を読んだ。昨日。星新一著/新潮文庫
星新一のショートショート集を読むのはおそらく30年以上ぶり(汗)
昔面白く読んだが、今ならどう思うかを試してみたくなったのだ。
デラックスな拳銃
仕事も家も家族も捨てて作り上げたデラックスな拳銃を持って、宛もなく旅立つ「私」。
金が必要になればデラックスな拳銃に物を言わせれば簡単に・・・。
どのへんがデラックスかと言うと、ほとんどは拳銃とは関係ない機能がいろいろと追加されているというころで、よく言えばスマホ、そうじゃなければ十徳ナイフみたいな(汗)
それはいいとして、この話は主人公が何を考えているのかさっぱりわからず、そのせいで落ちもほとんど意味不明になっていて困った。
星新一のショートショートって、こんなにしょうもなかったっけ?と初っ端から不安に(汗)
雨
氷河期に覆われた西暦4000年、ある夫婦が食料を求めて過去にタイムスリップする。
意外すぎるオチで面白い。この著者にこんなオチの作品があったとは。
初期作品集ならではかもしれない。
弱点
奇妙な玉は怪物の卵だった。
それはどうしても殺すことができず、しかも更に卵を生み・・・。
微妙すぎるオチ(汗)
宇宙通信
宇宙の彼方に送り続けていた電波にとうとう返答があった。
なんとか意思の疎通をしようと書類などを送ってみると・・・。
これまた微妙なオチだが、いかにもショートショートらしくはある。
桃源郷
テレビカメラを搭載した無人のロケットがたどり着いた惑星は、核戦争の末に地獄と化した世界のようだったが・・・。
なんとなく「カプリコン1」(笑)
証人
人気女優が青酸カリを飲んで自殺したのを、刑事である「私」が調査する。
どうやら自殺と見せかけた他殺らしいのだが、テレビ局の対応は・・・。
テレビが導入されて生放送ドラマが大人気だった頃の作品らしい。
全てが刹那的。
患者
患者が持つ女性への劣等感を、催眠術による過去の追体験で解消させようとする精神科医。
それはうまくいったが、現在の年齢に戻すところを1年先の未来にしてみたところ・・・。
著者が大好きなアメリカの1コマ漫画みたいな味わいのコメディ。
この頃からもう集めていたんだろうか。
たのしみ
山間部の小さな村は、ほとんど外部との接触も無く平和で、唯一の楽しみは数年に一度開催される祭りだけだった。
そんなところに1人の男が現れ・・・。
「2000人の狂人」を思い出した(笑)
天使考
すっかりだらけてしまった天使たちにやる気を出させるために、ミカエル社とガブリエル社に分けて競い合わせることにした神様。
結果天使たちの競争は加熱し、死神さながらに人間の魂を次々と天国へ・・・。
こういう神秘的なものの「会社化」というアイデアは誰が最初にやったんだろうか?
この著者だろうか?
不満
無理やりロケットに乗せられた「おれ」がたどり着いたのは、高度な科学技術と文化を持った惑星だった。
彼らは「おれ」の話に同情し・・・。
オチは予想通り。珍しくやんわりとだが時事ネタが活用されている。
神々の作法
ある平和な星に地球からのロケットが到着。
現地の王はそれを神の乗り物だと思い、なんとかもてなそうとするがどうしてよいのかわからない。
そこに更にもう1台のロケットが到着し・・・。
これも微妙に時事ネタ(冷戦)が。
すばらしい天体
行方不明になったロケットを捜索していたロケットが記録にない惑星を発見し、降りてみるとそこは楽園のような世界で、行方不明になったロケットとその乗員もそこにいたが・・・。
よくある落ちだが、それを「よくある」にしたのがおそらく著者。
セキストラ
インカ帝国の顛末の後、セキストラという性的興奮を促して暴力的な傾向を抑えることができる機械が全世界に広がっていく様子を、記録の抜粋という形で掲載。
冒頭から落ちは予想できるが、雰囲気があって面白い。
宇宙からの客
1人乗りのUFOが地球に着陸。彼は地球との大規模交易を約束するが・・・。
これもよくある落ちと思ったが、そもそも昔これを読んだときの印象が残っていたもののようだ。
待機
国家間の対立を解消したおかげで宇宙開発が進展し、とうとう探査宇宙船が人類が生存可能な素晴らしい惑星を発見する。しかしそこにはリスのような見た目の知的生物が存在し・・・。
著者が得意な思い込みを利用した落ちで、冒頭の隊員たちの微妙な描写が興味深い。
西部に生きる男
アリゾナ州のはずれの岩山で、人質と身代金の交換が行われようとしていた。
ところがその2人はいずれも只者ではなかった。
なんだか懐かしい雰囲気。
極端ではあるが、確かに西部劇ってこんな雰囲気だったかも(笑)
空への門
ロケットの乗員になれるのは、体力学力ともに最高のエリートだけだった。
「彼」は努力を重ね、その実現が近づくとともに他を見下すようになっていたが・・・。
変化球の落ちが楽しい。
実際こういうことは歴史上沢山生じているはず。
思索販売業
腕利きセールスマンの「私」は、今日も言葉巧みに商品の販売に成功する。
それは他のセールスマンやダイレクトメールを撃退するグッズの数々だった。
ところがそんな彼のところにセールスマンがやってきて・・・。
バタフライエフェクト的な(笑)
現在のメールやブラウザ上での販売広告&ブロックのイタチごっこの予見のようでもある。
霧の星で
霧の立ち込める星で遭難した男と女。男は女につくすが、女は男に興味がない。
そんなところに救助隊が・・・。
まあそうなるわな(笑)
水音
会社でみんながペットの話に盛り上がっていたが、計算をしていた男は興味が無いようだった。
しかし男は特別なペットを飼っており・・・。
意外なペットとなぜか爽やかなエンディングが面白い。
早春の土
精神病院を取材していた記者は、庭に穴を掘っている男にインタビューする。
男は自分を海賊だと思い込んでおり、彼にだけ見える肩にとまったオウムと話をしていた。
男は金を掘り出そうとしているという話で、記者はそれを手伝うが・・・。
医者は見えないって言うんだろうか。
友好使節
正体不明の宇宙船が地球に接近しているのが発見された。
侵略だった場合は恒星間宇宙船を作れる相手には勝ち目がないので、とにかく大歓迎して攻撃されないようにすることに。
ところが異星人はひどく醜い姿をしており・・・。
落ちのあとの展開が気になる(笑)
蛍
蛍は絶滅寸前だったが、それが売りの旅館ではランプが付いた超小型のヘリコプターを蛍ということにして大量に飛ばした。
その中に混じって弱々しい光を放って飛ぶ本物の蛍を見た男女は・・・。
なにこのちょっと切ない話は(笑)
ずれ
なんでも電話で注文すれば即座に商品が送られてくるシューター。
その送り先が1つずつずれてしまったために起きる悲喜劇。
まあまあ面白いが、もう一捻りほしかったかも。
愛の鍵
ドアロックのパスワードを音声で告げて開けるのが一般的になっている世界。
ちょっとしたことで彼氏と喧嘩してしまった女は、彼に面と向かっては謝れないのでパスワードに・・・。
なにこのロマンティックな話は(笑)
ちうか音声パスワード認証は超小型マイクとか、色々抜け穴がありそうだぞ。
小さな十字架
戦前、ヨーロッパに留学していた「彼」は、酔っ払って小さな銀の十字架を買った。
戦後お金がほしかった彼はそれを複製して売ることに。ところがオリジナルの十字架が商品に紛れ込んでしまい・・・。
なにこのメルヘンは(笑)
ちうか著者はクリスチャンというわけじゃないよね?
見失った表情
友達で美容整形を生業にしているキーラのところにやってきたアキコは、特別な手術を依頼する。それは自分の表情を自由にコントロールできる装置で政府に禁止されていたが・・・。
自分の表情をコントロールする装置というのは流石に無理がある気がする。
誰でも鏡さえあれば練習できるのでは。まあその表情がどんな効果を生み出せるかの評価は自分では難しいかもしれないが。
悪をのろおう
泥棒に逃げられ、犯人を突き止めるための遺留品は髪の毛だけだった。
そこに藁人形を持った男が現れ・・・。
こういう常識とオカルトを結びつけたアイデアが好きだよね。
落ちは超ベタなやつ(笑)
傲慢な客
資産家に小型ロケットを貸し切らせることで儲けている「私」は、豪華な椅子に反り返った狩りがしたいという客をまだ誰も案内していない星に連れて行った。
客は珍しい動物を仕留めるのに成功し、喜ぶかと思いきや・・・。
今となってはワンピースのボア・ハンコックを思い出さざるを得ない落ち(笑)
探検隊
巨大な宇宙船に乗って、巨大な異星人が地球にやってきた。
彼らはどうも調査が目的らしかったが、地球人と意思を疎通しようとはしなかった。
やがて彼らは騎乗用の動物だけを残して去っていったが・・・。
あとがきでも書いているが時事ネタである。
対談かなにかでこの視点の変換について話しているのを読んだ気もする。
最高の作戦
その惑星にも略奪者の集団が到来した。戦っても勝ち目はないので、一人ひとりにつきっきりで接待しつつ反撃のチャンスを伺うことにするが・・・。
