正しく知ろう北方領土コミュの日ソ間の「領土問題についての審議継続」の話

北方領土問題についての私の「本拠地」は以下のブログであるから、ここにはあまり書かないようにしている。

　https://qvahgle-gquagle.blog.ss-blog.jp/

しかし、ここは少しだけ意見を書くのに便利な環境なので、短い文章を書いてみた（このトピは、今後、そのような使い方をするかもしれない）。

朝日新聞の中には、従来から存在する４島返還派とともに、２島返還派も現在では新しく発生したようだ。
２３日の朝日に、以下のような記事が載っていた。

https://digital.asahi.com/articles/ASN1Q7501N17UTFK00R.html
>　政府全権として交渉した河野一郎農相は、56年10月17日のフルシチョフ第1書記との2回目の会談で、日本案を示した。同じく政府全権だった松本俊一氏は回顧録でこの案について、4島返還を求める立場から、歯舞、色丹2島の引き渡しに加え、「国交回復後も領土問題の処理を含む平和条約締結交渉を継続する」と記したと説明している。
　だが、今回明らかになった「日ソ交渉会談録」によると、この案には「領土問題の処理を含む」の文言がなかった。河野氏は自民党の強硬論に押され、16日のフルシチョフ氏との初会談で条件をつけずに2島を引き渡すよう求めて反発されたため、2回目の会談で残り2島の交渉継続をあいまいにする譲歩案を示したとみられる。

上と似たような事情は、日本側でも何度も確認されてきたことであり、今さらそのことを蒸し返しても意味がないのだ。
まず、問題の10月17日より約１ヵ月前の9月上旬の自民党の幹部を集めた会議において、鳩山は「アデナウアー方式のように領土問題は棚上げにして、まずは国交回復を行いたい」という自身の方針を堂々と示していたのであるから、なんら新しい問題ではない。
このような案に対して当時の自民党員たちが納得するわけはないのであり、「領土交渉継続の確約」を彼らは激怒して鳩山や河野に求めた。
鳩山は外交担当であった松本俊一とソ連外相グロムイコの間で書簡をやり取りさせ、その書簡により「領土問題は継続審議」とすることが、

　正式な外交文書の形で記録が残っている

のであるから、この文書を一個人の思惑などによりひっくり返すことはできない。
日本側は、そのように各種の準備を行った上で最終的な10月の会談に臨んだのであるから、その内容は一人の関係者がもしも個人的な思惑を口にしていたとしても、無効になるものではないのである。
両国間で正式に外交ルートを通じてやり取りが行われた下で、「ソ連側も『領土問題は継続審議』と認めた」という認識のもとに日本側国会において承認も行われたのであるから、そういう議決が１人の「詐欺師（もしも存在したと仮定した場合でも）」の言葉によって揺らぐことはないのだ。

「領土問題は継続審議」という重要な文言は、日ソ共同宣言に入っていることが望ましいが、他に公式な文書の形で確認を取っているのであるから、そこはソ連側に譲っても問題がないというのが当時の国会や外務省関係者の判断だったのである。
余談であるが、この重要な文言が調印の２日ほど前になって急遽、日ソ共同宣言から削られる一因となったのは、外交の素人であった河野たちが前々日にホテルで打ち上げをして大喜びをしたために、ホテルを盗聴をしていたソ連側が「日本側が期待していた以上のラインで『大安売り』をしてしまった」と認識して「削っても問題ない」と判断したからだという説も存在する。

なぜ、そこまで、まったく理屈の立たない「２島返還」にこだわる勢力が存在するのだろうか？

そう言えば、昨年末に外務省が公開した文書の中に「中曽根元首相が２島返還をソ連と交渉した」というような記事もしきりと各紙に掲載されていた。
しかし、中曽根は後に総理にもなった河野派の筆頭であったのだから、北方領土に対する氏の主張にはかなりのバイアスがかかっていたことも、忘れてはならないだろう。
なにか、都合のよいところだけを切り出して２島返還論に持っていこうとする勢力が存在するようだ。