正しく知ろう北方領土コミュの「北方領土は我が国が主権を有する島々」が外交青書中に復活

コロナヴィールスのために日ソ両国とも感染者が増え、外交どころではなくなっていた。
世界中が鎖国状態となり、日ロ間の交渉も取り消されたりした。
そのため、このところ、あまり北方領土についての話題が報道されなくなっていた。

そのような中、先週１９日に外務省が配布した「外交青書」の中に「北方領土は我が国が主権を有する島々」という文言が復活した。
まことに良い事である。

北方領土についての事実をもう一度、確認しておこう。

（１）
重要なのは、日ソ間に「領土を割譲した」という文書が存在していないことだ。
ソ連には「北方領土を日本から割譲された」という国際法的に有効な文書が、ただの一つも存在していない。
領土の割譲は、領土を取られる国と新しく得る国の二国が署名した文書が作られて、初めて、国際法上正式なものとして認められる。
しかし、日ソ間には領土を割譲したことを表す両国の署名が入った文書が存在していない。
つまり、ソ連の主張は国際法上、何の意味も持たない。

（２）
一部のソ連の影響を受けた左翼が、よく、ポツダム宣言の一部を引用して暴論を展開し日本国民を先導しているが、ポツダム宣言で重要なのは「日本古来の領土は保全する」と確約した部分だ。
ポツダム宣言（それに先立つカイロ宣言）では、「台湾や満州などの日本が侵略によって得た土地は元の国民に返還させるが、米英中（後にソ連も加盟）は日本古来の領土を日本から取り上げる意思はない」ということを確約していた。
これは、ミズーリ号上で調印が行われた正式な国家間の確約である。
ソ連によりこの約束が守られていないのであるから、日本は自国の権利を大いに主張できる状態だ。

（３）
ヤルタ協定を引き合いに出す者たちもいる。
ヤルタ協定とは「米英ソ」の三国間で秘密裏に「ソ連が戦争に参加したら、日本の領土を取り上げてソ連にくれてやる」とした秘密約束のことだ。
しかし、上述したように、領土割譲の当時者２国間で領土について話し合い、２国が正式に納得して承認した文書が存在しない限り、国際法上は領土の割譲は認められない。
それは、当たり前のことだ。
なぜなら、例えば戦前に日本が米国を誘い、「米国が日本の満州領有を認めれば米国の北京領有を認める」などと秘密条約を結んだとしても、そういう日米間の秘密条約は当事者の中国が「承認した」というまで、国際法上は全く何の効果も持たないからだ。

（４）
国連憲章第１０７条を根拠に出す者たちもいる。
国連憲章第１０７条では、「戦争中と終戦後しばらくの期間に占領軍が行ったことに、日本やドイツはたてついてはいけない」ということを言っている。
では、進駐軍が「日本から領土を取り上げる」と決定したことはあっただろうか？
もちろん、そういう事実は無かったし、そもそも、軍隊に領土問題を確定させる外交的権限も存在しない。
領土の割譲というのは、国家同士が話し合うことであり、軍隊は口を出せない。
しかも、占領軍が「日本から北方領土を取り上げてソ連に割譲する」とした文書も存在しない。
よく、扇動家たちは、占領軍が発したSCAPIN677という命令を引用するが、これも、まったく意味をなさない。
扇動家たちの言によれば、同命令書に「日本の範囲から除かれる地域として…千島列島、歯舞群島、色丹島」という文言が現れるからとしている。
しかし、占領軍の説明では、以下のように「行政的な都合のためにそう分けただけであり、領土問題を確定させたものではない旨」が約束されている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/SCAPIN
>本指令は單なる聯合國側の行政的便宜より出てたるに過きす從來行はれ來りたることを本指令に依り確認せるものなり即ち其の他はSCAPの所管するところにあらす

実際、北方領土問題の話し合いは、その数年後に米英蘭仏等と日本の軍隊ではない政府関係者が集まり、正式な話し合いと取り決めを行っていた。
領土問題に軍隊は口を出せない上に、占領軍も「北方領土を日本からソ連に割譲した」などと言っていないのである。
扇動家たちは、文書の一部だけを切り出して都合よく扇動しているだけだ。

（５）扇動家たちは、日ソ共同宣言を引き合いに出したりもする。
しかし、日本はこの宣言と同時にグロムイコ―松本会談の内容をソ連の許可を得て公開した。
その文書中には「北方領土（４島）問題は継続して審議する旨」が書かれている。
その約束を破り、一方的に「多くとも２島返還だ！」と言い張っていたのは、ソ連の側だけである。
ソ連のこの無謀な約束破りに加担したのは、日本側では社会党員の半分（ソ連と同じ社会主義を目指す社会党といえども、さすがに残りの半分は反対した）とあろうことか自民党の一部だけだ。（自民党の多くと共産党でさえ、反対していたことだ。）
その辺の事情は、以下に書いたから、興味がある人は読んでほしい。

https://qvahgle-gquagle.blog.ss-blog.jp/2019-10-04

以上のように、ソ連やロシアの主張には、いずれについても全く根拠がない状態だ。
そして、ソ連やロシアは、ただの一つも「日ロ２国間で承認した正式な領土割譲の外交文書」「国際法上有効な文書」を提示できていない状態なのである。

それ故、数日前にロシア側が「北方領土における経済協力の法的権限の棚上げ」を言いだしたのだろう。
こちら側が千島列島２０島をすべて理不尽に奪われ、４島返還を言っただけでロシア側が叩いているような状態であったのだから、「話し合い」など進展するような状態ではなかった。
「コロナヴィールスの蔓延によりプーチンの強権体制に陰りが出たことが、柔軟化の原因ではないか？」などと言われているようであるが、私も、プーチン自身が強硬派の親分だと認識している。
他の多くの国々がコロナ禍の収束を見ている中で、ロシアは以下のように大きく感染者数が増えている最中であり、米国とブラジルに次ぐ世界第３位の感染者数になっている。

https://www.worldometers.info/coronavirus/country/russia/

コロナヴィールスが、「プーチンは日本に譲ってくれる人物」ではなく、「プーチンは強硬派のラスボス」ということを分からせてくれたのではないかと思っている。