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コメント(22)
〜 市川里美さんの絵本 〜
『イーダちゃんの花』 H・C・アンデルセン／原作
角野栄子／文 市川里美／絵 小学館（2004年）
『おそとがきえた！』 角野栄子／文 市川里美／絵 偕成社（2009年）
『うさぎのララ・ローズ』 市川里美／作 講談社（2005年）
最近ご紹介した児童書、『花になった子どもたち』で、市川里美さんの挿絵と出会い、他にも沢山の美しい絵本を出版されていることを知り、さっそく図書館で借りてみました。
市川さんは、1971年よりパリ在住。また世界各地を旅し、さまざまな国の子どもたちのことを描いた絵本も出版されています。今日ご紹介するのは、その中の３冊です。
『イーダちゃんの花』は、H・C・アンデルセンの有名なお話です。
「わたしの花、かれてしまったわ。あんなにきれいだったのに」
イーダは、かなしくなっていいました。すると、学生さんがいいました。
「それはね、ぶどう会にいって、ひとばんじゅうおどっていたからさ。」
その夜、おとなりの部屋をのぞいてみると、おもちゃや人形たちが花とおどっているではありませんか･･･。
『おそとがきえた！』
大きな町の ちいさな家に、おばあさんと猫がすんでいました。
窓からみえるのは、灰色のたてものの かべばかり。
「すてきな おそとが あったらな」
表紙の印象はちょっと暗い感じですが、ページをめくっていくと細やかで美しい絵とストーリーに引き込まれていきます。
『うさぎのララ・ローズ』
ララ・ローズはうさぎのぬいぐるみ。持ち主の女の子におんぶされて、パリのリュクサンブール公園にやって来ましたが、女の子とはぐれて、ひとりぼっちに…。ひろい公園のなか、ふたりは、ふたたび会うことができるでしょうか･･･。
市川さんの作品は絵もストーリーもセンス抜群で、引き込まれてしまいます。プレゼントにもお薦めです。
〜市川里美さんの絵本〜 二回目の紹介です
『リボンちゃんのリボン』 市川里美・作
徳間書店（1999年）
🏝ひろい海のまんなかに、一年中おひさまがてっている島があります。花がさきみだれ、木には、あまいくだものがなり、ちいさな女の子たちは、みんな、かみにリボンをつけています。
どうして女の子たちが、みんなリボンをつけているのかって？
これからそのはなしをしましょう･････。
美しい色彩と、センス抜群のストーリー。豊かなファンタジーの世界がひろがります。
『じゃがいもアイスクリーム？』 市川里美・作
BL出版（2011年）
⛰ルーチョは、アンデスの山の村でお父さんお母さんと暮らしています。
じゃがいもは、たかい山でとれる、たったひとつの食べ物です。あさもひるもばんも、そしておやつも、じゃがいもを食べるのです。
ルーチョは、いちど町でたべたアイスクリームがわすれられません。「むらのおまつりにもアスクリームがあったらなあ…」ルーチョの願いをきいていたアルパカのおかあさんは･････。
『ブラザー イーグル、シスター スカイ』〜酋長シアトルからのメッセージ〜
スーザン・ジェファーズ／絵
徳岡久生＋中西敏夫／訳 JULA出版局（1996年）
＜酋長シアトルは、アメリカ北西部のインディアンの一つの部族の指導者で、尊敬にあたいするおだやかな人物だったということです。
1850年代のなかごろ、ワシントンの政府は、打ちのめされ、つかれはてたかれの部族の民たちの土地を、むりやりに買いあげようとしていました。まさにそのとき、かれは自分自身の部族の言葉で答えたのでした。語り伝えられたことを引用しながら、かざりけのない雄弁さで。＞
空が金で買えるだろうか？雨や風をひとりじめできるだろうか？
母は、わたしにこんな話をした。
この大地にあるものはみな、わたしたちにとって神聖です。
父はわたしにこういって聞かせた。
わたしは知っているよ、木の幹を流れる樹液のことを、血管を流れる自分の血のことを知っているようにな。
わたしらは大地の一部だし、大地はわたしらの一部なのだ･････
酋長シアトルのメッセージは書き写され、伝えられて、今日に至っています。
この絵本は、アメリカではベストセラーを続け、ヨーロッパでも各国語に翻訳され、たくさんの人に愛読されているということです。
先住民族への迫害は、インディアンだけでなく、地球上のいたるところで起こっています。日本人もアイヌ民族を迫害しました。アイヌの人々を、インディアンと同じような目に遭わせたのです。
酋長シアトルのメッセージは、人種をこえて、現代に生きるわたしたちの心に響いてきます。
『鉢の木』 たかし よいち・文 石倉欣二・絵
ポプラ社（2005年）
『鉢の木』は謡曲によって広く知られている物語ですが、上野の国の伝説としても語り継がれ、今も、佐野に住む人たちは心あたたまる郷土の伝説として、大切にしているそうです。
雪ふかい上野の国の、佐野の里の、あるみすぼらしい家の門口に、ひとりの修行僧が立って、一夜の宿をたのみました。しかしその家のあるじである佐野源左衛門常世は、あまりの貧しさを恥じて、泊めるのをことわり、よその里をおしえたのですが、妻の頼みに僧を追いかけて、家へ連れもどしますが、暖をとる薪もなく、修行僧が止めるのも聞かず、三本だけ大切に残していた鉢の木（梅、桜、松）を燃やしてしまいます。
