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2024年06月14日23:31

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ヘラクレスの冒険

を読んだ。アガサ・クリスティ著/高橋豊訳
 ポアロが引退を考えていると話すと、旧友のバートン博士は笑い飛ばし、ヘラクレス(エルキュール)の難業と違ってポアロの仕事は終わらないと断言する。
ポアロはその意見を重視しなかったが、自分が古典語を知らないことを認識し、秘書のミス・レモンに命じてヘラクレスに関する資料を集める。
ヘラクレス自体は彼にとっては我慢のならない犯罪者でしかなかったが、その12の難業については彼に1つのアイデアを与える役に立った。

ネメアの谷のライオン
 有能な秘書であるミス・レモンにポアロが興味を持ちそうな手紙があったかと聞くと、彼女は行方不明のチンを探してほしいという手紙を挙げた。
あまりにもしょうもない依頼を挙げられたことに頭にくるポアロだったが、その事件が自分に課した引退するまでに引き受ける最後の12の仕事であるヘラクレスの難業の最初の1つに符合することに気づくのだった。

 クリスティの短編を読んだのはひさ〜〜〜〜〜〜〜しぶりで、その情報の密度とテンポの早さにちょっとついていけてない感じがした(汗)
あれよ。あれよ。

レルネーのヒドラ
 自分が妻を毒殺したという噂が広まって困り果てているオールドフィールド医師の相談を受けたポアロは、彼の妻が酷くわがままだったことに加え、彼が薬剤師のジーンと仲がよかったことを知った上で調査を進める。
事件は単純に噂を流すというような他愛のないものではなく・・・。

 最近荒唐無稽なSFを読む機会が多かったせいか、物語の中で不自然に思うところがあっても「まあ物語を進めるためのご都合主義はよくあること」とあまり気にしていなかったのだが、クリスティはそうじゃないのを思い知らされた(汗)
不自然なところは必ず事件の真相に関わっているのだ。
それを肝に銘じて読み進める。

アルカディアの鹿
 お気に入りのメッサロ・グラッツ(メッサー・グランツ)が故障して極寒の中を歩き続け、ようやくたどり着いた宿屋で呼んだ自動車修理工は目の覚めるような美青年だった。
彼はポアロの車の修理をするのはもちろん、ポアロのことを知っており、ある悩みを打ち明ける。
それは彼が出会った美しい付き添い女中が消え失せてしまったというもので、彼の容姿も手伝ってポアロの興味を引くのに十分なものだった。

 別にポアロに男色趣味があるというわけではなく(笑)、ヘラクレスの難業に符合したということである。
この話は珍しく化夢宇留仁にもカラクリの予想がついた。
美しいトップバレリーナが付き添い女中にそんな美人を雇うのは不自然だ(笑)
ラストも優しい世界な感じでよかった。

エルマントスのイノシシ
 雪山に登るケーブルカーに乗り込んだポアロは、終点まで乗る気はさらさら無かったのだが、途中でルマントゥーイェ警視の手紙を受け取り、終点のロシュ・ネージェにあるホテルで凶悪殺人犯を捕らえる協力をすることに。
乗客は限られており、ホテルに着くと雪崩によって下界との連絡も途切れ・・・。

 「名探偵の掟」すぎる(笑)
もちろん順番は逆なのだが(笑)
そして「ポアロの眼力」はちょっとルール違反では(笑)?

アウゲイアス王の大牛舎
 サー・ジョージ・コンウェイは窮地に立たされていた。
彼の妻の父親でありイギリス国民から全幅の信頼を得ていた先代首相ジョン・ハメットの一大スキャンダルがX線ニュースという新聞社にすっぱ抜かれようとしていたのだ。
ポアロにはアウゲイアス王の大牛舎と同じく「自然」の力でそれを押し流す計略があった・・・。

 計略が始まった途端にそのカラクリはわかるが、それはそれでわかった上で展開を楽しむタイプの作品だと思う。

ステュムバロスの鳥
 若き政務次官ハロルド・ウォーリングは人の少ないヘルゾスロヴァキアで休暇を過ごしていた。そこ泊まっているイギリス人は彼以外には活気に溢れたライス夫人と、その娘である古風な美人のエルジーだけで、ハロルドはスロバキア語が話せなかったので、必要なときにはその2人に通訳してもらい、不自由なく過ごしていた。
ところがある日魔女のような容貌の2人の老女がやってきてからというもの、彼の心の平安は打ち砕かれ・・・。

 不自然なところは不自然だと思っていいんだと自分に言い聞かせたのに、再び引っかかる化夢宇留仁(汗)
だって外国だし(汗)
ちうかこの話のポアロの活躍は・・・少なくとも推理は全然関係ないぞ(笑)

