)映画なのかと思っていましたが…
サイコっぽい阿部サダヲの演技など、サスペンス調な部分もあり、かつ、ラスト近くは感動エピソードが待っていて、ドラマ性の高いストーリーでした。
今年の8月は、先の大戦をテーマにした映画としては「開戦前夜」があり、これもNHKで放送された番組の映画版ですが、どちらか一本を選ぶとするなら、本作「八月の声を運ぶ男」を選びます。
映画「開戦前夜」は、登場人物を架空設定するなどしていますが、それ以外に看過できない史実の改変、歪曲の難点があります。
一方、本作「八月の声を運ぶ男」も登場人物は架空設定がありますが、被爆者の心情をドラマとして表現することに成功していると思います。
そして、それを印象深く伝えことのできる映画作品はそんなに多くはありません。…お勧めです。
(完)
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