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Phantasy Star Storiesコミュの第十二章 帝王の仮面

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帝王の仮面
 

 モタビア総督が会談を終えてモタビアへと戻った翌日、仮面を付けて大臣達の前に現れたレイバードは、正当な王としての即位を宣言した。

 大臣達はあまりに突然のことに驚きはしたが、正統王位継承者の生存が既に絶望的である現在、その決断は遅すぎると言ってもよいくらいのものであった。レイバードを除いた緊急の閣議が開かれ、代王レイバードが実質的なランディール王朝の後継者であるという認識の確認と、重臣達に反対の意思がないことが結論された。

 早速戴冠式の実施案が提出されたが、この原案の中に大司教による王冠の授与の儀式があったことが代王のかんに障ったらしく、この案は一蹴され、戴冠式そのものがとりやめとなってしまった。

 

「予は神などから王冠を賜るのか!? 予はこのアルゴルを統べる王となると言ったのだ。冠でアルゴルを統治するのではない!」

 

 レイバードが自らを「予」と呼称するのは、この時が初めてであった。ここに至って、大臣達はレイバードの変貌を知ったのであった。

 

 レイバードの即位が公式に宣言され、アルゴルは大騒ぎとなった。大貴族は一様にこの即位を認めないことを表明し、それぞれが王位継承権を主張した。貴族勢力の中には、二百年以上昔の姻戚関係をもちだして、王位継承権を主張する者も現れた。

 

 だが即位宣言から三日後、それらは全く予期せぬ形で報われた。

 

 旧ランディール正規軍と王宮軍による大規模な軍事演習が行われた。全兵力による攻略戦の模擬演習は、貴族勢力による王権の戦力の把握に大幅な誤りがあることを見せつけた。また、貴族勢力側の主力装備と同等の旧式装備を標的に行われた未知の新兵器の実演によって、彼らの保有戦力が無力に等しいことを思い知らされることとなった。この演習以後、公に王位継承権を主張する者はいなくなった。

 

 反逆即殲滅という意思表示といえるこの示威行動は、外交努力で戦乱を回避しようという「神官」レイバードとは正反対の態度であったが、強大な王権の力を背景としたこの姿勢は、大貴族達の動きを完全に封じ、結果として、平穏を維持すると共に、貴族達の勝手による政策の不徹底を一掃した。

 

 王宮内に異変が起こったのは、即位から一週間ほど経った頃からであった。王のそばに仕える者達が次々と原因不明の病に倒れたのである。

 

「うむ、「混沌」の力を抑えるマスクをつけているとはいえ、やはり周囲の人間への影響は避けられんか・・・」

 真新しい玉座に座って、「帝王」ラ・シークは思案していた。

「衛兵達は何ともないところをみると、どうも年齢や肉体の頑強さによって影響の程度が異なるようだな。慣れればもう少し影響を抑えられるとして、それまでどうするかだな・・・」

「それまでは、我々がお仕えいたしましょう・・・。」

 ラ・シークの前に、人の形をした影が現れた。

 

コメント(6)

 

 突然現れた、決して素顔を見せない側近達に、それまで仕えていた者達は反発を示した。

「このままでは政務に差し支える。止むを得まい。」

「しかし、全て彼らを通すというのは・・・ううっ」

 必死に訴えていた役人が、耐えきれずにへたりこんだ。

「別にお前達を軽んじているわけではない。無理をせずにもう下がれ。」

 衛兵に支えられ、役人は謁見の間を後にした。

 

・・・

 

「神官の従者」である騎士が、ラ・シークのもとを訪れた。

「陛下。」

「何だ。」

 

「貴方は、レイバード様ではありませんね。」

 その問いは、彼の命を失わせかねないものであった。

 

「そうだ。よく分かったな。」

「帝王」ラ・シークは、まるでそれを待っていたかのようにそう言った。

「奴に会いたければ、夜来るがいい。だが夜は奴の貴重な時間だ。あまり邪魔をするなよ・・・。」

 

 夜、騎士はラ・シークの私室を訪れた。

 ラ・シークは、仮面をはずした。

 そこにいるのは、紛れもなくレイバードであった。

「レイバード様・・・」

 騎士はレイバードの前にひざまづいた。

「私は、決して許されないのでしょうね・・・」

 ただ一言、レイバードはそう言った。

「いいえ・・・」

 騎士も、それ以上何も言わなかった。

 

 騎士は確かに見た。深い悲しみをたたえたレイバードの瞳の奥にある強い輝きを。

 レイバード様は、自らの選んだ道を後悔していない。

 レイバード様は生まれて初めて、ご自分の未来を見つめておられる・・・!

