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小説置き場(レイラの巣)コミュの【エッセイ】すずめ3兄弟

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初出08/02/26

             ひよこ

 今は昔、昨年の冬の始まりの頃。

 会社まで歩いていて、信号で止められた。

 何気なく見ていて気づいた。そばの木の枝がうろんな動きをしている。
 木は松ノ木。でも、庭園の松ノ木の様に形を整えられたものではなく、伸び放題。小さな枝も出放題。
 その小さな枝の一本。目の高さあたり。
 大した風も無いのに、その枝だけ、さわさわと小刻みに揺れている。
 しばらく見ていて、見えてきた。
 すずめが一羽、ちょんちょんとせわしなくその枝の上で動いている。
 特に隠れようという様子は無かったのだが、こちらの目が見ていなかったのだろう。
 すずめは小ぶりで、春に巣立ったものだろうか。
 枝の上を移動しながら、しきりに下を見ている。
 小すずめの視線に促され、下を見る。

 私が止められた信号は、橋のたもと。ゆるやかに上り坂になっている。
 脇に公園。松ノ木はその公園に植えられている。私との間には、金属製の柵がある。
 つまり、公園の地面は私の立っている歩道より、4・50センチ程低い。
 その地面。一面に松の枯葉がひきつめられた中に2羽のすずめがいた。

 2羽のすずめも心なしか小型で、枯葉の中をせわしなくはねている。
 そして、時折、上を見上げる。
 枝の上で下を気にする小すずめ。下から見上げる2羽の小すずめ。

 妄想が暴走を始める。

 3羽のすずめは兄弟。一番下の弟は、何につけても不器用で、うまく枝から枝へ飛び移れない。
 兄達が、苦も無く地面に飛び降りても、一人枝の上でとまどっている。
 2羽の兄達は、声には出さないが、下から弟をはげまし、弟も兄達にうながされ、勇気をふりしぼろうとしている。

 3羽ともその事に夢中で、ここで一人のおばさんが見ている事に気がつかない。

 信号が変わる。私は会社に向けて、歩き始める。

 がんばれ、すずめ3兄弟。
 これから冬だ。おばさんもがんばる。


 それから何ヶ月か過ぎた。冬は終りかけている。
 先日同じ場所、同じ松ノ木で一羽のすずめを見た。
 くだんの小すずめ達よりひとまわり大きい。
 ふと、2羽の兄達を探す。枯葉の消えた地面にはすずめの姿も無い。

 いやいや、そんな偶然はあるはずが無い。
 このすずめはあの3兄弟とは無関係。まして、冬を越せたのが1羽などとは…。

 きっと、一冬を越して、たくましくなった3兄弟は、それぞれ自分の道をみつけ、1羽で行動しているのだ。
 時折、思い出の木に羽を休めて…。

 やっぱり、あの時の小すずめに、思いは戻ってしまう。

 枯葉の無くなった地面には、気づけば、草の芽が萌え出している。

 春は、もうすぐそこだ。

 がんばれ、すずめ3兄弟。
 伴侶をみつけ、巣作りをし、これから大仕事だ。

 おばさんも、これから仕事だよ。
 君達とは違い、小仕事だがね。

コメント(2)

都夢さん
 こんな古いエッセイに、ありがとうございます。
 書き続ける勇気をもらいました。

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