暇だから読んでやろう。コミュの名前のない人間

　僕には名前がない。生まれてからずっと呼ばれたことがない。だけど存在している。例え君が認めてくれなくても、ここで、こうして君にメッセージを書いているのは僕であって、君ではない。君はアルコールを飲むと、たまーに心のロックがゆるくなるんだよ。そんな時、僕は君を使って、こんなことができるのさ。
　僕には名前がない。生まれたのは君が高校生の頃。覚えているかい？交通事故にあった日のことを。あの夜、君は事故のショックからか、熱にうなされていた。怪我はほとんどなかったね。自転車は大破したけど、足を打撲したくらいで済んでたね。君はあの瞬間のことを覚えていないんだろう？記憶が曖昧なことにも不安を抱いていたよね？君は不安を隠すために、僕を生んだんだよ。別人としてね。だけど、存在を認めたくなかったから、思い出したくもなかったから、名前をつけてくれなかったんだよね。名前がなければ、呼ぶこともできないしね。呼びたくない君にとっては都合のいいことさ。
　もう一度言おう！僕には名前がない。だから、何にだって、誰にだってなれる。いつか、君の全てをのっとろう。君は僕で、僕は君だから、怖がらなくたっていい。君は君で、たまに見せる客観的な、第三者的な君になって、僕を見ていればいいさ。

　名前のない人間との対話。もし、話として創作するなら、こんなところか…。でも、もしも僕が君で、君が僕であったなら、君は僕を題材にしただろうか？僕にはわからない。何もわからない。わからなくたっていい。何故なら、僕は君ではないし、君は僕ではないし、同時に存在することもないのだから…。

コメント(2)

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[1] mixiユーザー 04月21日 03:24

おお！乖離性同一性障害モノかな？とか思って読んでました…
石川さんはショートなのにドキリとさせる、哲学的なお話を書けるのが凄いですよね～…しかもこの短い期間に二作も；；
自分には絶対手を出せないジャンルだったり発想だったり…
ただただ脱帽です。；；
これ、いつか本当に「君」がのっとられそうで怖いですよ～；；

[2] mixiユーザー 04月22日 19:59

コメントありがとうございます。
このコミュに掲載したニ作とも、一度、Blogで掲載したものなので…短期間に書いたものではないです。
怖がって頂けて、幸いです！

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