 

「レイバード様が悪いのではない・・・」

 レイバードの部屋を後にして、騎士はつぶやいた。

「悪いとすれば、それは先にレイバード様を裏切った世界の方だ。」

 

・・・
 

「「神官」ラ・シークよ、この姿が・・・「帝王の肉体」がどういう意味を持つか分かるか?」

「神官」の返答がないことに構わず、「帝王」ラ・シークは続けた。

「この姿は「神官」の心を覆い隠す「帝王の仮面」だ。もはやお前の心を傷つけることは誰にもできん。」

 勝ち誇るように語りながら、「帝王」はニヤリと笑った。

「愚か者どもの目には、この強靱な「帝王」の姿しか見えぬのだからな!」

 玉座の間に、「帝王」の高笑いが響きわたった。

 

 

「失礼いたします。」

 少年給仕が、ラ・シークの私室へやってきた。

 少年は食事を片づけ、ワゴンを押して部屋を出ていこうとした。

「待て。」

 少年はびくっとして立ち止まった。

「は・・・はい、何か。」

 少年は緊張していた。

 何か無礼をはたらいてしまったのだろうか、何か気に障ったのだろうか・・・僕の命はもうないかもしれない。心臓が胸を突き破って飛び出さんばかりに打つのを感じながら、そんな考えが頭を巡った。

 ラ・シークの口が動いた。少年は息を止めた。

「料理長に伝えておいてくれ。今日の食事はなかなかだったが、量が足りなかった。もう少し増やしてくれ。とな。それと、酒を二、三本つけてくれ。」

 拍子抜けのあまり、少年は自分が力のぬけた返事をしてしまったことに気付かないほどであった。

 

「陛下が食事の内容について口にするなんて、これまでなかったことだ。」

「それだけじゃない。アウレス王が亡くなられて以来、酒などまったく召し上がらなかったのに、最近はどうだ。しかもあれだけ飲んでも、翌日は平然としておられるそうだ。」

「最初は恐ろしかったけど、なんだか今の方が、王様らしいな。」

 

 

「やはり王ともなると、いいものが食えるな。」

 誰も見ていないのを確認して、仮面をはずして牙の間に詰まった食べかすを掃除しながら「帝王」は言った。

「最初は消化吸収を担うだけだったが、このごろようやくうまい、まずいの判別がつくようになったからな。」

「(・・・・・)」

「まったく、これだけうまいもの食って、少しは機嫌良くなったりせんのか。」

「酒もいいな。こいつはなかなか気分が良くなる。不快感がないところをみると、お前ももともと、酒には強い体質のようだな。」

「(・・・・・)」

「なあ、何か楽しいこととかないのか。感覚をある程度共有しているのだ。お前の気分が沈んでいると、こっちの気も滅入るのだぞ。」

「そうだ、女はどうだ。この顔と体だ。その気になればいくらでも・・・」

そこまで言って、「帝王」は「神官」の気配がこれまでと違うのに気付いた。

「悪かった。冗談が過ぎた。」

「帝王」ラ・シークは、軽率な言動を本気で後悔した。

 

「「神官」ラ・シークよ、お前の願いは、必ず叶えてやろうぞ・・・」

 

・・・
 ガシコの西の山脈地帯で、中規模の地震が頻発するようになった。政府はこの地震が火山性の地下活動によるものであり、近いうちに噴火が起こる可能性があると発表し、該当地域に警戒宣言を発した。その二週間後、噴火によって溶岩が流出し、溶岩は海岸までの広範囲にわたって広がった。溶岩の流出は止まらず、北のアビオンをはじめとするいくつかの町や村は孤立状態となった。地震や噴火による死傷者がなかったのが、せめてもの幸いであった。

 

 この影響で、バヤマーレでも地震が続くようになっていた。ついに王宮の北東に地割れが発生し、噴煙が上がり始めるに至り、王宮からの避難が決定された。行政機能は首都へと移転し、首都の近くに新王宮を建設する案が出された。

 

 首都への行政機能の移転の準備が始まり、首都の一角を担うカミニート居住区も慌ただしくなってきていた。スペースポートで荷揚げ作業員として働くネロ青年も、忙しい日々を送っていた。

