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映画を語るコミュの「キャスト・アウェイ」

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80年代を代表する「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(以下BTTF)3部作を作り上げたR・ゼメキスは、95年に「フォレストガンプ」でアカデミー賞に輝き名実共に大監督への仲間入りとなった。「BTTF」や「フォレストガンプ」で理想的なアメリカ現代史を作り上げ、ある程度の結果を得て満足をしたのか、作品的にも特に政治的な傾向を明確に打ち出した作品は作ってはいない。コンスタントに作品を発表して来たゼメキスだが、自らの監督作は寡作になり、得意としていたアクション・コメディよりも、人間を描いたドラマを製作するように変わっていった。2000年に製作された「キャスト・アウェイ」もその1本である。

チャック・ノーランド(トム・ハンクス)は、メンフィスに本社を置くFedexのシステム・エンジニア、時間に追われる毎日を過ごしていた。彼は、勢いよく上昇しつつある仕事人生で、長距離の出張に出ることもしばしば、もちろん恋人のケリー(ヘレン・ハント)と過ごす時間もほとんどない。 しかし、そんな順調な生活は飛行機事故により遠く離れた島に孤立したことで、突然終止符を打たれる。彼はまったく孤立無援の環境に投げ出されたのだ。日常の便宜から切り離され、生きるために必要な基本的なもの、すなわち、水と食料、寝る場所の確保の問題に直面する。ビジネス問題を解決するプロだった彼は、物理的に生きていく方法を考え出す。だが、その次に待ち構えているのは? 孤独という精神的な試練に出会った彼は、ついに真実の旅を開始する。

航空事故のシーンの迫力は凄まじい迫力だ、それまでのゼメキス映画のどのSFXシーンよりも強烈にリアルで恐ろしい。「コンタクト」の爆発シーンとこのシーンは、嫌でもこの後に起こる同時多発テロを連想させる、ゼメキスは予感でもしていたのか?
その後に続く無人島でのサバイバルシーンも実に見事である。野外活動に於いて裸足での行動は即怪我や事故に繋がる、劇中では血を流す程度で収まるが、破傷風にかかれば待ち受けるのは「死」だ。その足を草で覆ってクッション代わりにしているが、無意識とはいえ、あの行動も理にかなっている、一部の草には殺菌・解毒作用があるのだ。また、火をおこす際に最も重要になるのが酸素である。かまどの火をおこしてすぐにバタバタとあおいでいる人がいるが、あれはかえって逆効果である、火に顔を近づけて細い息で吹き続けると、炎は勢い良く燃え上がる。映画では木の摩擦を利用しているが、あれだけ太陽が照りつける場所で簡単なレンズがあれば(眼鏡可)もっと簡単に炎が得られる、とだけは補足しておこう。さらに、水分が取りにくい場所では洞窟の中のような日陰が一番過ごし易い、無駄な水分を消費しなくて済むし、紫外線による被害を食い止める事が出来るからだ。幸いにもあの島には無数の植物が自生しているので、水にはそれほど困らない場所なのであろう。また、何年も生活して来たチャックが生魚を食べるシーンがある、なぜ炎で焼かないのかと不思議に思うであろうが、実は「生」だからこそ重要なのだ。大型の獣がいないあの島で、動物性タンパク質を少しでも多く摂取するのはあの方法なのである。
タンパク質の不足が人間にどんな影響をもたらすのかは、現代人には良く理解出来る事であろう。

しかし、4年後のテロップが出て以降、この映画は急速にトーンダウンしていく。これは「25kgの減量をしたトム・ハンクス」を見せる為にわざわざ用意した設定だ、いくら器用に魚を穫っても、その魚を保存食として利用しないのはなぜか、あの脱出時の筏に食料は殆どなかった、500マイルも漂流したにも関わらずである。力尽きようとしたその時に、貨物船に発見されるのもご都合主義丸出しである、確かに物語はどこかで落ちを付けなければならないが、前半のリアルな描写の連続に比べ、この展開には正直言ってあきれて来た。賛否両論を呼んだウィルソンとの別離のシーンも、それ以前の自殺のエピソードを省いたおかげで、チャックとのつながりが希薄になってしまい、唐突なシーンとなっている、ちなみにオレは笑ってしまった。

島を脱出して以降の展開が、冗長だったという意見を聞くが、オレはそうは思わない。
そもそも「キャスト・ウェイ」とは、「とり残された」や「置き去りにされた」という意味である。これは主人公チャックが無人島に取り残され、脱出後は人生に取り残された事を意味している。生まれ変わった人間として文明社会に戻るチャックだったが、彼を死んだと思い込んでいたケリーは、別の男と一緒になっていた。愛し合いながらも別れなければならない2人、そこで彼は、これまで所有していたもの、大切だと思っていたものをすべて失ったことを知るのであった。この一連のシーンは物語を語る上では決して外せない、そういう意味では必要不可欠な展開であった。さらに最後に示される交差点での希望溢れる笑顔、チャックの新しい出会いを予感させる清々しいラストであった。

