を読んだ。安部公房著
第一部 S・カルマ氏の犯罪
ある朝起きると名前が失われていた。
しかも自分の部屋からは自分の名前に関わるものは全て消失していた。
ところが会社に行ってみると「S・カルマ」という自分の名札らしいものは存在していたが、そこにS・カルマ氏はすでにいて、タイピストのY子の膝をなでながら口述筆記をさせていた。
その時そこにいるのは自分の名刺だと気づいた「わたし」は・・・。
なんだかよくわからん(笑)
朝起きたら素っ頓狂な異変に気づくのはカフカを思い出させるが、あれほど悲惨な雰囲気はなくて、カラッとしている。
裁判の件など、こないだ読んだ「ぽっぺん先生の日曜日」を思い出させるところも多かった。
第二部 バベルの塔の狸
詩人の「ぼく」は貧しかったが、飛び抜けた空想力でそれなりに幸せに過ごしていた。
しかしある日公園で狸に似た奇妙な生き物に自分の影を取られ、その結果眼以外は透明になってしまう・・・。
後半の展開はなかなか濃密な異界描写で、ラブクラフトの「偉大なる影」を思い出させた。
オチが意外にストレートで、SFっぽい。
第三部 赤い繭
赤い繭
帰る家のない「おれ」には、なぜ自分に家がないのかがわからない。
やがて彼の脚がほつれだし・・・。
不条理ショートショート。
独特の味わいはあった。
洪水
天体望遠鏡で夜空を眺めていた哲学者がなんとなく望遠鏡を下げてみると、そこに映ったのは労働者が溶けて液体になり、壁を這い上がって姿を消すところだった。
それから世界は液化した人間による洪水に見舞われ・・・。
なんだかよくわからん(笑)
魔法のチョーク
貧乏な画家のアルゴンは、部屋にあったものは椅子以外すべて売り払ってしまい、もはや売るものも無い危機的な状況だった。
ところがなぜかポケットから出てきた赤いチョークで空腹に任せて壁に食べ物の絵を描くと、なんとそれが実物に・・・。
ショートショートらしいショートショート。
事業
実業家の「私」は食用ネズミで財を成したが、ネズミよりも合理的な材料に切り替えることにする・・・。
要するに人肉食を事業化しようとしているのだが、言っていることが一々納得できるのが恐ろしい(笑)
ちうわけで多分初めて読んだ安部公房だったが、想像していたよりも読みやすく、不条理感も感じなかった。
上でよくわからんと書いているのは、なにが書いてあるのかわからないということではなく、なにが言いたいのかわからないという意味である。
最近読んだ「世界の果てまで何マイル」でもよくわからんと書いたが(笑)、あっちは著者の意図はなんとなくわかるのだがそれが文章から伝わり切れていないという感じだったのに対して、こっちはそもそも意図自体がよくわからないというか(笑)
ただしわからないからといって面白くないとは限らず、それもまあまあ面白く読めた。
一番よくわからなかったのは本の構成で、第一部とか言うからてっきり長編なんだと思っていたら、全然関係ない話を集めた短編集だったところで、これはほんとにクラクラした(汗)
昔はこんな感じの短編集が普通だったのだろうか???
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