 

「仕事が増えて帰りが遅くなったけど、給料も増えたから、アリサにも少し贅沢させてやれるな。」

 ムーブロードを抜けて居住区の入り口に着いた頃にはすっかり夜になっていた。ネロは小走りで家路を急いだ。

 

・・・

 

 総督は腹心の部下に王女アリサを託した。エージェント指揮官の座を退いた彼は自分の妻にもアリサの素性を明かさず、まだ幼い自分の息子ネロにも、親戚に預けていた子供だと言い聞かせた。

 成長するにつれ、ネロもそれが不自然であることに気が付いたが、彼は父の資質を受け継いでおり、決してその疑いを他人に漏らすようなことはしなかった。それにネロ自身、ずっと一緒に育ってきたアリサのことを大切な家族だと考えていた。

 父に命じられるまでもなく、ネロはできるだけアリサから目を離さないように心がけていた。パルマに移り住んでからはアリサと同年代の子供達も多くいて、見つかる危険性は少ないと思われたが、油断することはできなかった。三年ほど経ってモタビアからカミニート居住区にやってきたパセオでの幼なじみのネキセの存在はネロの大きな支えとなった。居住区の外で一緒に遊びながら、彼は警察機構の動きなどの様々な情報をもたらした。当時、少年連絡員の存在は警察機構の知り得ぬことであった。

 両親が事故で死亡した際、かねてよりの「自然の運命のままに生きたい」との言葉に従い、復活はしなかった。だが本当は、復活のために記憶の探査が行われ、事実が発覚するのを恐れたのだと思われた。

 

 両親の死後、ネロはすぐに働きに出た。もちろん総督の支援があれば、何不自由ない生活は送れるが、多額の資金援助は警察機構に察知される危険があった。支援はネキセを通じての最小限にとどめ、アリサと二人で身を寄せ合うようにして暮らしていた。

 

 アリサは家族の愛情に包まれて、元気に育っていった。アリサは特に、いつも一緒に遊んでくれる兄のことが大好きだった。兄は決してアリサを邪魔に扱ったりせず、いつも優しかった。常にアリサのそばにいてくれた兄には、同年代の友達が少なかった。兄には、いくら感謝しても足りないと思っていた。

 両親が亡くなってからは、兄は働きに出て、生活を支えてくれた。アリサは自分も働きに出ると言ったが、兄はアリサが学校に通うことを望んだ。アリサは学校から帰ると、遊びにも行かずに家事をこなし、夕食を作って兄の帰りを待った。

 

・・・

 

 国王ラ・シークが、以前とは別人のようになったという噂が流れ始めたのは、王宮の移転の決定が伝えられた頃からだった。

 

「王に仕える者が次々と原因不明の病に倒れたらしい。」

「得体の知れない者達が、王の側近として仕えているそうだ。」

「あの地震や噴火も、王が起こしたのではないだろうか・・・」

 

 王にまつわる不気味な噂が、あちこちでささやかれるようになった。

 ネロが異変を感じたのは、ネキセから、警察機構が王女の捜索を打ち切ったらしいとの情報を聞いたときであった。

 やはり妙だ。例の軍事演習の件といい、何か気になる・・・。

 行政機能の移転が完了しようとしていたある日、ネキセが落ち着かない様子でネロのもとを訪れた。

 息を潜めるようにネキセが話した内容は、信じがたいものであった。

「王宮が、消えた。」

 

・・・

 

 城壁付近で警備にあたっていた王宮軍の兵士達は、信じられない光景を目の当たりにした。

 凄まじい地響きと共に、誰もいないはずの王宮が岩盤もろとも空に舞い上がり、空中にとけ込むように消えてしまった。

 直後、地割れは火を噴き、溶岩が流れ出した。溶岩は窪地に溜まって池となり、バヤマーレの丘への唯一の通路をふさいだ。王宮軍の兵士達は、為す術もなく、かといって立ち尽くすわけにもいかず、監視を続けた。

 

 

