を読んだ。水木しげる著
巻末に「1998.10.22 天牛古本」と自分の書き込みがあるので、26年ぶりくらいの再読と思われる。
第一章 怪奇譚
終電車の女
売れない漫画家の山本は、原稿が売れずに金もなく、友人の赤鼻のところに行ってみるが留守で、空腹だったので棚にあったなにかの薬を勝手に飲んだ。
その後帰りの切符を拾えないかと駅をうろつくが見つからず、途方に暮れていたところに美女が通りかかる。
彼女は山本が自分を見えているのに気づき、彼を家に誘って豪華な食事をふるまい、大金までくれた。
彼女は霊的な存在であり、心配した赤鼻はなんとか彼女を追い払うために心霊研究で有名な椿博士に相談し・・・。
水木しげる版ロミとジュリエット。
こういう話に出てくる博士や霊能者はやたらに有能なので、1人で頑張っている霊子ちゃん(仮名/笑)がかわいそう。
猫又
本で猫又のことを読んだ少年は、隣の道楽息子に誘われてドライブに行き、沖ノ島で旧陸軍の要塞で鉄くずを拾う手伝いをさせられる。
腹が減った道楽息子は島をうろついていた尻尾が2つに割れた黒猫を食べてしまうが、その後様子がおかしくなり・・・。
猫又が妖怪というよりも特殊な生物という趣で雰囲気がある。
墓守虫
墓場で墓穴を前に話している夫婦。
夫は妻に保険金をせしめるために、3日間眠れる薬を飲んで仮死状態になってくれと言う。
妻は了承するが、夫にも保険金を1千万円かけるように要求する。
計画通り妻は薬を飲んで仮死状態となり、保険も無事降りることになったが、夫は家に生きた人間の肉を食べる伝説の墓守虫が隠されていたのを見つけ・・・。
夫が「伝説の墓守虫」をすぐそれだと気づくのが変だが、細かいことは印象的なオチに持っていくためには気にしないということだろう。
そもそも妻の計画も墓守虫が無くても実行できる(笑)
血太郎奇談
奇怪な容姿の血太郎は生まれた直後から奇妙な赤ん坊だった。
血太郎は5歳になって初めて声を発したが、その最初の言葉は「死」だった。
血太郎は猫を捕まえるといきなり皮をはいだ。
小学校に上がった血太郎は街で見たポスターに惹かれ、吸血鬼の映画を観・・・。
鬼太郎ではなくて血太郎(笑)
ラストがかっこいい。
人と違うが自分の世界を探してもがき苦しみ、やがて・・・という展開は水木しげるの叫びのようにも見える。
第二章 狂気譚
大人物
40年かけて「死者を蘇らせる方法」を見つけた男は、誰を蘇らせればお金持ちにしてくれるかを妻と相談し、結果西郷隆盛を復活させるが・・・。
その人選に妻は反対していた(笑)
そして最後は完全に悟りを開く妻が楽しい。
一番病
江戸時代。日本一の棺桶屋を自負する徳兵衛は、その品質ばかりか生産量でも日本一でなければ気がすまず、日夜狂ったように棺桶を作り続け・・・。
オチがすごい。ちうかオチが無い(笑)
暑い日
暑さを凌ぐために夜の散歩に出た水木しげるが、コツコツという音に導かれてやってきたのは石を彫る職人の家で・・・。
ななななななななんと、「八月の炎暑」の丸パクリである(汗)
化夢宇留仁は人に勧められてつい最近読んだ短編のパクリ漫画を26年も前に読んでいたのだ(汗)
なんてことだ(笑)
霊形手術
2回目の整形手術を終えてすっかり美人になった月子に、許嫁の三吉が結婚するように迫るが彼女にはそんな気はない。しかし三吉は柔道初段なので、気味の悪い男と結婚するということにして追い払おうとする。
そうして選ばれた男が夜に外出したので三吉が後をつけてみると、男は墓場でヒトダマを捕まえようとしており・・・。
どうやらヒトダマ→天ぷらのコースはこの話から生まれたらしい(笑)
そしてオチがなんだかいい感じ。
木枯し
招かれてやってきた叔父の屋敷は、夜になると悲鳴のような奇怪な風の音が。
昔叔父から聞いたアメリカの恐怖小説「しゃれこうべ」は、夫が妻が寝ている間に耳にじょうごで鉛を流し込んで殺し、妻のしゃれこうべがそんな音を発するというもので、叔父は1年前に妻を亡くして莫大な財産を手に入れていた。
奇妙な音が屋敷の中から聞こえてくるような気がして探してみると、果たして誰かのしゃれこうべが・・・。
なんかこれもゴシックホラー小説のパクリっぽい雰囲気だが、元の作品を見つけることはできなかった。作中で語られる「しゃれこうべ」という作品も。
しかしパクリかと思うくらいに雰囲気はいい(笑)
第三章 幻想譚
天国
古代の日本と思われる森で、天国を探す若者ボロクタは旧友の老人フルドトと出会い、老人の村に連れて行ってもらう。
そこに巨大な異形のなにかが現れる。
それは土を食べると土器などの便利なものを排出した。
それは「ブンメイ」もしくは「シンポ」と名付けられ、次々に便利なものを生み出すので村人たちはブンメイに食べさせる硬い土を掘り続け・・・。
ブンメイのデザインがハート形土偶そのままで気が効いている。
そして名前から想像する通りのストーリー展開も見事なもので、非常に完成度の高い作品。
ヘンラヘラヘラ
公害病で入院していた少年金太に薬を浴びるほど飲ませていたところ死んでしまったので、トンカチで頭を殴ってショーゲキを与えているうちに、コブの先端から新たな生命が生まれた。
それは「ヘンラヘラヘラ」と笑った。
院長はこれを偉大な発見だとして大々的に発表して大評判になるが、新生命がときどき空を浮遊して人を殺しているのがわかり・・・。
公害を出している工場、病院、製薬会社が一丸となって金儲けに邁進した結果ヘンラヘラヘラに殺されていくのだが、全然風刺感は無い(汗)
一番印象的なのは金太のぶさいくだが優しいお母さんだった(汗)
コケカキイキイ
死にかけの老婆が廃屋を死に場所に定める。そこには老婆と同じく死にかけの赤子、猫、猫にたかっている2匹のシラミがおり、彼らの生きたいという願望はコケカキイキイを生み出した。
コケカキイキイは村を森に飲み込ませ、東京に向かった・・・。
なにがすごいって、「ヘンラヘラヘラ」の次の話が「コケカキイキイ」なところである(笑)
コケカキイキイの行動原理はヘンラヘラヘラに近いものだが、更に圧倒的なパワーを持っているので世界自体を作り変えてしまう勢い。
それにしてもこの作品の冒頭部分はあまりにも天才的な発想によるものだが、あまり水木先生っぽくないので、もしかしてこれも元ネタがあるのかしら???
最初の米
約2000年前。旅人がよみの国にはとても美味い白い実をつける草があり、その種さえ手に入れば猟でなにも捕れなくても生きていけるということだった。
その村からヨギとモギという少年がよみの国に旅立って種を取ってくることになるが・・・。
てっきり神話を漫画化したものだと思って調べてみたのだが、水木しげるの名前しか出てこない。まさかとは思うが、この内容をオリジナルで作れる脳みそは天才以外の何物でもないぞ(汗)
まあ天才なのはわかっていたが(笑)
ちうわけで鬼太郎はチラとも現れない初期短編集だが、どの話も全然違う味わいがあって読み応えのある1冊だった。
それにしても「暑い日」には驚いた(笑)
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