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三十分作成小説(ベジタブル編)コミュののうちょ

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“伝えたいことがある”と

メールで呼ばれ

僕は屋上に向かった。

頑丈に閉められたドアの横にある

小さな窓から屋上に出ると

薄曇りの空の下

有菜はフェンスに寄りかかり

下の世界を眺めながら

僕が来るのを待っていた。


「話って?」

僕は有菜に近づくなり

単刀直入に本題を切り出した。

平穏を装い

サラリとした口調で尋ねたが、

内心、

かつてないほど胸の鼓動は高まっていた。

このシチュエーション、

きっと

告白されるという僕の予想は

勘違いではないと思う。


僕の問いの後、

有菜はかなり間を置いてから、

こちらを向いた。

猫を連想させる

人懐こくて大きな瞳が

真っ直ぐ僕を見てきた。


有菜の口元は薄く笑っており

緊張を必死に隠してる僕とは違い、

本当にリラックスしてるように見えた。


「君に告白したいことが2つあるの」

「2つ?」

緊張のせいだろうか。

反応するポイントがややズレた。

予想していた「告白」と

予想外だった「2つ」という単語を頭が飲み込む前に

有菜は話を進めた。

「まず1つ目。私は君が好き」

有菜はさらりと自分の気持ちを僕に告白してきた。

イメージしてたのよりも

あまりにも軽すぎて、

頭が状況を理解出来ず、

反応出来なかった。


「…2つ目は?」

頭の中を整理するために

僕は聞けるとこから尋ねた。

そもそも「君が好き」に対して

何て答えていいのかわからないし、

有菜自身

僕に答えを求めてない様子だった。


有菜は

待ってましたと言わんばかりに

無邪気に微笑んだ。

そして

再びフェンスの向こう側の世界に視線を向けた。

「アレを見てくれる?」

有菜の見つめる先に僕も視点を合わせると

そこにはジュースを飲みながら

会話をしている男子生徒達の姿があった。


だから何だろうと思って見ていると、

突然

男子生徒達は手をとりあい

二人でその場をクルクルと回り始めた。

「かーごめかーごめ♪かーごのなーかのとーりは♪」

男子生徒達と屋上では

かなりの距離があるのに

はっきり聞き取れるくらい大きな声で

二人は歌って回った。

かごの中の鳥がいない、

かごめかごめ。


「どう思う?」

有菜はフェンスから見下ろしたまま

僕に尋ねてきた。

「どうって…」

突然、

どうしたんだろうね?

というのが素直な感想。

ただ先程からの動揺の連続のせいで、

言葉が上手く出てこない。


有菜は自分のタイミングで

視線を再び僕に向けた。

表情は落ち着いたままで、

目の前の出来事にも、

自分のした告白にも、

何一つ動揺してないことが伺えた。

「アレね…私がやったんだ」

「え?」

どういうこと?

僕の口が問う前に

有菜は答えを口にした。

「超能力?洗脳?よくわかんないけど、私、他人の脳みそをイジれるようになったんだ」

は?

何を言ってるんだろう?

有菜からの2つ目の告白を聞いて

僕は呆気にとられポカーンとしていると

有菜は僕の方をじっと見てきた。

その目には妙な力強さがあり、

見ていると引き込まれるような

不思議な感覚に襲われた。


「僕も、有菜が好き。付き合ってください」

…え?

今、

自分の意思とは関係なく

勝手に言葉が口から出てきた。


有菜はその大きな瞳を細めて

楽しそうに笑った。

「同じ気持ちで嬉しいな。…うん。今日から宜しくね」

この状況で

戸惑わない人はまずいないだろう。

僕は自分で声が出せるか確かめた後、

少し震えながら

有菜に尋ねた。

「今…いじったの?」

「うん。少しね」

「少しって…。完全に言わせたじゃないか」

「うーん。言わせたってのは、ちょっと違うかな。さっきのは君が本音を言うように、脳みそをいじっただけだから。まぁ、言わせたと言えばそうだけど」

「え?そうなの?」

そのことを聞かされた瞬間、

僕の全身はアツくなった。

確かに、

僕は前から有菜のことが好きだった。

剥き出しの本音を他人の手でさらけ出されるのは

何とも言えない恥ずかしさがあった。


「…どうせなら、自分の口で伝えたかった」

変な告白だったな、と

改めて思った。

対して有菜の方は

過程にはまるで興味がないらしく、

上機嫌なのが見てわかるくらいニコニコと笑っていた。

「もし、僕が有菜のこと嫌いだったらどうしてたの?」

「好きになるように脳みそいじくってた」

当然じゃん、と言いたげな有菜。

やっぱりか、と言いたい僕。

有菜のことが好きだったから良かったものの

これでもし嫌いだったらと思うと…。


少し想像してから

考えるのをやめた。


「…これから先、僕の頭の中、いじらないでね」

「なるべくそうする。私だって、操り人形の君よりも、自分の意思で生きる君の方が好きだしね」

「なるべくって…」

僕は苦笑いを浮かべた。

好きな人と付き合うことになったのに

気分はわかりやすいほど複雑だった。


遠くから聞こえてくる

ループ中のかごめかごめ。

あれは戻さなくていいのだろうかと、

ぼんやりそんなことを考えた。

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