「どうだ。」

「はっ。基礎の作業はほぼ、完了いたしました。」

 ラ・シークは、王宮の地下へと来ていた。

「「禁断の書庫」の構造を利用して、外壁に動力炉を配置した。この動力炉の推力で上昇、下降、高度の維持を行う。残念ながら動力炉の推力だけで浮上することはできん。」

「帝王」ラ・シークは、「神官」に説明した。はたから見ていればただの独り言である。

「支えを入れたために、書庫の空間が確保できなくなった。よって翻訳と原本の一部はシークに移した。」

「(蔵書を運び出したのか・・・軽率なことを・・・)」

「心配するな。指示なく手を触れないように伝えてある。」

 ラ・シークは、下の階層へと下っていった。

「ここで、「混沌」の力を推力に変換する。ここで発生する力が、主な浮力となるのだ。」

 そこはかつて「禁断の書」が封印されていた「禁断の書庫」最深部であった。六本の巨大なクリスタルが、不気味なうなりを上げながら輝いている。

「地殻に穴をあけて対流を乱したことで、パルマの結界極子としての力は確実に弱まった。「混沌」の力も徐々に増大している。エアロキャッスルが飛び立つのもまもなくだ。不可視化結界で護られた天空の城に大兵力を持って攻め入ることなどできん。お前の心配する戦乱の可能性はなくなるわけだ。」

 どうだ、このすばらしい思いつきは、と言わんばかりに、「帝王」ラ・シークは高笑いを上げた。

 

 

 溶岩の流出によって誰も近づくことのできなくなったバヤマーレの丘で、何かが動いていた。

 王宮の跡に、巨大な建造物が築かれつつあった。

 建造物は信じられない速さで天へと伸びていった。わずか半月ほどで出現したその巨大な建造物は、「バヤマーレの塔」と呼ばれた。

 

・・・

 

 空高く舞い上がった王宮で、王と貴族達による会食が催されていた。

 

「天空の見えない城とは、まさに無敵。」

「まさしく、アルゴルの支配者にふさわしい居城でございますな。」

 貴族達の賞賛ぶりは、見え透いたお世辞の域を越えた熱狂を含んでいた。

 贅沢かつ怠惰な生活の中で、貴族達の体は健康とはほど遠いものとなっていた。にもかかわらず、彼らは「帝王」ラ・シークの前で、不思議な活気を見せている。

 

「陛下が永遠の命を手に入れられた暁には、なにとぞ我々を・・・」

 

「ああ、分かっておる。」

 そう言いながら、「帝王」ラ・シークは二十本目のワインを空けた。

(ふん、欲深い者にとっては、「原初の混沌」の波動はむしろ力を与えるらしいな・・・。)

 
「完全に利用されているな。」

 報告資料の束を手にして、総督は言った。

「ラ・シークと手を結んだ連中によって、貴族勢力は見事に分断されている。反乱勢力が兵力を結集するのはもはや不可能だろう。連中に足止めさせておいて正規軍を差し向ければ、集結前に各個撃破するのは造作もない。恐らく連中は自分達が利用されているなど思いもよらないだろうな。」

「しかし実に攻撃的な戦略に出たものだ。以前のラ・シークなら考えられんことだな・・・。」

 そう言いながら、総督は14年前を思い出していた。

 あの女官は、ラ・シークが「混沌の者」と手を組んだのではないかと言っていた・・・今となってみれば、それもあながち間違いとはいえないかも知れない・・・。

 その思索を中断させたのは、突如もたらされた「王宮消失」の報であった。

 

・・・

 

 レイバードは、夜の間のみ、「神官」としての姿を保っていた。 ダークファルスの波動によって神官の体が衰弱し始め、長時間「殻」を解除していることができなくなってきたためである。

 

「いかんな、予想より衰弱が早い。」

 神官の体の衰弱の進行は、「帝王」ラ・シークにとってもはや無視できないものとなっていた。

「しかし妙だな。お前ほどの能力を持つ者にしてはあまりにも進行が早い。・・・過去に何か、体を大きく損なうようなことがあったか?」

 

「(あれは・・・、永遠の、想い・・・)」

 レイバードは、18年前の光景を思い出した。

 それを後悔することはなかった。その時その他には何もなく、そして今、それは全てであった。

 

・・・

 

 行政機能の首都への移転が完了し、王宮軍は首都防衛の任に就いた。

 その頃から、首都の様子が変わり始めた。居住区の入り口には小銃を持った兵士が立ち、スペースポートへのムーブロードの入り口では、警備兵が通行証の提示を求めるようになった。通行証の発行に際しては身辺調査が行われ、貴族勢力の関係者の移動を厳しく禁じた。また特別な理由のない民間人の移動も制限され、三ヶ月以下の間隔での惑星間の往来も禁止された。

 

