Bitter ＆ happinessコミュの２０－２人の時間－

『はぁ～…』

９月になり、始業式の日。私のため息は止まらない。

どうしてこうも楽しい時間が過ぎるのは早いのだろう。
確かに私の夏休みは２週間位しかなかったけれど、あのデート以外に学校の課題だけで終わってしまったなんて、休みでもなかった。

全校生徒が並ぶ体育館では、久しぶりに会った仲間と夏休みの自慢話で溢れていた。
体育会系の教師が注意を促す。
軍隊かよ。ただでさえ暑苦しいのに、アンタが１番暑苦しい…(;￢＿￢)

真っ黒に日焼けした子や、イメチェンした子、楽しそうに喋るのを見ていると何だか切なくなってしまう…。

でも私はあの日、夏休み分の幸せを噛み締めた。
だから仕方ないかっ！！

『ねぇ、ユキ。見たよ！アンタの彼の陽介君っ！今度ライブやるんだってねー♪カッコイイ！！』

私の後ろに並ぶ友達が小声で呟く。

『あれ？なんで知ってんの？
私、まだ誰にも言ってないのに…』

担任の教師が絶えず目を光らせる中、ばれないように会話する。

『知らないのー？校舎の掲示板に貼ってあったよ。
朝、みんな見てたのに…』

『なにそれ？貼ってあったって…何が…
イテっ！』

振り向くと名簿を片手に腕組みをした先生が仁王立ちしている。

『す、すいません』

掲示板に張られたポスター。

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-ＣｒｏｓｓＤａｒｔｓ-
１２月２１日。
４本の矢がこの日、世界を震撼させる！！

渋谷DESEOにて。

詳細、チケット購入は２年Ｃ組の陽介まで。

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あ・き・ら・か・に手書き！！

真っ白の紙にマジックで走り書きされたポスターに呆然と立ち尽くした…。

『それ、コータが書いてくれたんだよ』

振り向いた先には陽介が苦笑いしながら立っていた。

『恥ずかしいよなぁ～（笑）
『やっぱ宣伝とかしとくべきでしょ☆』

って、ポスター渡されちまってさ！
俺も一躍有名人だなぁ』

『でもコレ、センスないよ…。小学生が書いたみたい…。』

思わず両手で隠したくなる位のでかでかと書かれたポスター。
しかし、インパクトはある。
それを計算に入れているならば、コータはかなりの食わせ者だ。

『陽介は今日も練習なの？』

『うん。そうだよ！
コータの作ったオリジナルの曲も始まるし、これからはもっと忙しくなると思う！』

『そっか…。
楽しそうだね、陽介。
私も嬉しいよ！頑張ってね♪』

出来る限りの笑顔で別れると、
ちょっと無理してる自分に気付いた。

校庭に並ぶけやきの木が風に揺らされて、夏が終わることを知らせる。

『ホントはね、寂しいんだよ…？』

窓の外を通り過ぎる音が、答えてくれた気がした。