を読んだ。池波正太郎著
江戸中期、老中田沼意次の時代の江戸を舞台に、老剣客とその一人息子の活躍を描く。
女武芸者
秋山大治郎は親が建ててくれた剣術道場の当主だが、門下生は一人もおらず、毎日近所の百姓の唖の奥さんが作ってくれる根深汁(葱の入った味噌汁)と大根の漬物と麦飯を食べて暮らしていた。
そんなところにやってきた大垣四郎兵衛と名乗る侍は、大治郎が田沼家で開かれた剣術の試合で活躍したことを知っており、彼にある者の両腕の骨を叩き折ってほしいと金五十両を差し出し・・・。
こうして始まったのだから大治郎が主役だと誰もが思うし、化夢宇留仁もそう思ったが、実は(少なくともこの話は)彼の親父の小兵衛が主役である。
これが六十の小男だが剣術の超達人で、顔も広く協力してくれる人も多く、しかし下女の二十歳の女の子おはるに手を出してしまって一緒に暮らしているという実に魅力的なキャラクターで、出てくるだけで面白い。
更にこの話ではその後も重要な位置づけとなる美貌の男装剣術士、佐々木三冬も登場。
これがもうツンデレ属性全開で(笑)
剣の誓約
大治郎のところに訪ねてきたのは、父小兵衛の弟弟子であり、かつて自分も教えを受けた老剣士嶋岡礼蔵だった。
礼蔵は近々真剣での試合を行い、おそらく自分は負けるので死に水をとってくれと大治郎に頼む。
引き受けた大治郎は対戦相手の家に書状を持って向かうが・・・。
冒頭に出てくる田螺汁がうまそうすぎる(笑)
また嶋岡礼蔵のキャラクターが実にかっこいい。
芸者変転
小兵衛は馴染みの料亭の座敷女中が偶然に聞いた話から石川甲斐守へのゆすりの計画があると知り、調査を進める。
どうやら甲斐守の一人息子がある芸者をはらませたらしい・・・。
小兵衛が007みたいな活躍を見せる。
この人はなんでもありやな(笑)
井関道場・四天王
佐々木三冬がその一人を務める井関道場の四天王の間で、井関の名を継ぐ者を決める動きが。
三冬はそんなことには興味は無かったが、道場が分裂するのも、いい加減な者が井関の名を継ぐのも耐え難く、小兵衛に相談する。
そんなとき、四天王の一人が暗殺される事件が・・・。
最後の「天罰」は誰がやったのか。
シリーズが進めば明かされるのだろうか。流れからすれば三冬かしら???
雨の鈴鹿川
嶋岡礼蔵の遺髪と小兵衛の手紙を持って大和の国の礼蔵の実家を訪れた大治郎。
その帰りにどうやら敵討ちの道中らしい男女と同じ宿に泊まる。
その後どうやら彼らの狙いが彼の兄弟弟子が守ろうとしている人物だと知り・・・。
珍しく大治郎が主役の話。
やはりキャラクターの面白さでは親父には叶わないが、剣客らしい見せ場という意味では大治郎がかっこいい。
そのへんの書き分けが実にうまい。
まゆ墨の金ちゃん
奥山念流の道場主である牛堀九万之助のところに、おかまっぽいひょろっとした色男が訪れる。
その男は三浦金太郎といい、こう見えて剣術の達人だった。
その金太郎は秋山大治郎暗殺の計画に誘われたと言い・・・。
息子を独り立ちさせるために厳しい態度を取ろうとしながら気になって仕方がない小兵衛と、一切動揺を見せずに対処する大治郎の対比が面白い。
また金ちゃんもかっこよい。
キャラクターを魅力的に描くのがほんとにうまいな。
御老中毒殺
父である田沼意次の御膳番である飯田平助がスリ被害に合うのを目撃した三冬は、スリを捕まえて平助の紙入れを取り戻すが、なんとその中には十両と毒薬が入っていた・・・。
事件が終わった後のシーンがほっこりしていい感じ(笑)
ちうわけで恥ずかしながら初めて読んだ正太郎くん(笑)だったが、滅茶苦茶面白かった。
ドラマの鬼平犯科帳は好きだったので、おそらく原作はこんな感じだと想像していた通りでもあったが(笑)
ちうか江戸時代の役職やら人名に慣れないと混乱することはあるかもしれないが、基本的には実に読みやすく、キャラクターは立ちまくりな上にユーモラスで色気があって活劇シーンはひたすらかっこいい・・・って、普通に超できのいいラノベ(笑)?
親父が時代小説が好きで、本棚には池波正太郎もずら〜〜〜っと並んでいて難しそうな本だと思っていた(そのせいで逆に時代小説を読むのが遅れた)のだが、実はそれがラノベだったとは(笑)
ラノベしか読まない人もぜひ正太郎くんは読むべきだ(笑)
それに噂には聞いていた料理の描写がどれもこれもうまそうすぎる。
出てくる料理のほとんどは実に貧相なメニューなのだが、環境やキャラクターの書き方もあって強烈にうまそうなのだ。
流石っす。
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