 急激に厳しくなった政策に不満を持つ青年達が集まり、政治についての議論を交わすようになった。やがてそれは、圧政への抵抗を掲げるレジスタンスの結成へと発展していった。彼らは首都から商業都市シオン、そしてパルマ各地へと急速にネットワークを拡大していった。

 同じ頃、首都の一部で王に関する不気味な噂が流れ始めていた。レジスタンスはこれに着目し、彼らの扇動によって噂は瞬く間にパルマ全土へと広がった。

 

「ラ・シークをはじめとする支配階級の貴族達が邪教にとりつかれ、ラ・シークは永遠の命と引き換えに、このアルゴル太陽系を売り渡してしまったらしい」

 

 この噂は民衆の恐怖を煽り、ラ・シークへの不信を抱かせた。勿論レジスタンスとしては民衆の決起を促すための扇動であったのだが、直後にアルゴル各地に正体不明の怪物が現れるに至って、「魔王ラ・シーク」の印象は決定的なものとなった。

 ネロも、この運動に参加した。ネロはその素質と才能を発揮し、レジスタンス組織の中で重要な位置を占めるようになった。ネロがレジスタンスに参加したのにはある狙いがあった。政府の混乱に乗じて、ラ・シークの真の目的を探ろうと考えていたのである。そのためには、混乱を作り出す側にいるのが最も確実であった。

 

・・・

 

 

「帝王」ラ・シークは、レイバードが決して公開しなかった、生体改造の技術の実用化の研究を開始した。

 

「動物実験はもうすぐ完了する。さて、人体実験だが・・・「神官」が許さぬだろうしな・・・どうしたものか。」

「帝王」ラ・シークは妙案を思いついた。

 

 夜、レイバードは王宮の地下牢へと向かった。

 牢には、何人かの男達がつながれている。

「(「翼の復活」の過程で判明した罪人どもだ。いずれも同情すべき経歴を持たぬ、唾棄すべき連中だ。)」

「帝王」ラ・シークが、レイバードにそう言った。

 レイバードの視線が、男達に向けられた。

 男達は、憎々しげな顔をレイバードに向けた。

 しかし次の瞬間、その顔は驚愕と恐怖に変わった。

 レイバードの視線は、凄まじい殺気に満ちている。

 男達は目を動かすことも、声を出すこともできない。

「(おいおい、気持ちは分かるが、あまり睨むなよ。殺気で死ぬぞ。)」

 男達の顔から脂汗が流れだし、ついには白目をむいて気を失った。

「(言わんことではない。死にはしなかったが、精神が崩壊してしまったぞ。)」

「(まあ、精神が崩壊したところで問題はない。こいつらにふさわしい、新たな姿を与えてやろう。)」

・・・

 人体実験により、生体改造技術の実用化は急速に進められ、「シャーキン」「バットマン」などの改造人間が作られた。これらの成果をもとに、「カオスソーサラー」をモデルにして人間の魔導師を改造・強化した「サイボーグメイジ」、一般兵士の志願者を改造した「セントール(ケンタウル)」などが生み出された。

 さらに「帝王」ラ・シークは、「神官の守護騎士」達にも、特別の待遇と任務完了後の人間への復元を条件に、任意で改造を受けるよう持ちかけた。「神官」レイバードの願いを暗黙のうちに察していた彼らは、誰一人としてこれを拒もうとはしなかった。こうして、最強の親衛隊「キングセイバー」が誕生したのである。

 

・・・

 

 レイバードは、自分の選んだ道が、正しいものであるとは思わなかった。自らを倒しに来る者達のために、ランディール王朝に伝わるラコニアの武具をアルゴルの各所にある遺跡におさめた。

 

「ダモア老、あなたには、苦労をかけますね・・・。」

「レイバード様・・・。」

 すっかり老いた賢者ダモアは、すすり泣きを上げた。

 レイバードは、賢者ダモアに、不可視化結界を無力化するエアロプリズムと同じ結晶を、「混沌」の魔力に共鳴し、その力を減じる作用を持つようにカットしたクリスタルを託した。

 ダモアはもはや「賢者」として、レイバードを諫めようとはしなかった。

・・・我らはあの時、何もできなかった。その我らが、レイバード様の願いをどうして止められよう・・・。

 

「帝王」ラ・シークは「神官」の一連の行動を阻止しようとはしなかったが、遺跡にモンスターを配し、またダモアを「バヤマーレの塔」に幽閉することで応じた。

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