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Phantasy Star Storiesコミュの終章 Der Epilog

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アルゴルに栄光を

女神と導き手に人としての幸福を
叶えられなかった思いを遂げる血の通う肉体を

悲しみの戦士にしばしの休息を
その後に宿命の天使との恵まれた愛を

アルゴルを愛せし者
アルゴルの栄光を信じた神官に安らぎを
神官の愛せし少女に再び天使の翼を
その後に二人に永遠の愛を

神官の末裔
アルゴルの防衛者
アルゴルを旅立つ「学者」「魔導師」に導き手の祝福を

 

 

悲しみは、いずれ終わりを告げる。

それは、先なる千年紀・・・

 

・・・

コメント(5)

旧バハル要塞地下 大深度実験施設・・・

 

 広大な空間に、三つの巨大な影がたたずんでいる。

 そして、黄色い衣装の機械の少女、半機械体の少年、研究者ふうの白衣の一団、帯剣した青年達。

 白衣の一団の胸には、「MEISTERS」と刻まれた金属のプレートが。

 青年達の胸には、「ZERKDEGION」と刻まれた三角形の金属のプレートが。

 皆、それぞれの志を継ぐ者たちである。

 

 闇の中から、「神官の法衣」をまとったレイバードが姿を現した。

 

「神官レイバード・・・。約束通り、あなたの願いを、かなえます。」

 影の一つが、少年とも女性ともつかぬ声を発した。

「私は・・・封印を解放できなかった・・・約束は、果たせなかった・・・。」

「あなたの手によるものであるかに関わらず、私達は封印から解放されました。約束は果たされたのです。」

 

 智のア・ザートは、四枚の翼を持つ、少年とも女性ともつかぬ、不思議な姿の天使へと、その形を変えた。

「「癒しの天使」か・・・」

 半機械体の少年はつぶやいた。

「この姿は、封印される遙か以前以来です・・・」

 ア・ザートは、少年とも女性ともつかぬ声で、そう答えた。

 

 心のゼ・デースは、六枚の翼を持つ少年の天使に。

 技のレ・デュースは、二枚の金属の翼を持つ、長き手の機械の天使に。

「門の内なる者」達は、それぞれの本来の姿となった。

 

 智のア・ザート、心のゼ・デース、技のレ・デュースが向き合って正三角形の配置に立った。

 

 その中心に、金色の光輪に縁取られた、漆黒の空間が姿を現した。

 漆黒の闇の中から、水色の髪の少女の姿が、ゆっくりと現れた。

 少女の額には、サークレットがはまっている。

 少女の目は、閉じている。

 

 レ・デュースが差し出す長き手の上で、少女は空中に静止した。

 

(これより、「翼の復活」を始めます。ゼ・デース、レ・デュース、協力をお願いします。)

(「翼の復活」は、汝ア・ザート単体で可能なはず。何故か。)

(すべての過程を、非接触で行います・・・)

(彼の目の前で、これ以上少女に触れるようなことは、したくありません・・・)

(ホログラム・スクリーンを用いてはどうか。このほうが確実に「翼の復活」を遂行できるはず。)

(そんな卑怯なまねは、したくありません・・・)

(そうだな。だから我々は、かつて「大いなる光」に敗れたのだ。)

(僕も、お前と同じ気持ちだ、ア・ザート・・・)

(ありがとう・・・ゼ・デース・・・。)

(三者なら、そう困難なことではない。我レ・デュースも、異存はない。)

 

 ア・ザート、ゼ・デースの手のひらが、少女の上にかざされた。

 レ・デュースの両腕に、ほのかな光の明滅による不思議な幾何学紋様が浮かび上がった。

 居合わせた者達は、不思議な力場の発生を感じていた。

 レイバードは、少女の姿を見上げている。

「願って下さい・・・。貴方の願いを。この少女への想いを・・・」

 レイバードは目を閉じた。その顔は、ある種の苦悶の表情にも似た、強い願いの表情になった。

 

・・・
 

(まず、対象の復活を行います。ゼ・デース、レ・デュース、サポートを。)

(サポート開始。空間ゆらぎ干渉を遮断)

(「光輝の腕」始動)

 

(我智のア・ザートと、)

(心のゼ・デース、)

(技のレ・デュース、)

(三者の名において宣告する。)

(我ら全ての智と、)

(全ての心と、)

(全ての技の力をもって、)

(そして、この少女を愛する者の強き願い、切なる願いをもって)

(冷酷なる光の呪縛を打ち破り、今ここに、この少女の命を呼び戻さん!)

(呼び戻さん!)

(呼び戻さん!)

(アブソリュート・リ・サレクト!)

 

(対象の心拍を確認)

(意識、基底状態)

(対象の探査開始。非接触による全方式探査を実施)

(三次元全深度スキャン。座標メッシュ0.1ナノメーター、128倍オーバーサンプリング)

(探査完了。経時劣化、認められず。組織損傷0.0000000000、観測限界以下。汚染残存物0.0000000000、同じく観測限界以下)

(頭部金属円環にエネルギー反応。波形パターン、レイバード)

(素晴らしい。組織の修復は完璧です。)

(パルマの大気による汚染でも通常0.000001程度が観測される。人間の仕業とは思えぬ。)

(愛していたのだ。とても。)

(経時劣化もありません。彼の力が、少女を守っていたのですね・・・。)

 

(子宮内に卵を確認。スペクトル分析開始)

(!)

