英国の動物病院から情報発信コミュのナイジェリア、HOBOという名の犬

朝晩がすっかり涼しくなった8月の終わり。

ある午後に、一人の男性が動物病院にやってきた。

身体の大きな、若い男性。

窓口で、彼の話を聞いた。

　ナイジェリアで、働いているんですが　・・・

　そこにいる仔犬のことで、相談したいのですが　・・・

真っ直ぐな、とても真剣な目をした男性は続ける。

　ベルジアンシェパードの仔犬だと思います

　仔犬の歯が残っているから、多分、まだ5～6ヶ月だろうと

ベルジアンシェパード。

ジャーマンシェパード（アルセイシアン）に似ているが、細長い顔が特徴。

　皮膚の状態が悪くて、治療してもらいたいと思うんだけど　・・・

　ナイジェリアでは、なかなか獣医師が見つからなくて

　今週の日曜に、ナイジェリアに戻るんだけど、薬を貰えないかと　・・・

彼は、他に10名ほどの男性と共にナイジェリアで働いていると言う。

職場に現れた一頭の仔犬を、他の男性たちと皆で面倒をみているのだと。

犬の名前は　・・・　Hobo（ホボー）

その名前を口にする時、彼は嬉しそうににっこり、笑った。

私は、その旨を獣医師に伝えた。

獣医師のアイデアで　・・・

皮膚の様子をデジカメで撮り、それをEメールで送ってもらうことにした。

男性は、とても喜んで

　今からすぐに、ナイジェリアの同僚と話をして、写真を送ってもらいます!

日差しの中に、走るようにして出て行った。

そして、その翌々日。

男性が、ipadを持って病院にやって来た。

早速、獣医師に写真を見てもらい、適切な薬（予防薬）を処方。

海外に薬品を持ち出し、ナイジェリアに持ち込むということだから　・・・

様々な注意をふまえて、その仔犬1犬分だけの薬を処方した。

　明後日、ナイジェリアに着いたら、早速、これを試します!

　本当に、本当に、ありがとうございます!

　同僚と話してるんです

　できたら、なんとかホボーを英国に連れ帰りたいって

　色々大変だとは思うけど、なんとかできるようにやってみるつもりです

筋肉ばかりの、大きな身体を翻（ひるがえ）し、玄関のドアを開ける。

箱に入った薬を高く掲げると　・・・

　本当に、ありがとう!

と、眩しい笑顔で彼は言った。

ナイジェリアという、社会的にとても不安定で危険な国の中で　・・・

力こぶの大きな男性たちが、1頭の犬の為に、できることをと願っている。

なんとか、救いたいと、願っている。

微笑ましく、彼の背中を見送りながらも　・・・

そういう国で生きる犬たちのことを、案じずには、いられない。

見たこともない犬、ホボー。

そして、人知れず生まれ、生き、死んで行く、命を。

感じずにはいられない。

小さな窓から、見上げる空には、引き千切ったような雲が浮んでいた。

コメント(2)

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[2] mixiユーザー 09月09日 03:34

いつも拝読させていただいいます。

私の個人的な感想ですが、Hoboは、自分の身を案じ愛し、名前をくれる信じられる人がいて
幸せなんだなと感じました。

経済的に豊かな国が必ずしも犬にとって幸せとは限らないし、
むしろ、山中に放置されたり殺処分という残酷で卑劣な扱いをされる犬たちの昨今を考えると、

そう思えてなりませんでした。

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