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2022年02月16日22:59

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紙の動物園

を読んだ。
ケン・リュウ著/古沢嘉通編・訳
 今(今じゃない?)話題のケン・リュウの代表的短編集を読んでみた。

紙の動物園
 ジャックの母親は中国人だった。彼の父がカタログで選び、アメリカに呼び寄せたのだ。
ジャックの一番古い記憶は、母親が折ってくれた折り紙の虎だった。
しかしその後ジャックはアメリカにおける中国人の母親という存在の特殊性を許容できず、母親と話をしなくなり・・・。
 ファンタジックだが状況にリアリティがあって切ない物語。
とてもよくできている。

月へ
 かつて父と娘は木に登り、月に行った。
月では月人達が優雅に暮らしていたが、彼らを歓迎していなかった。
アメリカにやってきた父娘は難民申請をしていた。
弁護士見習いのサリーは彼の話に感銘を受ける・・・。
 上のあらすじ(?)は気にしなくてよろしい(笑)
ルールが存在する限り、その目的と結果は重ならない。
これはパラドックスの一種かもしれない。

結縄
 ビルマの山の上に、普段は誰も訪れない小さな集落があり、そこでは独自の文化と生活が構築されていた。
そこには文字が存在せず、その代わりに音を表す結び目が連なる縄があった。
アメリカ人のトムはそこにタンパク質工学の緒を見つけ・・・。
 幻想的でもありハードSF風でもある非常に個性的な話。
オチをそこに持ってくるかという意外性も。

太平洋横断海底トンネル小史
 太平洋横断海底トンネルの中継地点の1つであるミッドポイント・シティで巡り合う台湾人の男性とアメリカ人の女性。
やがて男は思い出すのが辛い身の上話をして、過去を精算する。
 ケン・リュウ版「高い城の男」とも言うべき世界観で、この世界と時間軸で他の話も読んでみたい。
この時間軸は最も日本がうまくやった世界であり、太平洋戦争を起こさずに列強の仲間入りをしている。
しかしもちろんその道には公にされない犠牲も多く、結局誰が権力を握っても大して変わらない。
それはそうと、太平洋横断海底トンネルは現在の技術でも実現不可能という意見が大多数だが、化夢宇留仁もそう思う。
ただし水圧に耐えるトンネルの設計は不可能ではないと思う。
絶対的に不可能だと思うのは、経年劣化に対する対応。

心智五行
 266名のクルーを乗せたダンデライオン号が遭難し、若きタイラ1人を残して全員が死亡した。
タイラは携帯AIであるアーティとの会話を慰めに、最後のエネルギーを使って小ジャンプを行い、未探査の惑星を目指す決断をする。
それは成功し、人類が居留する世界にたどり着くが、彼女は病気になって身動きが取れなくなる。
その世界は彼女の世界では撲滅された人体に寄生するバクテリアが充満しており・・・。
 なんだかうふってなる話。
ところで人類はバクテリアの助けなしでも生きていけるのだろうか?
化夢宇留仁の印象ではミトコンドリアの例もあるし、そのままでは不可能ではないかと考えている。

愛のアルゴリズム
 幼女の形をしたロボットでヒットを飛ばした「わたし」だったが、流産をきっかけに彼女と同じ境遇の人の傷を癒やすため、人間と見分けがつかないほどのアンドロイドの設計を行う。
そこには外見だけではない完全な反応を表現するAIの設計も含まれており、やがて彼女は人間の思考とAIの思考には差異がないと気付く・・・。
 この話の中で語られている思考の仕組みは真実だと思う。
だから体調や病気によって思考も変化する。
それはそうとこの話のオチの部分の状況が理解できなかったんですけど(汗)
彼女はどうなったの???

文字占い師
 1961年9月18日。
父親の都合で台湾に住んでいるアメリカ人のリリー・ダイアーは、父親が米軍基地の外に家を構えていることでクラスでいじめられていた。
そんなある日、台湾人の老人と少年と仲良くなり、文字占いを始めとした色々なことを教えてもらうリリーだったが・・・。
 非常に幻想的かつ夢に溢れた話で、うっとりしながら読んでいたら後半のあんまりな展開に総毛立った(汗)
とりあえず228事件を始めとした台湾の歴史をもっと知りたいと思う。
それにしても漢字の解説は心地よい。

 ちうわけで今(今?)話題の著者の短編集を読んでみたわけだが、噂に違わず非常に面白かった。
各短編が全然違う内容で、かつどれも面白い。
ハズレ無し。
少し気になったのは表題作がヒューゴー、ネビュラ、幻想文学の3冠というところで、たしかに十分に面白いがそこまでとは思わなかったところ。
まあこういう賞というものはタイミングとかも大きく影響しそうだし、あまり気にしない方がいいのかも?

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