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Invitation card for Mazeコミュの11th card;下山国鉄総裁轢死事件

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ノックスの十戒

サッカーにおけるオフサイドや野球のボークが反則となるようにミステリ(推理小説)の
世界においても禁じ手と呼ばれるものが存在している。
なかで最も有名なのが20世紀初頭に活躍したイギリスのミステリ評論家ノックスが
定めた『十戒』であろう。

ミステリファンであれば1度は耳にした事があるだろうが、ミステリに馴染みの薄い
読者諸氏のために内容を簡単に紹介しておこう。

01.犯人は小説の最初の方に登場していなければならない。
また読者が疑う事の出来ない人物が犯人であってはならない。
02.犯人追及の方法に超自然の力を用いてはならない。
03.秘密の通路や秘密の部屋を用いてはならない。
04.科学的に未確定の薬物や著しく特異な薬物を用いてはならない。
05.中国人を登場させてはならない。
06.偶然の発見や探偵のヤマ勘によって事件を解決してはならない。
07.探偵自身が犯人であってはならない。
08.読者の知らない手掛かりによって事件を解決してはならない。
09.ワトスン(事件を説明する)役は自分の判断を包み隠さず読者に知らせなくては
  ならない。
10.双生児や変装による2人役はあらかじめそれを匂わせなければならない。

05の中国人を登場させてはならない(当時イギリスでは中国人は謎の術を
使うと思われていた為)以外については、いずれも指摘するとおりとも
言えるだろう(もちろん綾辻行人の館シリーズのように例外はあるが)。

とくに01.犯人は小説の最初の方に登場していなければならない、02.犯人
追及の方法に超自然の力を用いてはならない、04.科学的に未確定の薬物や
著しく特異な薬物を用いてはならない、06.偶然の発見や探偵のヤマ勘によって
事件を解決してはならない、08.読者の知らない手掛かりによって事件を解決
してはならない等は順守してほしいルールと言えるのではないだろうか。

二重、三重の密室といった大掛かりな謎が提示され、登場人物は全て完璧な
アリバイがあると書いておきながら最後の最後になって突然アリバイを持たない
人物が登場し、「犯人はそいつだ」などと探偵が訳知り顔で指摘しても到底納得
できるものではないだろう。

同様に凶器となった毒薬が特定できないといった謎がメインで展開されている
にもかかわらず、その凶器自体が科学的に未確定の薬物や著しく特異な薬物で、
そんな薬品見た事も聞いた事もないとなれば、やはり興ざめしてしまう。

さらに証拠も何も提示されないまま、いきなり探偵が偶然の発見やヤマ勘で
事件を解決してしまったり、「そんな事実聞かされてないぞ」といった手掛
かりが唐突に出てきてしまうのでは、もはや推理小説の体を成さない事は
改めて言うまでもない(まぁTVで放送される2時間サスペンスの中には、そのよ
うな種類のモノがあきれるほど氾濫しているが、あんなモノはミステリでも何でも
ないので、ここでは敢えて言及しないが……)。

ただ本格ミステリと言われる作品においてもノックスの十戒を破った名作が多い
ことは事実であり、とくに03.秘密の通路や秘密の部屋を用いてはならない
については綾辻行人の館シリーズのように敢えて秘密の部屋などを設ける事で
作品の質を高めているミステリも少なくない。

もちろん実際に起きる事件については、これらのルールが存在しない事は
当然であり、それゆえ迷宮入りもしてしまうのだが、数ある迷宮事件の中
には本格ミステリ顔負けのトリックが使用されたのでは?と思われる事件も存在
している。じつは、今回紹介していく『下山国鉄総裁轢死(れきし)事件』も
そんな性質を有する代表的ケースなのである。

突然の失踪・不可解な行動

戦後日本における不可解なミステリの1つとして名を残すこととなる『下山
国鉄総裁轢死事件』が発覚したのは1949(昭和24)年7月6日の事であった。

この日早暁。同年6月1日に初代国鉄総裁に就任したばかりの下山定則氏が
常磐線の下り線路上で轢死体(れきしたい)として発見されたのである。

この事件については数多くの謎が現在に至るまで解明されていないのだが、
その最たるものと言えるのが死体解剖における見解の相違。

下山氏の死体は頭部、胴体、右腕、左足、右足首に切断された跡が見られるなど
凄惨を極めていたのだが、後に2度に渡って行われた死体解剖(東京大学法医学
解剖室と名古屋大学法医学解剖室が担当)所見において、これらの切断は生前に
なされたもの、死後に出来たものと完全に違う結論がそれぞれに出されている。

これだけでも十分なミステリと言えるのだが、警察と検察が自殺と他殺の両説に
分かれるなど捜査も混迷を極め、結局、捜査自体も事件発生からわずか半年で
終了するなど不透明なまま幕を閉じている。

ただ当時は大量のリストラを敢行した国鉄(現JR)を舞台として、この『下山国鉄
総裁轢死事件』だけでなく、いずれも不可解な『三鷹事件』『松川事件』が
相次いで発生しており、捜査に関して何らかの圧力が加わったのではないか、
という指摘もされている。

