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映画を語るコミュの「マイアミ・バイス」〜その弐〜

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映画版「マイアミ・バイス」はタイトルも表示されないまま、物語が唐突に始まる。

フロリダの楽園マイアミ。太陽の光がふりそそぐリゾート地だが、米国で最も南米に近いことから、犯罪組織の密輸の中継地でもある危険地帯だ。マイアミ警察特捜課(マイアミ・バイス)の刑事コンビ、クロケット(コリン・ファレル)とダブス(ジェイミー・フォックス)は、性格は正反対だが仕事では抜群のチームワークを見せていた。ある日、FBIの潜入捜査官2人が囮捜査の現場で殺される。FBIはクロケットとダブスに、生還の可能性がゼロに近い危険な捜査を要請する。

売春の捜査に取り組むバイスのチームプレイから物語は始まるが、ろくな説明もないので捜査官と犯罪者の区別がつきにくく、分かり辛い、ただ、手持ちカメラの映像と細かいカットの連続なのでテンポが良く、物語に一気に引き込まれる。情報屋が目の前で事故死した事からクロケットとダブスは南米に潜入捜査官として潜り込み、犯罪組織を追いつめていく。冒頭は緊迫感がある始まり方であるが、その後はクロケットと犯罪組織の一員であるイザベラ(コン・リー)との濃密なラブシーンが延々と続き、ハードでクールなアクション映画を期待していた観客には不満が残る展開が続く。そもそもマイアミやキューバの楽園のような青空の下でアクションを繰り広げていても、どこか牧歌的で緊張感が足りなくなるのは当然の事であろう。だからこの映画でのアクションシーンは全て夜の暗闇の中で展開されている(大予算を掛けてモーターボートのチェイスシーンを撮影したらしいが、カットされたのは全体の雰囲気にそぐわないからであろう)。

クロケットとイザベラのラブシーンに飽きて来たところで、ダブスの彼女が犯罪組織の一員であるネオナチ達に拉致されるのだが、この場面から映画の雰囲気が変わってくる。奪還に向かうバイス達、アサルトライフルとボディーアーマーで武装して、ネオナチが立て籠るトレーラーハウスを取り囲む、超小型カメラでトレーラーハウスの内部を覗き見て内部の人数を探り当てる。そしてピザの宅配人を装いながら、内部に突入をして人質確保に乗り出す、手持ちカメラと超小型カメラの映像はさながらドキュメンタリー映画を見ているようだ、人質に付けられた首輪爆弾はそのデザインと起爆方法から、2003年に起こったブライアン・ウェルズ爆死事件の再現である事は間違いない。フィクションでありながら現実に起こった事件と捜査官に密着をしたカメラの目線、すなわち「COPS」そのものの再現をして、限りなくリアルな世界を構築している。この場面で特に素晴らしいのがエリザベス・ロドリゲスが扮する女刑事であろう。クールで口数も少なく、淡々と仕事をこなし、射撃の腕前も最高である。人質を盾にする犯人に対し、警告を発しながらも容赦なく引き金を引く姿は主人公の2人以上の存在感であった。極めて映画的なシーンではあるが、人質から片目だけでもはみ出していたらそれを狙い撃ちするように訓練されているのがアメリカの警察なのだ。

このドキュメンタリータッチのシーンの後は、ついに犯罪組織の幹部との大銃撃戦へと繋がるのであるが、緊迫感あるシーンの積み重ねは、「ヒート」に勝るとも劣らない迫力であった。映画の冒頭にも登場したが、装甲車やヘリを目標にするほどの威力を持つバレットの50口径アンチ・マテリアル・ライフル(写真中央)、超高級品であるジグ・ザウェルSG552アサルト・ライフル、果てはH&K-69グレネードランチャーまで飛び出して夜の波止場を戦場へと変える。地面に跳ね返る銃弾の音、コンテナや船体に銃弾が当たる反響音、人体を貫く銃弾、めまぐるしい編集ときちんと設計された音響効果でその場に居合わせたかのような錯覚に陥る、何が起こっているのかわからないイザベラと同じ境遇であろう。そして最後は車の隙間からクロケットが1番の強敵を仕留めるのであるが、まずは両足を狙い撃ちし、倒れたところで眉間に1発を叩きこむ、これも映画的な場面なのだが、マニュアル通りの対処方法である。

犯罪の手口や潜入捜査官の捜査方法をリアルに描き、TVシリーズでは到底不可能な濃厚なラブシーンと、TVシリーズを踏まえたキャラクター設定を作り上げ、マイケル・マンは現代的で決定版ともいえる「マイアミ・バイス」のエピソードに仕上げた。そこでは昔のテーマソングや抜けるような青空、TVシリーズの俳優達によるカメオ出演は必要なかったのである、現実の犯罪が気軽にテレビで見られる時代に、彼はフィクションの形で出来うる限りの「リアリティ」を追求してみせたのだ。

「ヒート」の中でのヴァル・キルマーの弾倉交換場面は、現実の軍隊の訓練で模範とされるほどの早さと正確さであったそうだ。今回のバイス達も銃撃戦に挑む前には念入りに銃器の手入れをしていた、これこそがマイケル・マンのこだわりであり、魅力でもある。現実に起こる事件が虚構の世界を上回る時代だからこそ、作家は更なるディテールで物語を作り上げなくてはならない、そうでなければ観客は満足をしないからだ。映画版「マイアミ・バイス」は安易なTVシリーズの映画化ではなく、現代を反映した物語であった。その臭覚がある以上、マイケル・マンが作る犯罪映画の魅力が衰える事はないのである。

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