(・・・スペクトル分析を中止、光学解像度を表層輪郭把握程度に)

 

(彼も、ついにその判断だけは下せなかったようですね・・・。人間として、そのような判断が許されるのか、ついに決められなかった・・・。)

(恐らく彼も確かめなかったでしょう。私も、確かめるつもりはありません・・・これが既に人間の命であるのか、そうでないのか・・・。彼のかわりに、私が、行います・・・。)

 

(デスト・ラクト!)

 

(卵の完全破壊を確認)

(残留物完全除去。子宮内部への影響は認められず)

 

(・・・他の部位に関しては既に組織再構成による汚染除去も済んでいたようですね。では、次の段階へ移行します。)

 

(思考領域と事象記憶領域および感覚体、それぞれの連絡を遮断)

(思考領域に疑似連環経路(ダミーループ)を接続、モニター開始)

(思考領域、基底状態を維持。問題なし)

(思考領域に模擬経路を接続。想起経路、探索開始)

(想起経路系図化。事象記憶、アドレッシング開始)

(事象記憶のアドレッシング完了。これより精神汚染修復計画の構築を開始)

 

(当該記憶の全消去は、確実に記憶想起経路の著しい矛盾を生じると推測)

(残念ながらやはり時間が経ちすぎていますね・・・。仕方ありません・・・。)

 

(計画方針確立。記憶強度を最小限まで微弱化、負帰還経路の付加により記憶強化を阻止)

(精神汚染、修復開始)

(当該時間の全記憶の記憶強度を最小限まで微弱化、各想起経路に負帰還経路を形成)

(記憶想起経路の検査。想起経路の矛盾発生なし)

(精神汚染修復完了。これより次の段階へ)

 

(感覚記憶領域に模擬感覚経路を接続。事象記憶の系図化情報を参照し汚染部位を特定)

(感覚記憶、アドレッシング開始)

(感覚記憶のアドレッシング完了。対象の三次元身体モデルに汚染分布図を展開。各軸座標メッシュ1ミリメーター)

 

(これはひどい・・・)

(汚染部位の大部分が、汚染深度レッドまで到達しているなんて・・・)

(よほど、つらかったのでしょうね・・・。つらくて、悲しくて・・・)

(助けたい・・・私の全力をもって・・・たとえこの後、あるいは永遠に力が失われることになろうとも・・・。)

 

(「翼の復活」を行うのはお前一人じゃない。僕を忘れるなよ。)

(我レ・デュースもだ。智・技・心、三位一体だ。)

(ありがとう・・・)

 

(ここまで汚染深度が深いと当該感覚記憶のみの除去はできない・・・。どうする。)

(大丈夫でしょう。彼女には当該部位の感覚記憶は元からほとんどありません。それに彼がいれば・・・絶対に大丈夫です・・・。)

 

(感覚汚染、除去開始。)

 
 

…どこだろう…

 

どこまでも果てしなく、何もない。

ずっと向こうから、きれいな水が満ちてくる。

流れてくる水が、さざ波を立てた。

 

…いや…こわい…

…もうだれも わたしに ふれないで…

 

(思考領域の一部に恐慌発生。干渉を拒絶)

(弱い自己帰還性恐慌と萎縮を確認)

(感覚汚染、完全除去遂行不能)

 

(どうしよう、ア・ザート。)

(ここが、彼女の自我の核心ですね・・・。)

 

(平衡誘導波形を系に導入。信号波形、ライブパターン、レイバード)

(信号源への連絡開く。誘導波形、導入開始)

 

・・・

 

レイバードは、ほのかに瞬く小さな青い光を見た。

とても懐かしくて、とてもいとおしい感じのする、ほのかな光。

(手を、さしのべてあげて下さい・・・)

心の中に、少年とも女性ともつかぬ声が響いた。

レイバードは、その小さな光にむかって手を差し伸べた。

 

・・・

 

 …いえ、ちがう…

 …ずっと触れてほしかった、やさしい手。…

 …優しくて、あたたかい…

 

 …手?…

 …私の手は、どうしたんだろう…

 …私は、どうしたんだろう…

 

(恐慌状態消滅)

(感覚汚染、完全除去)

(意識、急速に覚醒。基底状態維持困難)

(感覚汚染修復完了。このまま次の段階へ移行します。)

 

(思考領域と疑似連環経路の接続を解除)

(思考領域と模擬感覚経路の接続を解除)

(思考領域と記憶領域・感覚体を再接続、調整開始)

 

 …私は、どうしたのだろう…

 少女は不思議に思った。

 …なぜ、私は思っているのだろう…

 …私は、思うのをやめたはずなのに…

 …私は、死んだはずなのに…

 

