正しく知ろう北方領土コミュのまたぞろ、無意味な「２島返還論」がどこかで書かれていたりする

>１：日本が、①ポツダム宣言を受諾し、戦争終結を行ったこと、②サンフランシスコ条約に署名して国際社会に復帰したことを考えれば、我々がポツダム宣言、サンフランシスコ条約を無視していいという立場は国際的に取りえない。

領土問題については、サンフランシスコ講和条約は連合国がポツダム宣言で日本に対して行った約束を反故にしている。
故に、我々の方から領土問題の解決のためにサンフランシスコ講和条約を基礎とすることはまったくのナンセンスだ。
日本側にそのような「義務」はない。

実際、サ条約では「択捉・国後・歯舞・色丹」まで放棄させられていたのであり、アメリカ代表が「歯舞や色丹まではどうか？」と疑義をほのめかしていただけだ。
つまり、「サ条約を基礎としてソ連と交渉すべきだ」ということは「０島返還でソ連と交渉するべきだ」と主張することと同じだ。
サ条約を無視した立場において、初めて、ソ連との交渉が成り立っていたことを理解するべきだ。

米英中は、戦時中、カイロ宣言のビラを日本上空からばら撒き「この約束を守るから日本は降伏せよ」と呼びかけた。
そして、ポツダム宣言（ソ連も加入）においても「カイロ宣言で言ったことは絶対に守るから、日本は降伏せよ」と言っていた。
カイロ宣言では、以下のように「連合国に領土的野心がないこと（日本の古来の領土は保障すること）」が確約されていた。
日本は、彼らの言った事を信じで降伏した。

https://www8.cao.go.jp/hoppo/shiryou/pdf/gaikou06.pdf
>右同盟国は自国の為に何等の利得をも欲求するものに非ず又領土拡張の何等の念をも有するものに非ず　同盟国の目的は日本国より１９１４年の第一次世界戦争の開始以後に於て日本国が奪取し又は占領したる太平洋に於ける一切の島嶼を剥奪すること並に満洲、台湾及澎湖島の如き日本国が清国人より盗取したる一切の地域を中華民国に返還することに在り日本国は又暴力及貪欲に依り日本国の略取したる他の一切の地域より駆逐せらるべし

日本は平安・鎌倉時代から北海道に移住を初め、戦国時代末から江戸時代には北海道東方のアイヌたちを日本の経済圏に組み込んで経済活動を行っていた。
そして、その後、北方領土には、松前藩の場所が置かれ、それを幕府が継受して警察権や軍事権の確保や交易の拡大などが行われた。
そういう日本古来の土地を「日本がロシアから奪った」と嘘を付いて奪って行ったサ条約を交渉の基礎に据える必要など、まったくないはずだ。

さらに言うならば、日露戦争の結果得た南樺太についてさえ、日本は侵略の結果得た土地ではなく、仕方のない防衛戦争の結果得た土地であると言えるはずだ。

そのことは、メドベージェフが中国のロシア人戦没者の墓を訪ねた時の中国側の対応からもわかることだ。
元ロシア大統領のメドベージェフは、満州で倒れたロシア人兵士たちの墓を訪問したことがあった。
中国側は歓待し、第二次世界大戦の時に死んだロシア兵たちの墓苑に案内した。
メドベージェフは、その隣の区画にある「日ロ戦争時の戦没ロシア人の墓」にも目をやり、そこにも墓参りをしたい旨を言った。
その途端に中国側高官たちの態度が変わり、「そこは絶対にダメだ（お前たちが中国を侵略していたのだろうが！）」と言われただけだった。

それは、当時の状況をふりかえって見ても分かることだ。
中ソ国境からはるかに南下した地点にある満州のハルピンは、ロシア人たちにより開発が行われ「東のモスクワ」と呼ばれていた。
街にはヨーロッパ風の建物が並び、洋風の瀟洒なガラスのショーウィンドウを持ったヨーロッパ風の商店が連なり、ロシア人たちが闊歩していた。
さらに、ロシア人たちの満州への進出は止まらず、満州の南の果ての黄海にまで達し、大連も同様にロシア人たちの街にし始めていた。
大連は、パリの街を模して放射状に大路が集まり、ハルピンと同じく洋風の建物が並び始め、パン屋や洋風の商店が軒を連ね、各建物には温水暖房の施設などの当時の最新の設備が備えられていた。
そういうように、名目だけは清朝の土地に、ロシア人たちが次々に進出して街を作っていた。
しかも、義和団事件で各国が出兵した中でロシアだけが軍隊を引かず、満州には４０万～６０万の軍隊が常駐するようになった。
そして、そういう軍事力と経済力を背景に、ロシアは朝鮮にもちょっかいを出すようになっていた。
このような状態で３，４年過ごした後に勃発したのが、日露戦争だ。

日露戦争と言うのは、そういうロシアによる満州への侵略的行為だけではなく朝鮮半島や果ては日本に対する侵略を見据えた政策に対し、仕方なく日本側が起こした戦争だ。
そうでなければ、国力１：１０と言われた無謀な戦争を、日本の側から仕掛けたわけがない。
当時のロシアがどれほど侵略的か、どれほどアジア諸国が迷惑していたかについては、上に書いたメドベージェフの墓参りを中国側が拒否したことを見ても分かることだ。