素晴らしいシーンの後に同じ監督が作ったとは思えないほどの酷い展開、しかし最後はきちんと物語を締めくくる、なぜこの作品はこれほどまでにアンバランスなのか? それはゼメキスの映画に対するある姿勢から理解する事が出来る。

この映画はFedexがスポンサーとなり、製作されている。「時は金なり、時間を一秒たりとも無駄にするな!」この企業のポリシーを忠実に守り続けて来たチャックは、自らの仕事の為に人生が犠牲になる。今まで築き上げて来た人生の全てを一瞬の事故で失うのだ。それでは、この映画はFedexにとって何の利益があるのだろうか? それは初めから終わりまでほとんどの時間映し出される会社のロゴである、これが企業にとっては絶大な広告効果となるのだ。実はこれは「フォレストガンプ」以降のゼメキス監督作に共通する出来事である。『ホワット・ライズ・ビニース』の予告編と宣伝文句では、ハリソン・フォードが悪人であることが明確にわかるようになっていた。本作の予告編も、それを見るだけでこの映画全体のストーリーが完全にわかるような内容であった。ゼメキスの発言を引用すると、「映画のマーケティングの研究から、人々は映画を見に行くときに、その中で起こることすべてのことを事前に知っておきたいと思っていることがわかっています。しかし私は、映画愛好者、映画の研究者、映画学者、そして監督として、そうは考えません。私が連想するのはマクドナルドです。マクドナルドが大きな成功を収めている理由は、意外性がまったくないことです。どのような味がするのかははっきりとわかっています。全員がメニューを知っているのです。」

つまり、マクドナルドは本当に美味しい物ではないけれども、消費者が求めているのはその程度の味なのだと、示唆している。ゼメキスの映画に対する姿勢も同じなのだ。
作品の内容よりもスターの起用と意外性のある話題で利益の追求を目指したゼメキス、これこそがこの作品を中途半端にした最大の原因である。

コメント(4)

私もこの映画の中盤には引き込まれました、
見事です、専門家に聞いて、生き残るにはどうしたらいいか?
というのを追求したらしいですね、音楽もならないし、
劇場に観に行って、トムハンクスの一人芝居にドキドキしていたもんです、んで、個人的にはトムハンクスが痩せて出てくるところまでがピークだったかな、カージー兄さんが必要不可欠と書いてる一連の展開は予想出来たんで、やっぱり長く感じましたね。

んで、さすがボーイスカウト!と唸らされるレビューでございました、見事です。
なるほど、救出されてからの、みょーなくどさは、フェデックスへのヨイショ=宣伝だったわけですね。
私もウィルソンとの別れは、ただ笑いました。
ところでアラン・シルベストリの音楽は、最後に波音と交互に流れるやつだけってホント?
じゃあ冒頭のロシアの集荷作業の時のは?
既成曲?
> カトキチさん
「生魚」の件はボーイスカウトではなく、さいとうたかおの漫画「サバイバル」からの知識です。この漫画はオレ達の世代ではバイブルとなっております。全巻を読破すれば、生き残れる知恵が確実についてきますよ。あとは石川球太先生の「冒険手帳」がお薦めです!

トム・ハンクスはアカデミー賞狙いが見え見えでしたね、ただいくらリアルな演技をしても、物語が伴わなければお話しになりません、製作者の一人として名を連ねているのなら、なぜ脚本をもっと詰めなかったのでしょうか? 金儲けしか頭に無いゼメキスと、賞狙いのハンクス、そんな2人の思惑がこの作品を歪な物にしたのでしょう。
>エメット・T先生
この映画から受け取れる確実なメッセージは「Fedexでは働くな!」といったモノです。そんなイメージダウンしかねない作品に、会社名が全編に渡り出続けるから金を出すんですから凄いですよね、さすがシビアな外資系会社です。
ウィルソンを親友とするのなら、代わりのボールを買って助手席に置くなんて描写はいらないと思うのですが、どうでしょうか。

冒頭のカメラワークは「激突」を彷彿させました、それに続く厳かなロシアの描写はゼメキスらしくないですよね? 誰か違う人に任せているのでしょうか?

サントラは確かに最後の奴しか入っていないですね、そうすると冒頭の曲は既成曲になるのでしょうか?

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