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小説・評論:孤城忍太郎の世界コミュの八、『主題と変奏』 吉田秀和著 『摂取本(セツシボン)』

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 この作品を讀む時に、この音樂を聞きながら鑑賞して下さい。
 これは自作(オリジナル)の,

 『Motion1(風琴・organ)』

 といふ曲で、YAMAHAの「QY100」で作りました。
 雰圍氣を味はつて戴ければ幸ひですが、ない方が良いといふ讀者は聞かなくても構ひませんので、ご自由にどうぞ。






 八、『主題と変奏』 吉田秀和著 『摂取本(セツシボン)』



 吉田秀和(1913-)著の『主題と変奏』が中公文庫から出てゐる。
全部で七章からなるこの作品は、昭和二十三年から二十八年までに發表されたものであり、その四章目の作品が發表された二十八年に刊行された、吉田秀和氏の最初の評論集ださうである。


 もう既にこの時點(じてん)で、氏は音樂を言葉で表す自家藥籠(じかやくろう)中のものを手にしてゐて、その魔術のやうな筆運びで、喜びのやうなものを讀者に與(あた)へる事に成功してゐる。


 この中でも、特に三章と四章が秀逸で、

 「モーツアルトの変ホ長調交響曲」

 といふ三章の面白さと言つたらなく、始めはワルツ王のシユトラウスの「美しく青きドナウ」から草を起し、この音樂とモオツアルトの「交響曲第三十九番變ホ長調」との比較をし、どちらも序奏があつて、主題が「ドミソ」から始まるにも拘はらず、何故かうまで違ふのかと問ひ、その理由を、

 『その答えを一言でいえば、耳が、シュトラウスの耳が、それ以上を要求しなかったのではないかという所におちつく。これがワルツだから、シュトラウスは複雑をさけたのだというのは、まだ本当じゃない。彼の耳がこうだったから、シュトラウスは一生ワルツをかきつづけたのだ。ではもし、彼の耳がもっと微妙で複雑な音に耐えたら、どうなるか?』

 と言ひ、さらに、

 『モーツアルトの変ホ長調交響曲(K・V・五四三)をみたまえ、とぼくはいいたい。シュトラウスの耳がもっと複雑な音を要求したら、という仮定は下らぬ空想かも知れぬが、彼より微妙な耳をもっていた人はどんな曲をかいたか、ということを考えるのは無駄ではあるまい』

 といふのである。


 とてもではないが、これほど面白い音樂評論を讀んだ事がなかつた。
四章は讀んだ時のお愉しみといふ事で、ここでは省略するが、自分と同じ感想の先を越された悔しさと、書けたとしても、かうまではうまくは書けなかつただらうといふ憾(うら)みがましい氣持と、それにもまして、思はず膝を叩いてしまふ納得とが混在して、切齒扼腕(せつしやくわん)すること頻(しき)りである。
 御一讀を!


二〇一〇年平成二十二年五月十七日



九、『大衆文芸評判記』 三田村鳶魚著 『摂取本(セツシボン)』
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=53496221&comm_id=4699373

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