なぜか最後は男と女の理想的状態に(笑)
通信販売
地球外への通信販売で潤っている「私」は、初めての注文内容が少々奇妙だった惑星から追加で大量の注文があったので、配達と集金ついでに行ってみると・・・。
なにこの小学生っぽいオチは(笑)
テレビ・ショー
政府の提供によるテレビ・ショーは親に子供に見せるのを強く推奨していた。
その家でも非常に頭が良く親の言うこともよく聞く子供がショーの時間に間に合うように急いで帰ってきたが・・・。
これは逆効果だと思う。もっと秘密めかさないと(笑)
開拓者たち
ある植民星では合成食料による奇病が発生しており、このままでは全滅も時間の問題だった。天然食材が手に入れば解決するはずだったが、地球との連絡は途絶えており・・・。
よかったよかった(笑)
復讐
宇宙船の大編隊が地球に来襲し、破壊の限りを尽くして去り際に自分たちの星の名前を告げていった。
地球はその星への復讐を誓い、なんとか復興して十分な攻撃力も備えてその星に向かうが・・・。
やめてあげて(笑)
最後の事業
世の中がうるさすぎるので、コールドスリープの会社を作って静かになるまで眠ることにした資産家たち。しかしやがて残った人々もそれに続き・・・。
皮肉な感じで終わるのかと思ったら、全てをぶち壊すギャグ落ちに(笑)
しぶといやつ
地球にやってきた宇宙人たちは、そこを牧場にするために人類を滅ぼすことにする。
まず物寂しい川のほとりに立っていたサンプルを捕獲し、どうやったら殺せるかをテストするが・・・。
著者が得意なトリック。
いつもつぶやいているのが可愛い(笑)
処刑
処刑のために火星に降ろされた男のそばには30cmくらいの銀の玉が。
この玉のボタンを押すと水が飲めるが、あらかじめ定められた回数に達すると爆発する仕掛けだった・・・。
短編と呼べる長さで、東欧の短編映画みたいな趣。
それにしても処刑する人間をわざわざ火星まで連れてくる理由がさっぱりわからない(汗)
食事前の授業
カビの説明をする先生に対し、早くダンゴを食べたい生徒たち。
なにこの落ちは(汗)?
なんだこれ(汗)?
信用ある製品
地球が宇宙への進出を始めようとしたところに、セールスマンの乗った円盤がやってきた。セールスマンは宇宙へ進出するためには武装を整えておく必要があると説明し、完璧な防御兵器と完璧な攻撃兵器を売りつけるが・・・。
落ちが乱暴すぎる(汗)
誰か聞けよ(笑)
廃墟
古代に栄えた文明の廃墟に遠足にやってきた先生と生徒たち。その文明は過去に非常に強い爆発力をもったなにかによって一瞬で滅んでしまったらしい・・・。
落ちが落ちになっていないが、当時は意外性があったのだろうか。
殉教
発明品の公開実験が行われ、死者と会話ができる機械が紹介された。
その機械を発明した男は亡くなった妻と話をし、死後の世界が幸せなものだということを告げた後に自殺する。
残された人々は亡くなった自分の大事な人と話をしてみて・・・。
そうはならんやろ(笑)
個人主義の進んだ現在ではますますそうはならなさそう。
ちうわけで最初の作品で不安になったが、結果的には面白かった。ちうか最初の作品がひどすぎる(汗)
最初はショートショートというもの自体にも少々不安を感じていたのだが、やはりそこは大御所。その密度感や完成度の高さは他の作家が書いたショートショートとは一線を画していた。
また本書ではちょくちょく挟まる真鍋博の縦長の挿絵がまたいい感じで、なんだかお宝を見つけたように気分にさせてもらった。
星新一で有名なのが具体的な描写は避けて作品が古びないようにしているということだが、今回読んでそれは逆に言うと著者が未来に変化するものとそうでないものを予想した結果を読み取れるということだと気づいて、そういう面でも面白かった。
例えば「国電」が民営化されるのは予想できなかったらしいとか、「水音」に出てきた「計算する」という描写は、そろばんでも電卓でもなく、未来では全く異なった形態になっているだろうと正確に予想できていたのだなあとか。
総括すると子供の頃に楽しく読んだのにはちゃんと理由があったのがわかって安心した(笑)
それと前々から思っていたのだが、やっぱり化夢宇留仁的には星新一はSF作家ではない。初代御三家でSF作家と呼べるのは小松左京だけだと思う。
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