 …私は、翼を失って…

 …レイバード様に、ふさわしくなくなったから…

 …それがつらくて、悲しくて、自分で命を絶ったのに…

 

 …なぜだろう、ぜんぜんつらくない。

 翼を奪われた痛みも、おぞましい感覚も、全く思い出せなかった。

 …それに、妙な感じ…

 …なんだろう…

 

(修復状態認識行程、実行開始)

 

「ほら、翼だよ。」

 背中から、声がした。

 小さな妖精のようなものが、そこに浮かんでいた。

「ぼくは、砂のメキエル。」

「わたしは、水のリリエル」

「ぼくは、風のイザエル」

 首を後ろにひねると、いつの間にか、背中に大きな翼があった。

「ほら、翼だよ。」

「いっしょうけんめい、なおしたんだよ。」

「前より大きくて、立派だよ。」

「そんなことあるもんか。前のとおんなじだよ。」

 妖精達は言い争いをしている。

 でもすぐに、顔を見合わせ、声をそろえて言った。

「もともとの翼が、一番綺麗で、すてきだもんね。」

 

「今度は、しあわせにね。」

 妖精達は宙に昇っていき、すうっと消えていった。

 

(認識行程実行情報複合体「砂のメキエル」回収確認)

(同「水のリリエル」「風のイザエル」回収確認)

(認識行程、正常に終了)

(「翼の復活」最終段階へ)

 

・・・
 

 空中に静止した少女の体が、ほのかな光に包まれた。

 その背中に、輝く大きな翼が姿を現し、徐々に開いてゆく。

 ・・・天使の翼が、よみがえる・・・

 誰もが確かに、そう感じていた。

 

(「翼の復活」外部提示、認証行程終了)

(これが、「翼の復活」の「儀式」としての最も重要な行程です・・・。)

 

(全行程完了)

(「翼の復活」完遂!)

 

 レイバードが、はっと目を開いた。

 

 少女の目が開いた。

 そして、少女を見つめるレイバードの方へと、顔を向けた。

 

私は、顔を向けられる。

あの人の目を、見ることができる。

 

あの人が、私の目を見つめてくれている。

私の方へ、手を伸ばしている。

私を求めて、手を伸ばしている・・・。

 

 少女も、手を伸ばした。

 指先が、近づく。

 指先が、わずかに触れた。

 想いが、溢れ出す・・・

 

・・・

 

 深く蒼い空間に、二人の少年が向かい合っている。

 一人は、黒みがかった蒼い髪に、蒼い瞳の、穏やかな表情の少年。

 もう一人は、同じく黒みがかった蒼い髪に、蒼い瞳の、少年らしい生命感あふれる表情の少年。

 表情以外のすべてが、全く同じ二人の少年。

 

「ついにこの時がきたね。」

「ええ・・・。」

 

「今度は、素直にいこうぜ。」

 少年は明るく笑いかけた。

「はい。」

 穏やかな表情が、にっこりとした笑顔に変わった。

 

 二人の少年は、それぞれ合わせ鏡のように対称の動作で、お互いに向かって手を伸ばす。

 触れ合った手のひらが、とけ合うように重なってゆく。

 やがてその姿は、完全に一つとなった。

 

・・・

 

 レイバードの姿は、少年へと変わっていた。

 少女と同じくらいの年頃の少年に。

 ちょうど、少女が初めて、レイバードの唇を求めた頃の姿に。

 そして、その背中には、白い六枚の大きな翼が開いていた。

 

 少女が、レイバードの胸に飛び込んだ。

 天使の翼は、その背中にとけ込むように消えた。

 レイバードは、少女をきつく抱きしめた。

 それだけでは足りなくて、その六枚の大きな翼で、少女を包み込んだ・・・。

 

「もう放さない・・・君は、僕のものだ・・・。」

 抱きしめていなければ、消えてしまうとでも言うように、何度も、何度も抱きしめた。

「誰にも渡さない・・・君は、僕だけのものだ・・・。」

「ミレーユ・・・」

 少年の頬を、涙が流れた。

 

「やっと・・・名前で呼んで下さった・・・」

 少女の瞳から、涙が一滴、こぼれ落ちた。

 熱い、喜びの涙だった。

 

 少女は、自分の胸元に触れる、冷たい感触に気がついた。

 少年が身につけていたそれは、あの首飾りだった。

「ずっと、持っていて下さったのですか・・・。」

「言い伝えは、本当でしたわ。レイバード様・・・」

 少女は、感きわまったように、少年に抱きついた。

 手が届かなくて、抱きしめきれないのが惜しいかのように。

 

アルゴルに栄光を

女神と導き手に人としての幸福を
叶えられなかった思いを遂げる血の通う肉体を

悲しみの戦士にしばしの休息を
その後に宿命の天使との恵まれた愛を

アルゴルを愛せし者
アルゴルの栄光を信じた神官に安らぎを
神官の愛せし少女に再び天使の翼を
その後に二人に永遠の愛を

神官の末裔
アルゴルの防衛者
アルゴルを旅立つ「学者」「魔導師」に導き手の祝福を

そして願わくば
アルゴルを呪いし光との決別を

 

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