サ条約では、南樺太はおろか、完全に戦闘など一つも起こらず日本が戦国・江戸時代から自国の領土の圏内としてきた土地である北方領土の４島さえもを奪って行った。
その交渉過程では、米英が言い争ったことが書かれている。
米国は、当時、朝鮮戦争を行い多大な戦死者を出していたから対ソ感情は悪化していて、「ソ連との約束など無視して、千島列島など認めなければいいだろう」と言った。
英国は、日本による大量の捕虜虐待死を恨んでいた上に、日本が暴れたためにビルマやインドやアラブ諸国などに独立運動が広がったことも恨んでいたから、対日感情は極度に悪かった。
また、英国の知識人階級には社会主義国ソ連に幻想を抱く者たちが多数存在したために、ソ連に対して非常に好意的な空気がただよっていた（ソ連によるポーランドへの介入も、地球の裏側での朝鮮戦争にも見向きもしないで）。
そのため、英国は強硬に日本に領土を放棄させることを主張した。
そして、米国もしかたなくその主張に同意して「ソ連にではなく懲罰的に日本に領土を放棄させる」として領土問題を英国との間でまとめた。
英国やオランダは、日本に対する敵意をむき出しにして１９７０年代くらいまでを過ごしたが、１９８０年代になりいくぶん対日感情が和らぎ、１９８９年にはイギリスの外相が「法的には日本の主張を支持する（４島返還を認める）」というように立場を変えている。
１９６０、７０年代のソ連政府による数限りない横暴の実体がイギリス社会にも伝わり、また戦争世代が減って行った過程で、サ条約は「やりすぎ」という認識が生まれたためだろう。
もちろん、米国も「４島返還をすべきだ」とロシアに言っている。
フランスも「千島は日本に懲罰的に放棄させただけであり、ロシアに向かって割譲させた覚えはない」と言っている。
このように、今やサ条約の領土の規定については、ほぼ意味をなさなくなっている。
「サ条約を基本として交渉しよう」などということが意味をなさない時代になっているのだ。
日本側が２島返還でソ連との平和条約を認めず、平和外交を行い世界各国における極度に悪かった対日感情が沈静化するまで待ったかいがあった、ということになるだろう。

サ条約に関してもっと言えば、ロシアはサ条約にさえ違反している。
ロシアはたびたび日本に対し「日本はサ条約で千島列島を放棄しただろう」と言っているが、サ条約に基づく限り、ロシアはそういう主張は行えない。
なぜなら、サ条約第２５条には、「サ条約を批准していない国（ソ連）は、サ条約の条文を利用して、いかなる利益も日本から引き出してはならない旨」が規定されているからだ。
しかも、サ条約を基本とするのであれば、ソ連には「国際裁判を受ける義務」が発生する。
サ条約第２２条には、「サ条約批准国間でこの条約について問題が発生した時は、国際裁判で決着を付けなければいけない義務」が規定されているからだ。
ところが、ソ連は、サ条約の条文を利用する時だけは「サ条約が」と条約違反の主張を行い、サ条約の裁判を受ける義務については「領土問題は存在しないから、裁判には応じない」と一方的に門前払いを繰り返してきた。

国際裁判で決着をつける事は、サ条約に関係のない立場からも、物事を「法と正義」に則って平和的に解決するために必須の事だ。
ドイツは１９９０年代に、東西ドイツの代表とフランス・イギリス・アメリカ・ソ連を交えて話し合いを行い、その結果、各種の問題を解決した。
日本もその方式に倣い、与太者国家ロシアと１対１で話すのではなく、他国の冷静な意見を入れながら領土問題の解決を図るべきだ。
平和条約というのは領土を確定させるための作業を含むのであるから、平和条約を結んだ後に「平和条約的交渉を続ける」というのは自己撞着の主張であり、ロシアや他国に論理的に批判され悪用される可能性が高い下策でしかない。
実際、ロシアは「４島について話し合う」「２島で」「０島だ」と立場を次々に変えている。
そのように、全く信用のできない相手に対しては、「公証人」や「仲介人」を入れて交渉を円滑に確実に進めることが絶対に必要なことだ。
２島返還論の大失敗によりロシアに「ロ憲法により０島返還だ」と言い張られるまでになってしまったのであるから、「二人だけでインティメートな仲になり、感情的に良い奴だと思われて、こちらの意見も聞いてもらう」という戦略がまったく、全然、完全に、０％しか通用しないことが明白になった。
だから、日本政府は「大失敗は大失敗だった」と自らの過ちをしっかりと認めた上で、森や安倍政権の大間違いを認めて、方針を変更する必要がある。
つまり、「こちらの言いたいことを言わずに『悪徳ギャング』におもねり、その懐に入ってかわいがられて言うことを聞いてもらう」という２島返還論者たちの今までの戦略を放棄して、「こちらの主張をはっきりと言い、皆が見ているところで皆により公正に助言を受けながら問題を解決する」という方針に切り替えるべき時だ。
日本政府が、そういう努力を一つもせず、昔からの大失敗をした方式にこだわるのであれば、未来永劫「そういうやり方では領土問題は解決しない」のであり、自身の次なる大損と引き換えに「自信のメンツのみがかかった愚策」だけが続けられることになるだろう。

最後に余談だが、「歯舞・色丹だけは千島列島ではない」と言う主張は、どこから出て来るのだろうか。
以下の地図などを見れば、「それらは千島列島ではない」という主張には、何も地理的な根拠が見当たらないように思えるのだが…。

https://www.google.co.jp/maps/@44.0390612,145.6860395,730650m/data=!3m1!1e3?hl=ja