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三十分作成小説(ベジタブル編)コミュのニートの公式(その18)

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とりあえず、

全身が濡れたままでは風邪をひくので、

私は泡だらけの体を、

最近老婆からもらった

年季の入ったタオルで拭いた。


服を着て、

水浸しになった洗面台を掃除した後でも、

先程の出来事を理解することができなかった。

一体、さっきのは、

何だったのだろうか?

私は疑問を抱いたままトイレを出て、

休憩室に戻った。


休憩室に戻ると、

私がベッド代わりにしているソファーに、

老婆と

先程トイレに入ってきた男が座っていた。

遠くからでもわかるくらい、

男の顔はまだ赤く、

私が歩いてきたのに気づくと、

恥ずかしそうに下を向いた。


私がお風呂道具を片付けようとすると、

老婆に呼び止められた。

いつも以上に声を張っており、

迫力は通常の三倍増しだった。

「ほら。人を紹介するから、さっさとこっち来な!!」

たまにある、

有無を言わせない命令口調。

私は仕方なく老婆の言うことに従い、

二人の元に向かった。


私が立ち止まると、

老婆は座ったまま、

男の方に一瞬視線を向けた。

「この子は私の孫だよ。これからさらに忙しくなるから、ちょっと助っ人に来てもらったんよ。仲良くしてな」

「先程は、失礼しました!!」

男は老婆からの紹介直後、

真っすぐと勢いよく立ち上がり、

声を張り上げたと思ったら、

深々と頭を下げてきた。

私は少々対応に困りながら、

その様子を眺めた。

私自身としては、

さっきの出来事を気にしてないというか、

このときになってもまだ、

入浴タイムを見られた事実を

全く把握できてなかったので、

謝られても困るだけだった。


老婆は、

そんな私達のやりとりを一切気にすることなく、

事務的に紹介を続けた。


彼は実家から地元の大学に通う、

学生さんらしい。

歳は私と同い年。

見た目は年齢相応で、

カッコイイというよりは、

可愛らしい顔立ちをしていた。

私の裸を見た後の反応を見る限り、

かなりのウブだ。

童貞君の可能性も高い。

性格は悪くなさそうだが、

何だか不器用そうで、

話していて疲れそうなイメージがある。


…と、まぁ、

老婆からの情報と、

見た目からくるイメージを合わせると、

男の印象はだいたいこんな感じだ。

可もなく、不可もなく。

最近は客が増えて死ぬほど忙しいので、

単純に、手伝ってもらえるのは助かる。


私もそれなりに自己紹介をした。

職業を伝えるのは少々困ったが、

とりあえず「旅人です」と答えた。

…何じゃそら。

自分でも何を言っているのか、

わからないような内容だったが、

男は終始真っ赤になって

声が聞こえてない様子だったので、

まぁいいのかな、と思い、

いい加減な自己紹介を済ませた。


男は老婆の孫とは思えないほど、

実によく働いた。

実は毎年のように働きに来るベテランで、

仕事は早くて

そして丁寧だった。

即戦力になれば…とか思っていたが、

そんな考えはあまりにも失礼な話だった。

彼は先輩であり、

スーパーエースだ。

むしろ、

私が彼の足を

引っ張らないようにしなければならない。


(つづく)

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