それはさて措き、まずは『下山国鉄総裁轢死事件』の経過について辿って
いこう。実はここからがこの事件における最大の謎とされる部分なのである。


事件前日の7月5日午前8時20分。いつものように専用車で東京上池上の自宅を
出た下山総裁は御成門近くまで来た時、「佐藤(後の佐藤栄作首相)さんの所へ
寄るんだった」とつぶやいたという(大西運転手証言)。

しかし大西運転手が「引き返しましょうか?」と応えると「いや、いい」と
断わっている。その後、下山総裁を乗せた車は八重洲にあった国鉄本社へと
向かっているが、東京駅ロータリー付近で下山総裁が「買い物をしたい。三越へ
行ってくれ」と発し車は日本橋へと向かっている。

しかし、まだ開店前だった為に運転手が「戻りますか?」と尋ねたところ、
1度は「うむ」と応えたものの、突然「神田駅に回ってくれ」と言い、またしば
らくすると再度「三越本店へ行ってくれ」と命じたという。

その後、千代田銀行(現・東京三菱UFJ銀行)本店前で1度下車した後(銀行
からは約20分で戻っている)、三越へ着くと「5分ぐらいで戻るから」と言い
残し、そのまま姿を消している。

当日午後5時にはNHKラジオが下山総裁の行方不明をニュースで報道。
翌6日午前0時26分。常磐線の最終列車を走行させていた運転手から
「東武伊勢崎線のガード下付近で轢死体を見た」という連絡があり午前
1時には国鉄関係者が現場で遺体を発見。同4時には下山総裁の秘書等
の証言で遺体が下山総裁である事が確認されている。

その際、遺体の衣服についても検証されているが、灰色のスーツには汚れ、破れ
等は一切無かったが、Yシャツ、ズボン、下着は破れており黒い油(その後、糠油と
判明)が付着していた。また現場からは下山総裁を轢(ひ)いたとされる逆方向
から30mにも及ぶ血痕が見つかったほか、現場付近にあったロープ小屋の入口にも
下山総裁と同じ血液型の血痕(けっこん)が大量に発見されている。

この血痕が物語る事実だけを見ても他殺を裏付けるに十分と思われるが、
自殺説を採る者は「彼は血を流しながら現場に向かった」と強弁したという
が、さらにその後の捜査で不可解な事実が次々と判明している。

捜査当局では下山総裁が失踪してから遺体として発見されるまでの足取りを
追っているが、何と20人以上もの人たちが下山総裁の足取りを時系列的に証言
しているのである。当時TVが普及していなかった事は言うまでもなく一般市民
が下山総裁の顔を知る事はなかったにもかかわらず、である。

下山総裁は2人いた……

それらの証言によると10時前に三越へ入った下山総裁らしき人物は10時
30分に同店でZippoのライターにオイル注入を頼み、11時30分には浅草行きの地下
鉄に乗っていたという。

さらに12時40分には東武鉄道五反田駅で構内から数多くの旅館の看板が
見えているのにもかかわらず、「この近くに旅館はないか」と駅員に尋ね、
14時頃には五反田駅近くの末広旅館に現れ、「16時まで休ませてくれ」と
チップを渡したという証言も得られている。

ただ、この人物はタバコも吸わず、出されたお茶にも全く手をつけないまま
旅館を後にしている。
さらに18時過ぎには轢死体が見つかった現場の線路付近で物思いにふける
下山総裁らしき人物が目撃されている。

その一方で佐藤栄作首相の元秘書官からは「5日午前11時頃、国会議事堂
付近を走っていた車の中に2〜3人の男に挟まれて座っている下山総裁を
見た」という全く別の証言も得られている。

これらの証言が全て信ずるに値する物であると仮定するなら(少なくとも
20数人の一般市民については偽証した所で何のメリットもなく証言自体は信憑
性がある蓋然性が高い)、そこから導き出される結論はただ1つしかない。
事件前日から当日にかけて、下山総裁は2人いたという事である。

おそらく20数人が目撃した下山総裁らしき人物の方がニセ者であった
のだろう。三越でライターにオイルを注入したにもかかわらず、旅館でタバコを1本も
吸わず、お茶にも手をつけなかったのは、指紋や唾液(だえき)から本人で
ない事が判明する事態を恐れたのに違いない。

遺体の上着が全く汚れていなかったのに対しYシャツや下着などが油で汚れ
破れていたのはYシャツ姿で監禁された後、暴行を加えられた事を物語ってい
ると思われる。

切断面については列車に轢かせる前提であれば、わざわざ生前に切断する
必要はなく死後切断説が妥当であろう。
では犯人は誰なのか?

偽者をわざわざ用意し証言を得られやすい行動を取らせるなど犯行グループが
綿密(めんみつ)な計画を立てていた事は容易に推察できる。

下山総裁を始め当時の国鉄首脳陣に反感を抱いていた国労関係者に疑惑が
寄せられた事もあったが、ここまでの計画を実行できたかは甚だ疑問である。
だとすれば捜査を不透明なまま半年あまりで終了させる力を持つ人物なり
グループが介在していたと考えるのが妥当であろう。
ただそれがGHQだったのか、日本政府関係者だったのかは、やはり謎として
残るのだが。
お盆を迎えた今、下山総裁の霊は何かを訴えているのだろうか……。

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