クレタ島の雄牛
 ダイアナ・メイバリーはくたびれた服装をしており、態度もおどおどしていたが、ごこに隠された傲慢さもポアロは見逃さなかった。
彼女の悩みは婚約者が気が狂う運命にあるという不気味なものだった・・・。

 あからさまなミスリードにすっかりはまる化夢宇留仁(笑)
そしてこの話も上記の「不自然」がヒントになっている。もちろん見逃したが(汗)

ディオメーデスの馬
 若きストダード医師に呼び出されたポアロは、麻薬の絡んだパーティーの調査を行うことに。
ストダード医師は若くて可愛いシーラ・グラントがこの事件に巻き込まれないようにすることを望んでいたが・・・。

 いくらなんでもその推理は飛躍しすぎでは(汗)?
ちうかこういう偽情報の多いエピソードは化夢宇留仁には完全にお手上げである。
そうじゃないエピソードもお手上げなのだが(汗)

ヒッポリュトスの帯
 新たに発見されたルーベンスの絵画が盗まれた。
そんなありきたりな事件には興味を持てないポアロだったが、ついでのように依頼された女学生の消失事件には俄然興味を惹かれた。
 ウィニー・キングという15歳の少女がイギリスからフランスへ向かう列車の中で忽然と姿を消した。その後彼女は発見されて事件は解決かと思われたが、ポアロはそこに隠された計略を見透かしていた・・・。

 そこつながるの(汗)!?
しかし言われてみれば全てが符合する。
クリスティ先生流石っす(汗)

ゲリュオンの牛たち
 ミス・カーナビがポアロのところに訪ねてくる。
彼女は家族のいない友人が不気味な新興宗教に陶酔し、その教団に全財産を遺すという遺言状を書いたことまでは個人の自由の範囲だと思っていたが、同じような境遇の裕福な女性が次々に命を落としているのを知って不吉な予感を感じており・・・。

 ミス・カーナビというのは本書の第1話の「ネメアの谷のライオン」に出てきた人で、ネタバレになるので説明はできないが、ある限られたジャンルの才能のいくつかに長けている。
冒頭出てきたときにびっくりしたが、クリスティはこういう過去のエピソードの登場人物を活かすのも巧みだったのを思い出した。
なにしろキャラクターを活かすのがうまい上に再登場キャラクターともなればその活き活き度合が倍増するわけで、やはり彼女の大活躍が痛快な作品に仕上がっている。
ほんとにクリスティは底が知れない。

ヘスペリスたちのりんご
 裕福な美術品の鑑定家であるエマリー・パワーは、血塗られた歴史をまとったボルジアの酒杯を10年ほど前に3万ポンドで落札したが、手に入れるまでに盗まれてしまった。
それは彼のライバルの手元にあるのだと考えていたのだが、最近そうではないとわかって宛が無くなったエマリーはポアロにその捜索を依頼する。

 ラストまでの展開自体は特に目立ったところは見当たらないのだが、エマリー・パワーのキャラクターが面白くて魅力的なので、実に面白く読めた。
そしてオチは完全に「美味しんぼ」(笑)

ケルベロスの捕獲
 ロンドンの地下鉄の混雑という地獄からようやく抜け出したと思ったポアロに声をかけたのは、20年前に鮮やかな宝石盗難の手口とその美貌でポアロに注目させたヴェラ・ロサコフ伯爵夫人だった。
彼女はポアロに「地獄に来てくれ」という謎めいたメッセージを残して姿を消し・・・。

 まずポアロの秘書であるミス・レモンが有能すぎてかっこよすぎ(笑)
さらにびっくりなのは件のヴェラにポアロがベタ惚れというところ(笑)
ちうか彼女は他のエピソードで真犯人として登場した人なのだろうか???

 ちうわけでヘラクレスの難業になぞらえた12の連作短編集である。
まず最初に驚いたのは、「エルキュール」と「ヘラクレス」が同じスペルという事実である。
あとで遠い昔に読んだ記憶があるような気もしてきたが、全然覚えていなくて超びっくりした(汗)
だってポアロとヘラクレスはまさに真逆なキャラじゃないですか(笑)?
しかし考えてみると、この意外性はアルファベットを使用しない言語圏に限られた贅沢な楽しみかもしれない(笑)
 本書は上記の通り晩年のポアロが引退を前に自分に課したミッションをクリアしていくという内容で、最初はひさしぶりすぎて少々戸惑いはしたが、基本的には非常に面白く読めたのだが、最後にエピローグがないのは大きな不満だった。
だって12の難業をクリアしたら引退すると言ってるのに、それらをクリアしたあとのポアロの心情や結局どうしたのかを書かないのは片手落ちでしょう(汗)
まあ関係なく探偵をまだまだ続けたんだろうけど。
 そう言えばヘイスティングスは一切言及さえされなかった。
ポアロにとってのヘイスティングスは、ホームズにとってのワトソンと比べると全く重要じゃないキャラクターのようだ(笑)
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