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小説置き場(レイラの巣)コミュの渦雷 第2章 10話

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 シュリエにかけより心臓の音を聞く。
 弱々しいが動いている。脈もある。だが、呼吸をしていない。

 僕の薬は効いてきていた。しかし、心臓がどこまで持つだろうか。

 シュリエを起こし後ろから抱え、胃をしぼる。
 ガマの粘液だろう。緑色のねばつく液体を吐き出した。
 その逆流で、肺に入った粘液も一緒に吐き出される事を祈る。
 そして、毒のない事も。

 横にして口の中から吐しゃ物をかき出した。
 人工呼吸をくり返す。
 肺がふくらんでいるので、気道は確保できたはずだ。
 ポシェットから幾つかのカンフル剤を出し、うつ。

 せきこむような音を立ててシュリエの呼吸と意識が戻った。
 シュリエが体を起こす。代わりに僕が倒れこんだ。
 薬で無理やり動かされていた僕の心臓が、壊れ始めた。

 激しい雨が降り出した。

「…粘液を落とせ。危険、かもしれない」

 シュリエが降り出した雨で顔や体についた粘液を落とす。
 落としながらガマを見ていたシュリエが横になったままの僕の側ににじり寄って僕の体に着いた粘液を落とし始めた。

「助けてくれて…ありがとう。
 あの…。あなたは僕のお父さんですか?」

「…いいや。
 だがきみの事も、きみの父親の事も良く知っているよ」

 シュリエは悲しそうな顔をした。

「きみはお父さんと約束をした。覚えているかい?
 きみの父親が居なくなる前に、きみに大事な話をしたはずだ」

 しばらく考えていたシュリエが言った。

「……僕は一人になる。でも助けてくれる友達、半身と出会える。
 出会ったら手を離してはいけない」

 僕をのぞき込む様にして聞いた。

「あなたが半身ですか?」

「いいや。
 これからだ。これから会う。
 だいじょうぶだ。きっと会うよ」

「あの…お父さんは、僕の事を好きだって言っていた?
 僕の事を嫌いだから居なくなったんじゃないの?」

 思いがけない質問だった。

「愛していたよ。とてもね。
 会ったら聞いてごらん。お父さんにも会えるから。
 さあ、ここは危険だ。すぐに移動しなさい。
 ここからならすぐに移動しても大丈夫だ」

「おじいさんは?」

「大丈夫だ。自分で自分の世界に帰れるから、心配しなくていい」

「苦しそうだよ。どこかケガをしているんじゃないの?」

「疲れただけだよ。さあ行きなさい」

 シュリエがゆっくりと立ち上がり、僕から離れた。
 揺らぎが彼を包み始めた。
                                                ……つづく

渦雷 第2章 11話はこちらから ↓
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