常世は修行僧に、「おちぶれた身になったが、もしひとたび鎌倉に事が起きるようなことがあれば、大事にしまいおいた甲冑を身にまとい、まっさきに馳せ参ずる所存です」と語ります。
修行僧は、「鎌倉におのぼりの折には、おたずねくだされ。幕府へ訴えるための手引きをしましょう」と言い残して旅立ちました。
その年の春、関東八か国の大名、小名に向かって、軍勢を引き連れ、ただちに鎌倉へ馳せ参ずるようにとの、幕府のおふれが出た。常世もそまつないでたちながら心意気さかんに、鎌倉めざしてすすみました。
御殿前の広場に政府の執権がおでましになりました。何と、それは修行僧ならぬ最明寺殿ではありませんか。最明寺殿は、一族に乗っ取られた佐野の郷の領地をもとどおりに常世にさずけ、さらに加賀の国の梅田、越中の国の桜井、上野の国の松枝と、梅、桜、松の名のついた領地を与えました。
「いざ、鎌倉」という有名なことわざは、「鉢の木」から生まれたということです。
常世は実在の人物ではありません。修行僧は、実は北条時頼で、もともとは最明寺入道時頼の諸国めぐり伝説の一つであったものを佐野の伝説として僧侶や土地の人たちが語り伝えたといわれています。
ポプラ社（2005年）
『鉢の木』は謡曲によって広く知られている物語ですが、上野の国の伝説としても語り継がれ、今も、佐野に住む人たちは心あたたまる郷土の伝説として、大切にしているそうです。
雪ふかい上野の国の、佐野の里の、あるみすぼらしい家の門口に、ひとりの修行僧が立って、一夜の宿をたのみました。しかしその家のあるじである佐野源左衛門常世は、あまりの貧しさを恥じて、泊めるのをことわり、よその里をおしえたのですが、妻の頼みに僧を追いかけて、家へ連れもどしますが、暖をとる薪もなく、修行僧が止めるのも聞かず、三本だけ大切に残していた鉢の木（梅、桜、松）を燃やしてしまいます。
常世は修行僧に、「おちぶれた身になったが、もしひとたび鎌倉に事が起きるようなことがあれば、大事にしまいおいた甲冑を身にまとい、まっさきに馳せ参ずる所存です」と語ります。
修行僧は、「鎌倉におのぼりの折には、おたずねくだされ。幕府へ訴えるための手引きをしましょう」と言い残して旅立ちました。
その年の春、関東八か国の大名、小名に向かって、軍勢を引き連れ、ただちに鎌倉へ馳せ参ずるようにとの、幕府のおふれが出た。常世もそまつないでたちながら心意気さかんに、鎌倉めざしてすすみました。
御殿前の広場に政府の執権がおでましになりました。何と、それは修行僧ならぬ最明寺殿ではありませんか。最明寺殿は、一族に乗っ取られた佐野の郷の領地をもとどおりに常世にさずけ、さらに加賀の国の梅田、越中の国の桜井、上野の国の松枝と、梅、桜、松の名のついた領地を与えました。
「いざ、鎌倉」という有名なことわざは、「鉢の木」から生まれたということです。
常世は実在の人物ではありません。修行僧は、実は北条時頼で、もともとは最明寺入道時頼の諸国めぐり伝説の一つであったものを佐野の伝説として僧侶や土地の人たちが語り伝えたといわれています。
『おばあちゃんがいるといいのにな』 松田素子・作 石倉欣二・絵
ポプラ社（1994年・第１刷 2009年・第14刷）
いえのなかに でーんと ひとり
おばあちゃんが いると いい
おばあちゃんは いつも いえに いて
みんなを むかえてくれる
ぼくは おかあさんに おこられると
おばあちゃんの そばに いく
だまって すわっているだけで
なみだが かわくんだ
孫にとって、そして家族にとって、かけがえのない存在のおばあちゃん。
作者の松田素子さんの文章が素晴らしい。それに寄り添う石倉欣二さんの絵も素晴らしい。
「ぼく」のおばあちゃんは、最後に亡くなってしまいます。「おばあちゃんがいるといいのにな」ということばが、胸に迫ってきます。
私も、この本のように、亡き祖母がしてくれたことを、いろいろ思い出しました。それは今もどこかで私を支えてくれています。
本書は、1995年度日本絵本賞、1995年度けんぶち絵本の里大賞を受賞しています。
ポプラ社（1994年・第１刷 2009年・第14刷）
いえのなかに でーんと ひとり
おばあちゃんが いると いい
おばあちゃんは いつも いえに いて
みんなを むかえてくれる
ぼくは おかあさんに おこられると
おばあちゃんの そばに いく
だまって すわっているだけで
なみだが かわくんだ
孫にとって、そして家族にとって、かけがえのない存在のおばあちゃん。
作者の松田素子さんの文章が素晴らしい。それに寄り添う石倉欣二さんの絵も素晴らしい。
「ぼく」のおばあちゃんは、最後に亡くなってしまいます。「おばあちゃんがいるといいのにな」ということばが、胸に迫ってきます。
私も、この本のように、亡き祖母がしてくれたことを、いろいろ思い出しました。それは今もどこかで私を支えてくれています。
本書は、1995年度日本絵本賞、1995年度けんぶち絵本の里大賞を受賞しています。
『ゆずちゃん』 肥田美代子・作 石倉欣二・絵
ポプラ社（1995年 第１刷）
がっこうで ぼくとゆずちゃんの 席は となりどうし。
ゆずちゃんは 大きくなったら「ふうせんやさん」に なりたいという。
はねを いためた 鳥に、ふうせん つけてやるのやて。
けがした ねこにも、つけてやるのやて。
ふうせん つけたら みんなげんきになるのやて。
ゆずちゃんの ふうせんやさんは、せかいじゅうの 子どもに、ふうせんをくばすのやて。
まるい ちきゅうの あっちにも こっちにも、ふうせん ぷかぷか うかばして、
みんなを はげますんやて。
1995年1月17日午前5時46分、阪神淡路地方に最大深度７の激震がおそいました。たいちくんの家も地震に遭い、たいちくんは足をけがしましたが助かりました。ところが、ゆずちゃんは、家の下じきになり、死んでしまいました。
ゆずちゃんと おわかれの日。
みんなが ゆずちゃんの だいすきな ふうせんを もって あつまり、ゆずちゃんのいる 空にむかって ふうせんを とばします。ゆずちゃんの わらい声が きこえたような 気がして、むねが、ほわっと ぬくうなりました。
石倉欣二さんの、終始、悲しみをやさしく包み込んだような柔らかな色合いの絵に、心うたれました。
『けんじ先生』〜宮沢賢治・幸福の授業〜
畑山 博・作 狩野富貴子・絵
PHP研究所（1999年）
著者の畑山博さんは、賢治がどんな先生ぶりだったのか知りたくて、何年も何年も花巻に通い、昔の教え子たちに会いました。
本書は、花巻の農学校での賢治の授業を、詩情ゆたかに再現したノンフィクション絵本です。
賢治の授業は、�猖榲�の幸福�瓩砲弔い董△澆鵑覆嚢佑┐襪發里任靴拭�
今日は、天気がいいから外へ出て「細胞」の授業です。
＜細胞の一つ一つが、記憶を持っている。両親からうけついだ記憶。そのまた親たちからうけついだ記憶。何千年分も。何万年分も、細胞は、その記憶をだいじにもちつづけている。
細胞はあたらしい記憶もためることができる。そしてそれが、何十年もたって、きみたちの子孫の心のなかで、とつぜんある日、よみがえるかもしれない･･････。どうせなら、いい記憶を、細胞にもたせたいよね。＞
お弁当を食べたあとは、川で泳ぎ、実習畑にうつって、うね作りです。授業を終えた帰り道では、星の見つけっこ。その声がいつしか歌になります。先生が作った「星めぐりのうた」です。
『 トントントンを まちましょう 』
あまん きみこ／作 鎌田暢子／絵
ひさかたチャイルド（2011年）
このお話が生まれるきっかけになったことについて、作者はこう語られています。
＜あたたかな春がきてから寒くなり、雪が降りだしたある晩、幼い姉弟は野原に咲いていた花たちのことを心配しました。
「かぜひかないかなあ」「つめたいよねえ」
その時、きかせた小さな話が、この作品の種になっています。遠い日の母子の会話が、つい昨日のように甦ります･････＞
夕方からふりだした雪をみて、お母さんはあわてて、あまざけを作りだしました。
「こんなにいっぱい、だれがのむの？」
みこちゃんがきいたとき、トントントン。ドアをたたく音がしました。
かわいいお客さまがつぎつぎにやってきます。小さいカップにたっぷり入ったあまざけを、みこちゃんはお客さまにはこびます。
おきゃくさまは、寒さにかじかんでふるえていたお花たちでした。みんなはあったまって、げんきをとりもどし、もうだいじょうぶ、と手をふって帰っていきました。
おかあさんがいいました。
「こんやは、まだまだくるでしょう。みみをすまして、トントントンをまちましょう」
つぎは、どんなおきゃくさまがやってくるでしょうか？ 想像するとたのしいですね。
�爐△泙兇鵜瓩箸いΔ里�、いいですね。こころもからだも、芯からあたたまりそうです。
遠い日の、子どものころの自分を思いだしました。あまんさんの二人のお子さまたちのような感受性を、なくさないで持ちつづけられたらいいですね。大人にとっても、絵本はこころの栄養です。
あまん きみこ／作 鎌田暢子／絵
ひさかたチャイルド（2011年）
このお話が生まれるきっかけになったことについて、作者はこう語られています。
＜あたたかな春がきてから寒くなり、雪が降りだしたある晩、幼い姉弟は野原に咲いていた花たちのことを心配しました。
「かぜひかないかなあ」「つめたいよねえ」
その時、きかせた小さな話が、この作品の種になっています。遠い日の母子の会話が、つい昨日のように甦ります･････＞
夕方からふりだした雪をみて、お母さんはあわてて、あまざけを作りだしました。
「こんなにいっぱい、だれがのむの？」
みこちゃんがきいたとき、トントントン。ドアをたたく音がしました。
かわいいお客さまがつぎつぎにやってきます。小さいカップにたっぷり入ったあまざけを、みこちゃんはお客さまにはこびます。
おきゃくさまは、寒さにかじかんでふるえていたお花たちでした。みんなはあったまって、げんきをとりもどし、もうだいじょうぶ、と手をふって帰っていきました。
おかあさんがいいました。
「こんやは、まだまだくるでしょう。みみをすまして、トントントンをまちましょう」
つぎは、どんなおきゃくさまがやってくるでしょうか？ 想像するとたのしいですね。
�爐△泙兇鵜瓩箸いΔ里�、いいですね。こころもからだも、芯からあたたまりそうです。
遠い日の、子どものころの自分を思いだしました。あまんさんの二人のお子さまたちのような感受性を、なくさないで持ちつづけられたらいいですね。大人にとっても、絵本はこころの栄養です。
🖍『あるひあるとき』 あまんきみこ・文 ささめやゆき・絵
のら書店（2020年）
≪第二次世界大戦中、中国の大連にすんでいたわたしには、たいせつなともだちがいました。こけしのハッコちゃんです。
わたしたちはいつもいっしょでした。
でも戦争がおわり日本にひきあげることになり、ハッコちゃんとわたしは･････。≫
あまんさんは、自著の著者略歴（プロフィール）の欄に、いつも「1931年・旧満州生まれ」と書かれます。
“満州は、日本の傀儡の国。私はそこに生まれ育った。子どもの時、暖かい日向の場所にすごし、そこにいるべき筈の人を寒い日陰に追いやっていた･････その自分の存在そのものの罪から逃れることはできない。旧満州と書きつづけているのは、そういう思いである。それを中国東北部と書けば、見えないすり替えがおこる気がする。“ «知らなかったことは免罪符にはならない。知らないことも罪である» と書かれています。（＜あまんきみこセレクション�ァ筺悗△詁�ある時』より）
1931年生まれの著者が、長い年月を経てやっと自身の戦争体験を絵本にされました。どれだけの思いがこの絵本に込められていることでしょう。
最後に書かれた著者の言葉が、心に染みてきます。
≪今、私は深く祈る思いで、この絵本を見送っています。或る時代に生きた幼い子どもの身いっぱいの喜びと哀しみが、あなたの心にすこしでも届きますように。
そしてこの絵本で出会うことができたあなたや、絵本の中のユリちゃんたちのあかるくのびやかな笑顔の未来がいつまでもつづき、ひろがりますように･････≫
のら書店（2020年）
≪第二次世界大戦中、中国の大連にすんでいたわたしには、たいせつなともだちがいました。こけしのハッコちゃんです。
わたしたちはいつもいっしょでした。
でも戦争がおわり日本にひきあげることになり、ハッコちゃんとわたしは･････。≫
あまんさんは、自著の著者略歴（プロフィール）の欄に、いつも「1931年・旧満州生まれ」と書かれます。
“満州は、日本の傀儡の国。私はそこに生まれ育った。子どもの時、暖かい日向の場所にすごし、そこにいるべき筈の人を寒い日陰に追いやっていた･････その自分の存在そのものの罪から逃れることはできない。旧満州と書きつづけているのは、そういう思いである。それを中国東北部と書けば、見えないすり替えがおこる気がする。“ «知らなかったことは免罪符にはならない。知らないことも罪である» と書かれています。（＜あまんきみこセレクション�ァ筺悗△詁�ある時』より）
1931年生まれの著者が、長い年月を経てやっと自身の戦争体験を絵本にされました。どれだけの思いがこの絵本に込められていることでしょう。
最後に書かれた著者の言葉が、心に染みてきます。
≪今、私は深く祈る思いで、この絵本を見送っています。或る時代に生きた幼い子どもの身いっぱいの喜びと哀しみが、あなたの心にすこしでも届きますように。
そしてこの絵本で出会うことができたあなたや、絵本の中のユリちゃんたちのあかるくのびやかな笑顔の未来がいつまでもつづき、ひろがりますように･････≫
〜二俣英五郎さんの絵との出会い〜
『とりかえっこ』 さとうわきこ・作 二俣英五郎・絵
ポプラ社（1978年第１刷 1999年第67刷）
遊びにでかけたひよこは、出会った動物たちと次々になき声のとりかえっこをします。 帰ってきたひよこの声に、お母さんはびっくり！
本書は、第1回絵本にっぽん賞受賞作です。1978年初版以来、版を重ね、今手元にある図書館で借りた本は、1999年第67刷となっています。ずいぶん前に描かれているのに、年月を経ても、まったく古い印象を受けないのが、画家の力量のすごさを語っているように感じられました。
🦊絵本『こぎつねコンとこだぬきポン』 松野正子・作 二俣英五郎・絵
紙芝居『こぎつねコンとこだぬきポン』 松野正子・作 二俣英五郎・絵
谷をはさんだ二つの山に、きつねとたぬきの家族がすんでいました。両方の家は仲がわるく…。友だちになりたいこぎつねコンとこだぬきポンは、お互いに化けて入れ替わることに。
図書館で絵本を予約したつもりが、紙芝居の方を間違って頼んでいました。これがとても良く出来ていて、嬉しいおどろきでした。枚数が多く、少し長いお話ですが、どんどん引き込まれていきました。
二俣英五郎さんは、絵本だけでなく紙芝居の作品も数多く手がけておられて、日本の昔話の絵も、そうでないお話の絵もそれぞれ素敵で、その力量に圧倒されました。
絵をきっかけにして、新しい絵本と、作家に出会え、また導かれていくように世界が広がっていくのが嬉しいです。
『とりかえっこ』 さとうわきこ・作 二俣英五郎・絵
ポプラ社（1978年第１刷 1999年第67刷）
遊びにでかけたひよこは、出会った動物たちと次々になき声のとりかえっこをします。 帰ってきたひよこの声に、お母さんはびっくり！
本書は、第1回絵本にっぽん賞受賞作です。1978年初版以来、版を重ね、今手元にある図書館で借りた本は、1999年第67刷となっています。ずいぶん前に描かれているのに、年月を経ても、まったく古い印象を受けないのが、画家の力量のすごさを語っているように感じられました。
🦊絵本『こぎつねコンとこだぬきポン』 松野正子・作 二俣英五郎・絵
紙芝居『こぎつねコンとこだぬきポン』 松野正子・作 二俣英五郎・絵
谷をはさんだ二つの山に、きつねとたぬきの家族がすんでいました。両方の家は仲がわるく…。友だちになりたいこぎつねコンとこだぬきポンは、お互いに化けて入れ替わることに。
図書館で絵本を予約したつもりが、紙芝居の方を間違って頼んでいました。これがとても良く出来ていて、嬉しいおどろきでした。枚数が多く、少し長いお話ですが、どんどん引き込まれていきました。
二俣英五郎さんは、絵本だけでなく紙芝居の作品も数多く手がけておられて、日本の昔話の絵も、そうでないお話の絵もそれぞれ素敵で、その力量に圧倒されました。
絵をきっかけにして、新しい絵本と、作家に出会え、また導かれていくように世界が広がっていくのが嬉しいです。
≪だるまちゃんシリーズ≫ 〜 あたたかく、そして深い 〜
かこさとしさんの本を続けて読んでいます。（
くわしくは、元気な本棚・読書サロンに掲載しています）
≪だるまちゃんシリーズ≫は何冊も出ていますが、今までじっくり読んだことがなく、これを機会に全てを読もうと思っています。あと3冊ほど残っていますが、読み終えるのがさびしく思えるほど、あたたかいそして深い世界に浸かっています。
『だるまちゃんとうさぎちゃん』『だるまちゃんと とらのこちゃん』などのように、思いっきり楽しい本もありますが、『だるまちゃんとはやたちゃん』『だるまちゃんとかまどんちゃん』『だるまちゃんとやまんめちゃん』などのように、楽しいけど、その底に作者の深い思いが込められた作品もあることに気づかされました。
巻末の［作者のことば］で、その思いを知ることができます。
『だるまちゃんとはやたちゃん』
怪鳥鵺退治の武勇伝の主人公・源の頼政の従者猪早太が、福島の郷土玩具となっていて、その九百年後の子孫はやたちゃんに」、だるまちゃんの相手役になってもらった、ということです。この本には、東日本大震災と福島原発事故の被災された方々への鎮魂と慰霊の心が込められています。
『だるまちゃんとかまどんちゃん』
こちらの絵本も、東日本大震災と津波に被災された方々への鎮魂と慰霊、そして原発事故への警鐘の念が込められています。
岩手、宮城の旧家のカマドの近くには、大きな目玉でにらむ、異様な顔面がかけてあります。家の災難よけ、魔よけとしての火の守り神、すなわちカマド神としてつくられたものだそうです。この本では「かまどんちゃん」として、ままごとに登場します。
『だるまちゃんとやまんめちゃん』
この本のだるまちゃんの相手役は、やまんばの娘「やまんめちゃん」です。昔話に出てくる山姥、山母、仙女は、怖ろしい妖怪が多いが、それは古代の人たちが畏敬してきた山神が垂迹したものだといわれている。伝承される間に、最も重要な自らも自然の一部である自覚や共存共生の精神がうすれ、単なる奇妙な風俗や怪奇惨虐説話となっているのは残念の極み、と語られています。
だるまちゃんは、びょうきのばあちゃんのくすりの草をさがしていた「やまんめちゃん」とであいます。だるまちゃんはネーブルをおみまいに持って、やまをのぼってやまんめちゃんのうちにむかいます。
シリーズをとおしてたのしく、あたたかく、「仲良くする」ことはこんなに素晴らしいことなのだなあと、理屈ぬきで伝わってきます。
『たろうがらす じろうがらす』 かこさとし・作
復刊ドットコム
本書は、1984年・偕成社刊『たろうがらす じろうがらす』を再編集し、2021年5月に新装復刊されたものです。
からすの兄弟、たろうがらすとじろうがらす。
ある雨の日、お母さんがらすにうちのなかで静かに留守番をするように言われますが、雨が雪になって、好奇心おうせいな兄弟はじっとしていられず、外にとびだします。遊ぶこと、遊ぶこと！ その結果は･･････。
お話の内容もさることながら、絵もさすがで、何度見てもいいなあと思います。無駄なものを全て省略して描かれた絵です。引き算の効果の最も素晴らしい例がここにあり、と感じました。
著者による＜あとがき＞も素晴らしく、子どもの成長に本当に必要、大切なことは何かに、気づかされます。
復刊ドットコム
本書は、1984年・偕成社刊『たろうがらす じろうがらす』を再編集し、2021年5月に新装復刊されたものです。
からすの兄弟、たろうがらすとじろうがらす。
ある雨の日、お母さんがらすにうちのなかで静かに留守番をするように言われますが、雨が雪になって、好奇心おうせいな兄弟はじっとしていられず、外にとびだします。遊ぶこと、遊ぶこと！ その結果は･･････。
お話の内容もさることながら、絵もさすがで、何度見てもいいなあと思います。無駄なものを全て省略して描かれた絵です。引き算の効果の最も素晴らしい例がここにあり、と感じました。
著者による＜あとがき＞も素晴らしく、子どもの成長に本当に必要、大切なことは何かに、気づかされます。
『ひなまつりのお手紙』〜おはなし１２か月・３月のおはなし
まはら三桃・作 朝比奈かおる・絵
講談社（2014年）
幼年童話です。
ゆいちゃんは、もと高校の先生で、家中にはりがみがしてあるような厳しいすみおばあちゃんの家へ遊びに行きました。
おばあちゃんは、七段飾りのおひな様の入った古めかしい箱から、まずお雛様の小さな道を取り出し、ゆいちゃんは、ひなだんに並べていきます。初めて見るお道具について、おばあちゃんはいろいろ教えてくれます。五人囃子、三人官女と並べていき、最後はお内裏様です。
ゆいちゃんは、七段飾りのおひな様飾りの重箱の中身が気になっていました。おばあちゃんの猫のシューが眠っているのを確認したゆいちゃんは……。
朝比奈かおる氏による挿絵も美しく丁寧に描かれています。
図書館の児童書室に行くと、季節の行事などの特設コーナーがあります。今は11月でもあり、クリスマス関係の絵本が並ぶようになりました。
普通は一つのコーナーで収まる本が、今回は二つのコーナーが用意されていました。行事関係の絵本では、クリスマスの本がダントツ多いのです。それに対して、日本の行事絵本の少ないことよ･････。ひな祭り絵本は、その中でも本当に少ないのです。ちょうど本書と出会い、是非紹介したいと思いました。プレゼントにもお薦めです。
伝えたい、守りたい日本の心を。そんな願いのこもった絵本・児童書がもっと出版されないものでしょうか。
300年まえから伝わる
『とびきりおいしいデザート』 エミリー・ジェンキンス・文
ソフィー・ブラッコール・絵
あすなろ書房（2016年）
300年まえから伝わる、西洋文明における最古のデザートのひとつともいわれるお菓子があります。フルーツ・フールという名前で呼ばれ、泡立てた生クリームに、ブラックベリーやラズベリー、グーズベリーなどをつぶして、砂糖を入れたものを混ぜ合わせて作ります。
この絵本では、300年前、200年前、100年前、現代と、４つの時代の４つの家族が、それぞれの時代のやり方でフルーツ・フールを作ります。
この本の完成までに、作者、画家は、それぞれの時代のデザート作りの材料の入手方法、使われていた道具について、家具や、登場人物が身に付けていた衣類、靴などに至るまで、時間をかけて調べ、丁寧な本づくりがされています。
身近なデザート作りをとおして、当時の時代のことを色々知ることができ、時代ごとの登場人物に想いを馳せることができるのです。とびきり素敵な絵本です。
『さいしゅうれっしゃのあとで』 市川宣子・作 柿本幸造・絵
ひさかたチャイルド（2008年）
市川宣子さんの季節感あふれるすてきなお話と、柿本幸造さんのほのぼのとした温かみのある絵がとてもいいなあと思いました。（『どうぞのいす』と出会って以来、柿本幸造さんの絵が大好きになりました。）
秋のおわりの夜のこと。山のおくの小さな駅で、今日も駅長さんは、最終列車をみおくりました。
ところが、とおくから、列車の音がちかづいてきて･･･。不思議な列車はつぎつぎにやってきます。それは、冬をとどける列車でした。
子どもたちはきっと、列車がつぎつぎとやってくるたびに、わくわくして、冬の訪れを待つ気持ちで心をいっぱいにふくらませることでしょう。
ひさかたチャイルドからは他にも、柿本幸造さんの絵による絵本がたくさん出版されています。
『ぼくのともだちガムーサ』 市川里美／作・絵
BL出版（2023年6月）
旅する絵本作家、市川里美さん。その作品には、今同じ時間、同じ地球の上で、自分たちとは違う暮らしをしている人たちがたくさんいることを知ってほしい、という市川さんの思いがこめられています
『ぼくのともだちガムーサ』のお話の舞台はエジプトです。
ナイル川のほとりで畑仕事をする少年アジーズ。水牛のガムーサに仕事を手伝ってもらいたいのですが、ガムーサが逃げ出し･････ 畑仕事に水牛が活躍しているのを見て、暮らしの中で人と動物との深いかかわりが今もなお続いていることに感動し、このお話が生まれたということです。
『しっかりママにつかまって！』 市川里美／作・絵
BL出版（2022年6月）
ボルネオ島に生きるオランウータンの親子と人間の女の子の交流を描いた作品です。
ボルネオへの旅を計画していて、コロナ禍のため行けなくなってしまった著者は、コンピューターの前に座ってボルネオに住むオランウータンに関するビデオを見ることにしました。そこには、それまで知らなかった国の状態、人々の暮らし、住む動物たちの実態が映し出されました。
オランウータンは、ボルネオ島とスマトラ島の熱帯林に生息する大型類人猿です。「オランウータン」はマレー語で「森の人」という意味です。その名の通り、オランウータンの生活に森は欠かすことのできないものなのです。しかし、今、オランウータンはその数を大きく減らしています。※スマトラ島では、過去75 年あまりの間に、個体数が80% も減少。ボルネオ島でも、過去60 年の間に個体数が半分になったと考えられています（2009 年時点）。その最大の理由は、森林伐採などによる森の破壊です。密猟や密輸もあとを絶たず、人間たちの身勝手な振る舞いが、オランウータンの生存を脅かしています。
この作品には、この愛らしい動物のことをもっとみんなに知ってもらいたい････そしてこれ以上、人間はかれらの生きる場所を奪ってはならないという、作者の思いがこめられています。
BL出版（2023年6月）
旅する絵本作家、市川里美さん。その作品には、今同じ時間、同じ地球の上で、自分たちとは違う暮らしをしている人たちがたくさんいることを知ってほしい、という市川さんの思いがこめられています
『ぼくのともだちガムーサ』のお話の舞台はエジプトです。
ナイル川のほとりで畑仕事をする少年アジーズ。水牛のガムーサに仕事を手伝ってもらいたいのですが、ガムーサが逃げ出し･････ 畑仕事に水牛が活躍しているのを見て、暮らしの中で人と動物との深いかかわりが今もなお続いていることに感動し、このお話が生まれたということです。
『しっかりママにつかまって！』 市川里美／作・絵
BL出版（2022年6月）
ボルネオ島に生きるオランウータンの親子と人間の女の子の交流を描いた作品です。
ボルネオへの旅を計画していて、コロナ禍のため行けなくなってしまった著者は、コンピューターの前に座ってボルネオに住むオランウータンに関するビデオを見ることにしました。そこには、それまで知らなかった国の状態、人々の暮らし、住む動物たちの実態が映し出されました。
オランウータンは、ボルネオ島とスマトラ島の熱帯林に生息する大型類人猿です。「オランウータン」はマレー語で「森の人」という意味です。その名の通り、オランウータンの生活に森は欠かすことのできないものなのです。しかし、今、オランウータンはその数を大きく減らしています。※スマトラ島では、過去75 年あまりの間に、個体数が80% も減少。ボルネオ島でも、過去60 年の間に個体数が半分になったと考えられています（2009 年時点）。その最大の理由は、森林伐採などによる森の破壊です。密猟や密輸もあとを絶たず、人間たちの身勝手な振る舞いが、オランウータンの生存を脅かしています。
この作品には、この愛らしい動物のことをもっとみんなに知ってもらいたい････そしてこれ以上、人間はかれらの生きる場所を奪ってはならないという、作者の思いがこめられています。
『おばあちゃんのおせち』 野村たかあき／作・版画
佼成出版社（2008年）
この絵本は おばあちゃんが孫のきりちゃんに伝える、季節の料理のシリーズ（全５冊）の中の１冊です。核家族が増え、昔のようにおじいちゃん、おばあちゃんと同居の家庭が本当に少なくなってしまいました。このシリーズが、日本で古くから伝えられてきた伝統の精神、智恵の大切さ、素晴らしさに、子どもたちが気づき、受け止め、育んでいってくれるきっかけになれば、と思いました。
このシリーズが野村たかあきさんの作品との初めての出会いでしたが、版画は、家族の生活が温かく描かれていて親しみやすく、お話も無駄がなく、大好きになりました。
シリーズの他の作品の題名は以下のとおりです。
『おばあちゃんのななくさがゆ』『おばあちゃんのえほうまき』
『おばあちゃんのひなちらし』『おばあちゃんのおはぎ』
佼成出版社（2008年）
この絵本は おばあちゃんが孫のきりちゃんに伝える、季節の料理のシリーズ（全５冊）の中の１冊です。核家族が増え、昔のようにおじいちゃん、おばあちゃんと同居の家庭が本当に少なくなってしまいました。このシリーズが、日本で古くから伝えられてきた伝統の精神、智恵の大切さ、素晴らしさに、子どもたちが気づき、受け止め、育んでいってくれるきっかけになれば、と思いました。
このシリーズが野村たかあきさんの作品との初めての出会いでしたが、版画は、家族の生活が温かく描かれていて親しみやすく、お話も無駄がなく、大好きになりました。
シリーズの他の作品の題名は以下のとおりです。
『おばあちゃんのななくさがゆ』『おばあちゃんのえほうまき』
『おばあちゃんのひなちらし』『おばあちゃんのおはぎ』
『トットちゃんの15つぶのだいず』 黒柳徹子・原案
柏葉幸子・文 松本春野・絵
講談社（2023年7月）
女優の黒柳徹子さんが自分自身の小学生時代をえがいた『窓ぎわのトットちゃん』は、世界で2500万部以上のベストセラーとなりました。
この絵本は、『窓ぎわのトットちゃん』では描かれなかった、トットちゃんのもうひとつのお話です。
トットちゃんの小学校時代は、日本が戦争をはじめた時代でもありました。
食べるものがなくなっていきました。だいすきなパパも兵隊さんになって、家からいなくなりました。たのしかったトモエ学園のお弁当の時間、あまいキャラメル、家族そろって、安心で、うれしかった毎日から、いろいろなものがなくなっていきます。
そして、ある日、とうとう一日の食べものが、炒った大豆15つぶだけになってしまいました。トットちゃんは、15つぶをいつ食べるか、悩みに悩んで……。
トットちゃんの等身大の戦争体験です。
松本綾乃さんは、いわさきちひろさんのお孫さんにあたります。つらい状況にあっても、希望をうしなわないでひたむきに生きるトットちゃんにぴったりの、やさしい絵に救われます。読み聞かせにもぴったりですし、漢字には全部フリガナがうたれていて、小さなお子さんにも読みやすくなっています。
柏葉幸子・文 松本春野・絵
講談社（2023年7月）
女優の黒柳徹子さんが自分自身の小学生時代をえがいた『窓ぎわのトットちゃん』は、世界で2500万部以上のベストセラーとなりました。
この絵本は、『窓ぎわのトットちゃん』では描かれなかった、トットちゃんのもうひとつのお話です。
トットちゃんの小学校時代は、日本が戦争をはじめた時代でもありました。
食べるものがなくなっていきました。だいすきなパパも兵隊さんになって、家からいなくなりました。たのしかったトモエ学園のお弁当の時間、あまいキャラメル、家族そろって、安心で、うれしかった毎日から、いろいろなものがなくなっていきます。
そして、ある日、とうとう一日の食べものが、炒った大豆15つぶだけになってしまいました。トットちゃんは、15つぶをいつ食べるか、悩みに悩んで……。
トットちゃんの等身大の戦争体験です。
松本綾乃さんは、いわさきちひろさんのお孫さんにあたります。つらい状況にあっても、希望をうしなわないでひたむきに生きるトットちゃんにぴったりの、やさしい絵に救われます。読み聞かせにもぴったりですし、漢字には全部フリガナがうたれていて、小さなお子さんにも読みやすくなっています。
『まほうのおまめ』〜 だいずのたび 〜
松本春野／文・絵 辰巳芳子／監修
文藝春秋（2020年）
辰巳芳子さんは、戦争の時代を生きた経験から、米と大豆があればなんとか生きていくことができる。この国が困窮したときに、豆を播ける人間を育てたい、と2004年に「大豆100つぶ運動」を始められました。今では、全国の小中学校や農業高校に活動が広がり、３万人を超える子どもたちが大豆をまき、育てています。
日本の大豆の自給率は2016年地点で７パーセントと、大変低い。
増産目的ではなく、豆を播ける子どもを育てておく。人間を育てておくための活動が「大豆100つぶ運動」です。
大豆はまほうのおまめです。
おまめのたねは おまめなの
たべられるし うえられるのよ
おばあちゃんは おしえてくれた
おとうふ なっとう しょうゆに おみそ･････
この絵本はふしぎなおまめと旅するものがたりです。
本書を知って大変嬉しく思いました。まさに食育絵本の決定版といえる本です。
本書は、≪元気で生きる≫の欄でもご紹介しています。
『あたたかい木』 くすのきしげのり・作 森谷明子・絵
佼成出版社（2008年）
≪なぜ、この木はあたたかいのだろう。
どうして、ここにあるのだろう。
心の中まであたたかくなるのは、なぜだろう。
「あたたかい木」を見つけた若い植物学者は、
あたたかい木を研究して、
世界じゅうから注目される学者になった自分のすがたを思いうかべた。
しかし、あたたかい木にいだかれたおだやかな時の流れの中で、
若い植物学者の心は、しだいに変わっていく…･･。≫
小学校中学年くらいからとありますが、大人にとっても、深く心にひびく内容の絵本です。プレゼントにもお薦めしたい本です。
本書の他に、松本春野さんの絵で、星の環会からも出版されているようです。
以前に『おこだでませんように』という絵本を読んだことがありましたが、くすのきしげのりさんの作だということまでは覚えていませんでした。おそまきながら、本書との出会いが、作者の本の創作への思いを知る本当のきっかけになりました。
他の本も続いて読んでいるところです。はらはらする場面もありますが、読後ほっとして、なかよくするっていいな、すてきだな、と心があたたまります。『おこだでませんように』も、もう一度読み返してみたいと思っています。
『草原の少女プージェ』 関野吉晴・著
小峰書店（2006年）
1993年の秋、アフリカへむかう長い旅の途中、著者は一人の少女に出会いました。
馬にまたがって牛を追っていたのは、おさない女の子プージェでした。みごとな手綱さばきで、目元がきりっとしています。小さい女の子がひとりで家畜の世話をしているのを見たのは初めてです。
聞けば、プージェは6歳だといいます。なにかわけがあるのかもしれない。著者はプージェの家をたずねることにしました。
プージェのゲルには、おじいさんとおばあさん、プージェのいとこがいました。おとうさんは出稼ぎに行ったまま行方がわからなくなってしまいました。お母さんは盗まれた馬を探して旅に出ています。おじいさんは病気で寝たきりです。働き手はおばあさんしかいないので、プージェはおばあさんの手伝いに大忙し。家族のりっぱな働き手なのです。
お母さんが帰ってきました。馬は見つからないままですが、家畜のえさとなる草をもとめて引っ越す日がせまっていたからです。
2000年3月、著者は再びプージェのゲルをたずねました。おじいさんは亡くなり、お母さんも落馬事故で命を落としていました。プージェは小学校に通います。
2005年7月、著者はモンゴルに向かいました。プージェたちとの再会を楽しみに。
ところが、プージェは5月に交通事故で亡くなったというのです。写真では、おばあさんを助けてけなげに働くプージェの明るい笑顔が、印象的だったのに、何ということでしょう。
社会の変化がモンゴルの人たちに及ぼす影響についても、巻末に記されています。
社会主義から自由主義への変化によって、急激に自動車が増え、道路の整備が追いつきません。まっすぐにのびた草原の道を、自動車が猛スピードでびゅんびゅん飛ばします。プージェのように交通事故にまきこまれる人もいます。
プージェという少女の笑顔を忘れないでおぼえていてほしいと願い、発信します。
関野 吉晴さんは、日本の探検家・人類学者・外科医。武蔵野美術大学名誉教授。1999年植村直己冒険賞、2000年旅の文化賞。生年月日1949年1月20日
1993年、アフリカに誕生した人類がユーラシア大陸を経て、南米大陸で拡散していった軌跡を逆からたどる「グレートジャーニー」へ旅立ち、2002年にゴール。計5万キロにもなる旅の様子はテレビでも放映され、多くの感動をもたらしました。その後、2004年にスタートさせた「新グレートジャーニー 〜日本列島へやってきた人々〜」は、2011年6月に完遂。
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