ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

日本デジタルゲーム学会コミュのEverQuest2ログ解析のインパクト

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
EverQuest2の60TBのログを解析した先週末の学会発表が4gamerで紹介され,話題になっています.

国内での反響はこちら.
http://slashdot.jp/article.pl?sid=09/02/19/011225

[AAASについて]
全米科学振興協会 (AAAS)にSony Online Entertainment がログを提供したかのように紹介されていますが,これはおそらく間違いでしょう.研究者が成果発表の場所としてAAASの年次大会を選び,それが注目されているわけです.
AAAS(トリプルエーエス)は通常の学会とはちょっと異なっていて,数百の学会を傘下におさめる学会連合で,啓蒙キャンペーンやロビー活動を目的としている科学者の運動団体です.AAAS発行の学術誌「サイエンス」は査読制による中立性を保っていますが(それでも流行のテーマはあるが),AAASの年次大会の方はむしろアメリカ連邦政府の予算配分につながるような社会的インパクトを重視した発表が行われる場でもあります.つまり,AAASで行われるゲーム研究の発表は,研究者からコメントをもらうよりも非ゲーム研究者に対するアピールの意味が込められています.

AAASについては科学技術コミュニケーション誌のレポートで紹介されていますので,アメリカの科学者集団について詳しく知りたい方はそちらをご覧ください.(AAASは「科学の経団連」だというコメントもあります.)
http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/28267

これまでのAAAS総会のプログラムや一部音声ファイルはこちらで販売されています.
http://www.aaas.org/meetings/archives/

[EverQuest研究の背景]
さて本題.私の知ってる範囲だと,これまでにゲーム内の生活記録が報告されている(研究者がデータを利用できる)のは,EverQuestシリーズ,StarWars Galaxy, EVE online,日本だと大航海時代Onlineといったところでしょうか.その中でもEverQuestシリーズはE. Castronova, T. L. Taylor, N.Yeeらによって多くの研究成果を出してきました.

たとえば昨年もDmitri Williams(USC), Nick Yee(PARC)らのEverQuest2の7000人調査というのがあります.
http://slashdot.jp/articles/08/09/19/130237.shtml
今回の発表はこの研究プロジェクトの別のチームによる発表です.この研究プロジェクト全体の説明はTerraNoveで報告されています.
http://terranova.blogs.com/terra_nova/2008/09/who-plays-how-m.html
これによるとRaph KosterがまだSOEにいたころにログを学術的に分析する話がはじまり,2008年にNSFから研究予算をとってスパコンを使ったとのこと.たしかにNSFの助成データベースを検索するとEverQuest2のログ解析で60万ドルの研究費が出ていました.
http://www.nsf.gov/awardsearch/showAward.do?AwardNumber=0841583
Raph Kosterも研究スタート当時について書いています。
http://www.raphkoster.com/2009/02/16/yet-more-eq2-data/

[今回の発表のポイント]
今回の報道の元になった発表参加者によるブログ記事から,印象的な点をあげてみます.
http://arstechnica.com/science/news/2009/02/aaas-60tb-of-behavioral-data-the-everquest-2-server-logs.ars

今回の発表が前回と異なるのは,社会ネットワーク理論の専門家とデータマイニングの専門家がプロジェクトメンバーとして発表しているところです.

キーパーソンの一人は社会ネットワーク理論の Noshir Contractor.この人がプロポーザルを出してNSFから研究予算を引き出しています.この人のやっているネットワーク理論については日本語でも入門書がいくつもでていますが,オンラインで読めるものは以下参照.
http://www.glocom.ac.jp/j/chijo/111/index.html
これまでは大きな集団を扱おうとすると限界があったのですが,オンラインゲームのデータを使えば大きな集団の中の社会関係を抽出することができるとプロポーザルでも説明されています.彼の所属校でも今回の発表の直後にプレスリリースが出ていて,そこでは"one of the largest social science research projects ever performed",つまり過去最大規模の社会科学調査だ,と豪語してます.
http://www.mccormick.northwestern.edu/news/articles/473
さらに"This is not a trivial issue," これは,これまでにない大きな一歩なんだ,と言ってますね."Now that we have the computing power to study these networks, we can explore different theories about social processes on a scale that was never possible before."

キーパーソンのもう一人は,データマイニングの研究者で,大学を休職してAmazon.comに勤務し、顧客分析をやったこともあるJaideep Srivastavaです.この人はContractor氏よりはオンラインゲーム業界を知っているような印象を持ちました.もともとオンラインゲーム業界ではゲームデザインへのフィードバックのためにデータマイニングが用いられていましたし.
初期の例: http://www.gamasutra.com/features/20030815/kennerly_01.shtml
こうしたゲームデザインとデータマイニングの関係についても言及されていたようですが,やはり顧客分析的な発言が目を引きます.

[今後の展望]
この研究にも方法上の制約はあります.個人を特定する情報を社外に持ち出さないためか,ログにはチャットは含まれておらず,談話分析はできません.

SOE,研究のために提出した「EverQuest 2」のデータに個人情報は含まれずとコメント
http://www.4gamer.net/games/004/G000449/20090218053/

また申請者の入力データの信憑性までは確認できない(ネカマはどう処理するのだろうか...).厳密な論文が出るまでにはまだ時間がかかるかもしれません.

しかしながら,この発表がゲーム研究以外の領域に与えるインパクトは大きいと思います.あらゆるものにIDがつけられ,社会行動の記録がすべて残るという点で,MMORPGはユビキタス社会のプロトタイプだと言えるからです.AAASの場でこうしたアピールを行われたことにより,MMORPG研究を通じて今後のネットワーク社会にどのようなリスクとチャンスがあるのかが示されることを期待します.

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

日本デジタルゲーム学会 更新情報

日本デジタルゲーム学会のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング