ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

Phantasy Star Storiesコミュの第五章 ナウラの洞窟

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
第五章 ナウラの洞窟

 カミニートに戻ったアリサ達は、全身傷だらけの状態でスエロの家に戻ってきた。

「まあ!どうしたの、そんなに傷だらけになって・・・」
「エピの森で、運悪くバットマンに遭遇してしまってね。今の俺達の装備では手に余る相手だったよ。」
「そうだったの・・・とにかく、全員無事に戻ってこれてよかったわ。」

 スエロの家で傷を癒したアリサ達は、町外れの倉庫にやってきた。

 「本当にあるのかな、ダンジョンキー。」
 「まあ、期待せずに探してみるか。」
 倉庫の中のあちこちを探すと、まもなくひとつづりの鍵の束が見つかった。

 「タイロン、これがダンジョンキーなの?」
 「ああ。しかし、こいつはすごいな。」
 「大小の六連つづりで、それぞれに組み換えが三か所ある。しかも良くある鉄の鋳造じゃなく、鋼の削り出しだ。細工もすばらしい。これなら、普通はダンジョンキーなんかじゃ開かない錠でも開けられそうだ。」
 タイロンは感心しながら、その鍵の束を眺めていた。
 「あのじいさん、若い頃は冒険家だったんだろうな。バットマンがうようよしている森を抜けて、わざわざダンジョンキーをカミニートに隠しに来るなんて、ただの年寄りに出来ることじゃない。コンパスをもってエピの村にやってくる同じような冒険家に、この鍵を託したかったんだろう。」
 タイロンは感慨深そうにそう言った。これまで各地を旅してきたタイロンにとって、何か感じ入るものがあるようだった。

 「さて、これからどうするか・・・」
 タイロンは、今後の行動を思案していた。
 「やはり、モタビア総督に会って、協力を求めるのがよさそうだな。」
 これまでの旅で集まったさまざまな情報も、その方向を示していた。
 「それじゃあ、さっそくパセオに向かいましょう。」

 アリサ達は、再びパセオのスペースポートに降り立った。
 さっそく、モタビア総督の屋敷へ向かった。

 「だめだな、やっぱり扉に錠がかかっている。」
 以前に訪れた時と同じように、扉は閉ざされていた。
 「ねえ、タイロン、この鍵穴、さっきのダンジョンキーのどれかが入りそうじゃない?なんとか開かないかしら?」
 「まさか、仮にもモタビア総督の屋敷の門だしなあ・・・。」
 半信半疑ながら、タイロンはダンジョンキーの束から、合いそうな大きさの鍵を見つけ、鍵穴を通るように節を組み換えて差し込んで、回してみた。
 カチリと音がして、鍵が90度回転した。
 「ほんとに開いたよ・・・じゃあ、行ってみるか。」

 地下通路を先へ進むと、人影のようなものが現れた。
 「ロボットポリスだ。やっぱり侵入者を撃退するための手段は他に用意されていたんだ。」
 「どうしよう、あんなロボットに勝てるのかしら。」
 「その前に、総督邸を警備するロボットポリスと戦ったりしたらそれだけで犯罪者扱いだ。モタビア全土でお尋ね者になっちまう。」

 「ソウトクヘノ オクリモノヲモッテキタカ。」
 ロボットポリスが合成音声で話しかけてきた。
 「(どうやら、逮捕する気じゃないらしいな)」
 「(贈り物って?総督に会うのに贈り物が要るの?)」

 「そんなの、持ってきてないぞ。」
 タイロンが答えた。
 「サッサト カエレ。」
 ロボットポリスは一言そう言うと、アリサ達を追い返した。

 「こりゃ通してもらえそうにないな。ひとまず引き上げよう。」
 アリサ達は、来た道を引き返した。

 パセオの町であちこち聞き込みをすると、どうやら総督に会うには必ず贈り物が要るらしいことが分かった。
 「甘いものが大好きらしいけど・・・」
 「甘いものか・・・。何か持ってたかな。」
 「ペロリーメイトは、ちょっと甘い味がするけど・・・」
 「ルオギニンも、薬っぽい味だが、甘いと言えなくもない・・・だめでもともと、行ってみるか。」

 アリサ達は、再び総督の屋敷への門をくぐった。
 「ソウトクヘノ オクリモノヲモッテキタカ。」
 アリサ達は、ペロリーメイトとルオギニンを差し出してみた。
 ロボットポリスはモーター音をさせながら、差し出された物を見回した。
 「オクリモノニ ナルヨウナ モノヲ モッテナイジャナイカ。」
 ロボットポリスはそう言うと、先ほどと同じようにアリサ達を追い返した。

 「なんて奴だ。賄賂を要求するばかりでなくて、選り好みまでするとは。」
 タイロンは少し腹を立てているようだった。
 「カミニートのゼリーは、スペースシップで持ってこられないと思うし、この暑さじゃ溶けちゃうだろうし・・・。」
 「総督が満足する甘いものなんて、一体どこにあるんだ・・・。」
 アリサ達は困り果て、意気消沈してスペースポートに戻ってきた。
 ぼんやり歩いていると、ポーターとぶつかりそうになった。
 「あっ、ごめんなさい。」
 「いやいや、気にしないで。」
 ポーターは怒ることもなくそう言った。このときふと気がついたが、このポーターをはじめ、モタビアの人々はみんな黒髪だ。
 「ところで君達、これからパルマへ行くのかい?」
 「ええ、そうですけど。」
 「パルマ星のナウラという洞窟には、ケーキ屋があるんだってね。モタビアはとても暑いから、暑さですぐに傷んでしまうクリームや果物を使ったケーキを作る店なんてないんだよ。一度食べてみたいなあ。」
 アリサ達は全員はっとなった。

 スペースシップの中で、アリサ達はケーキの話で持ちきりだった。
 「モタビアに無いというケーキなら、総督もきっと満足するぞ。」
 「でも洞窟にあるケーキ屋さんなんて、私も聞いたことないわ。」
 「いったいどんなケーキなんだろう。」

 パルマに戻り、もう一度カミニートやパロリト、シオンであちこち聞きまわると、シオンの北にそのナウラという洞窟があることがわかった。アリサ達はさっそくその洞窟に向かった。
 洞窟に入り、サーチライトを点灯して少し進むとすぐに、鍵のかかった扉があった。この扉も、ダンジョンキーで難なく開いた。
 扉を入ってさらに進むと、バットマンの群れが襲いかかってきた。
 「なんてところだ。バットマンの巣窟じゃないか!」
 タイロンがニードルガンを乱射して牽制しながら、アリサ達は全速力で逃げ出した。洞窟の天井がそれほど高くなかったことが幸いしたのか、何とか回り込まれずに逃げ切ることができた。

 「あれじゃとても先に進めない。せめて防具をもう少し充実させないとな。」
 「それじゃあ、しばらく資金稼ぎね。」
 「ミャウも、棘リスの毛皮めざしてがんばるよ!」

 アリサ達は平原や森で数え切れないほどのモンスターと戦って、資金を稼いだ。その間に全員経験を積み、アリサも新たなマジックを覚え、ミャウもついにマジックが使えるようになった。タイロンの体力、攻撃の威力も、目に見えて回復してきたようだ。(注釈16)アリサはライトスーツ、タイロンはチタニウムソードとアイアンシールド、ミャウは棘リスの毛皮を新たに装備した。
 「ようやく石化の後遺症も収まってきたな。ようし、もう一度ナウラの洞窟に乗り込むぞ!」
 腕を回しながら、タイロンは力強く意気込んだ。

 「でも・・・」
 棘リスの毛皮を着て、全身針だらけになったミャウのほうを見ながら、アリサが残念そうにつぶやいた。
 「棘リスの毛皮を着てたら、旅をしていて急にミャウを抱っこしたくなったときに、抱っこできなーい!」

 「・・・我慢しなさい。」
 一瞬の沈黙の後、タイロンが一言、あきらめたようにそう言った。

 サーチライトと、大量のルオギニンを買い込み、アリサ達は再びナウラの洞窟に向かった。
 ナウラの洞窟には、バットマンのほかにも、デビルバットの近縁種の中で最も凶暴な、金色の翼と金色の瞳をもつゴールドレンズや、人里離れた森や洞窟を徘徊する悪霊リッチなど、厄介なモンスターがいた。特に、群れで現れるバットマンは、遭遇のたびに危機に陥る強敵だった。アリサのヒールやルオギニンで何とか命をつなぎながら、一行は洞窟の下の階へ進んでいった。

 「この洞窟、他の洞窟に比べて、じめじめした感じやかび臭さがないなあ。」
 「暑くも寒くもないし、むしろ快適なくらいね。」
 「ミャウも、ここだったら冬もパチパチしないかな。」
 「静電気のことね。そうしたら、冬もなでなでし放題よね。」
 「この絶妙な住みやすさが、周辺の森のバットマン達をここに集めちまうのかもな。」

 幾度目かのバットマンの群れとの戦いのとき、タイロンは集中して攻撃を受け、危機に陥った。
 「くっ、こりゃさすがに駄目かもしれないな。久しぶりに教会の世話になるかも・・・」
 タイロンはついに洞窟の床に膝をついた。
 「タイロン、しっかり!」
 ミャウはタイロンにマジックをかけた。
 途端に、タイロンの傷は見る間に癒え、跡形もなくなってしまった。
 「おおっ、全快だ。ようし、バットマンどもにたっぷり仕返ししてやるぜ!」
 力強く立ち上がったタイロンは猛然と反撃を開始した。

 回復したタイロンの活躍によって、アリサ達は無事にバットマンの群れを退けることができた。
 「しかし、ミャウすごいなあ。こんなすごい回復マジックが使えるようになったなんて。」
 そういってタイロンは、ミャウをなでようとした。
 「あっ、タイロン、だめ・・・」
 アリサがそう言いかけたが、間に合わなかった。


 「あ痛゛〜〜〜!!!」

 タイロンの手に、棘リスの毛皮の、鉄の針ほどに鋭く硬い棘が何本も突き刺さった。

 「もう、タイロンったら、戦いのとき以外はてんでうっかりなんだから・・・」
 アリサがあきれ顔で、タイロンの手をとってヒールをかけていた。
 タイロンは痛いやら情けないやらで、目尻に涙を浮かべていた。

 苦戦の末、アリサ達はついに、ケーキ屋にたどり着いた。
 「こんなところにお店があってごめんなさい。」
 「まったくだぜ。なんだってこんなモンスターだらけのところに店を出してるんだ?」

 「もともとは、モンスターは居なかったんです。私の店で代々作っているケーキは、味を追求して多くの手間をかけるために、生地の練り上げや熟成に他のお店のケーキよりずっと時間がかかるため、普通の場所では夏場は雑菌で生地が傷みやすく、冬場は生地が途中で乾燥してしまうので、年間を通して気温と湿度が安定しているこの場所にお店を作ったんです。でもここ一年ほど前から、洞窟の中にモンスターが住み着くようになってしまって・・・。洞窟の入り口に鍵をかけて、外からモンスターが入ってこないようにしているんですが、わずかの開閉の時に入ってきてしまうらしくて、このありさまです。」

 「鍵をかけていたら、お客さんが来ないんじゃない?」
 「ええ、もともとうちのケーキは最高の材料と多くの手間をかけるために、お値段が少々高くて、一般のお店には卸していないんです。普通は週に一度、材料などの仕入れに行くときに注文を受けて、ご指定の日に洞窟の入り口まで取りに来ていただいています。最近では洞窟までの道中にもモンスターが出ますので、ご注文は武装した使いの方を来させることのできる、お金持ちの方のパーティー用などに限られてますね。モンスターが住み着く以前は、通路に椅子とテーブルを並べて、ケーキとお茶をお出ししていたのですが・・・。それでも、初代からの伝統で、来店されるお客様にお売りするものも必ず用意するようにしているのです。」
 「今日はどんなケーキがあるの?」
 「今日お出しできるのはショートケーキ、1ホール1480メセタです。(注釈17)」
 「た・・・高い!」
 タイロンは思わず叫んでしまった。アリサはともかく、タイロンにはケーキがライトスーツと同じほどの値段のすることなど、考えられなかったのだ。
 「申し訳ございません。モンスターが出没するようになってら、これまで使っていた等級の材料の価格が暴騰いたしまして・・・それと値段の半分は、この特別お持ち帰りケースなんです。」
 店主が持ってきたのは、普通の1ホールのケーキの優に倍はあろうかという、大きな金属製のケースだった。
 「中は灯火式サーチライトと同じ、無転倒回転台になっています。化学反応式保冷剤はモタビアほどの暑さの中でも、3日は適温を保てます。ドライアイスのようにケーキに炭酸味がついてしまうこともありません。道中モンスターに襲われても、ケーキを崩さずにお持ち帰りいただけるようにしつらえました。」
 タイロンも、そのケースをのぞきこんで、ようやく納得したようだ。
 「なるほど、これなら無事に持ち帰れそうだな。」
 「それで、ケーキはどれなの?」
 アリサとミャウは、ケーキのほうが気になって仕方ないようだ。
 「こちらになります。」

 「うわー、綺麗、おいしそー。」
 アリサとミャウは、目を輝かせた。
 出されてきたケーキは8カット分の大きさの1ホール、ゼリーコーティングされた鮮やかな色の苺、真っ白な生クリーム、そしてクリームの装飾の見事さなど、文句のつけようのないものだった。
 「(ねえ、アリサ・・・)」
 「(うん・・・、食べてみたいよね、ミャウ・・・)」
 「(でも、今あのケーキを2つは買えないから、我慢よ。いつかもっと、あのケーキを買ってもタイロンが怒らないくらいお金が貯まってからね・・・)」
 アリサとミャウのひそひそ話に、タイロンが厳しい視線で牽制していた。

 やっとケーキを買い、アリサ達はナウラの洞窟を抜けた。
 「さあ、ケーキが腐らないうちに、モタビア総督のところへ持っていくぞ。」
 そっとケーキのケースを開けてのぞきこもうとしていたアリサとミャウを、またもタイロンが厳しい視線で牽制した。
 

<現在の装備>

アリサ:アイアンソード
     ライトスーツ
     レザーシールド

ミャウ:
     棘リスの毛皮


タイロン:チタニウムソード/ニードルガン
      アイアンアーマー
      アイアンシールド
 

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

Phantasy Star Stories 更新情報

Phantasy Star Storiesのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング