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Invitation card for Mazeコミュの14th card;日航機もく星号墜落事故

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ケータイ小説が定着し多くの読者を獲得している一方、ほとんどの人の目に
触れる事のない書物も数多く存在している。

その代表例と言えるのが『第一線』という小雑誌であろう。『第一線』
なる小雑誌は警察庁刑事局刑事企画課が編集している物で全国に約2万人
いるとされる刑事たちに有料で限定配布されている。

筆者は後に冤罪である事が確定した宮城県の松山町事件に関する取材の際、
事件の当事者から直接見せられた事があるが、この『第一線』には実際に
捜査に当たっている刑事が自分の取り扱った事件についてまとめたリポート
などが掲載されており、なかなかに興味深い物であった。

もちろん本職の物書きではないので文章は決して上手いとは言えない
(それでも日夜、容疑者を相手に調書をとっている為か、そこらの二束
三文のライターよりは上手い)のだが、世間に出る事のない捜査過程における
苦労話なども盛り込まれ、いわゆる社会派と呼ばれる推理小説よりはかな
り面白く、何よりドキュメントだけに相当な迫力をたたえている。

このようなドキュメンタリー・タッチの犯罪物はさて措き、犯罪を扱う読み物である
推理小説は2つのジャンルに大別されている。

1つは今あげた社会派と呼ばれるもので、何度も映画化やテレビ化が繰り返
されている『点と線』『砂の器』などで知られる松本清張の作品が代表
的な作品と言えるだろう。これらの作品に目を通した経験を有する読者
ならばお分かりの事とは思うが、社会派と呼ばれる作品群は等身大の刑事
たちが執拗なまでの現場検証や聞き込みなどを繰り返し証拠と証言をかき
集めては地道に事件を解決していくもので、秀でた推理力を持つ名探偵も
登場しなければ、奇抜なトリックが用いられることもない。

いわば人間が持つ情念にスポットを当てた感が色濃く、推理する楽しみは欠如
していると言わざるを得ない。

これら社会派の対局に位置するのが本格派と呼ばれるジャンルの推理小説で、
海外の作家ではエラリー・クインやディクスン・カー、日本で言えば名探偵の代名詞である
明智小五郎を生んだ江戸川乱歩、金田一耕助の産みの親、横溝正史などが代
表と言えるであろう。

ただ残念な事に70年代の日本において社会派が大きなブームとなって以降、
人間が描けていないという理由で推理小説界では本格派を軽視する風潮が
続く事となってしまう。本格派マニアの筆者などは忸怩(じくじ)たる思いでい
たのだが、その唾棄すべき潮流を打破してくれたのが1987年『十角館の殺人』
で鮮烈なデビューを飾った綾辻行人である。

本格派マニアならずとも、その面白さに一気に読み終えてしまうであろう『十角
館の殺人』冒頭、こんなセリフがある。

「一時期日本でもてはやされた社会派式のリアリズム云々は、もうまっぴらなわけ
さ。1DKのマンションでOLが殺されて、靴底を擦り減らした刑事が苦心の末、愛人だっ
た上司を捕まえる。やめてほしいね。汚職だの政界の内幕だの、現代社会の歪み
が生んだ悲劇だの、その辺も願い下げだ」

また綾辻行人の代表作でもある『霧越邸殺人事件』においても、「清張ですか。
(中略)あの手のやつにはまるで食指が動かんのですよ」というセリフが見受けら
れる。

これらのセリフだけでも綾辻行人が抱いてきた本格派への渇望が十二分なまで
に感じられるのだが、それは本格派マニアの声無き声を代弁した物とも言えるで
あろう。推理小説における醍醐味は何を置いても推理するという行為の過程に
おいて生じる愉悦を感じる事に他ならない。

もちろん『事実は小説より奇なり』というけだし名言のとおり、実際に起きた
事件の中にも推理する喜びを感じさせてくれるケースもある。
たとえば、もく星号の場合……。

繰り返された誤報の謎

戦後、日本において民間航空機による定期運行が開始されたのは1951(昭和26
年)10月25日。東京=大阪=福岡という航路であり、この際1番機としてフライトに
当たったのが半年後に大惨事にみまわれる事となるもく星号であった。

事故が発生したとされるのは1952年4月9日。後に発見された現場などから伊豆
大島・三原山外輪山中腹に墜落したもく星号は完全に大破。搭乗していた37人
全員が死亡している。

死亡した乗客はいずれも大会社の社長や重役、人気を博していた芸能人などで
あったが、それもそのはず当時の東京=福岡間の航空料金は大卒の初任給と同
額の6,000円という大変高価な物であった。

それはさて措き、もく星号が墜落してから発見されるまでには、じつは幾多もの
謎が残されている。時系列的に追っていこう。

大阪経由福岡行きのもく星号は小雨が落ちる午前7時34分に羽田飛行場を飛び
立っている。運行予定によれば千葉県館山上空にあるチェックポイントを通過した後、
大島、浜松へと向かう事になっていたのだが、館山通過直後、もく星号からの連
絡が途絶えたのである。

この事態を重く受け止めた日本航空と海上保安庁は直ちに捜索を開始している
が、もく星号に関する情報が迷走を始めたのはこの頃からであった。

日本側同様捜索に当たっていた米軍から航空庁板付分室に最初の情報がもたら
されたのが午後3時15分。「静岡県浜名湖南西16kmの海上に遭難機を発見。米軍巡
視艇により救助が開始された」という内容であった。

しかし、これを溯(さかのぼ)ること15分前の午後3時には航空庁が「横田の米軍
基地からの通信によれば日航機は静岡県舞阪沖北緯34度35分、東経137度30分の
地点で遭難した。目下、海上保安庁の巡視船と名古屋の空軍基地から飛行機が現
場に向かっているが、濃霧の為、機体は発見していない」と発表している。

さらに3時40分には国警静岡県本部が「米軍捜索機が浜名湖西南16キロの海上で
遭難機を発見。米軍救助隊が乗客、乗員全員を救助した。なお救助の時刻、救助隊
の入港する場所は不明」と発表しているのだ。

3時の発表を除けば、いずれも朗報と言える物だっただけに安否を気遣っていた
関係者の全てが安堵の息を漏らした事は言うまでもないであろう。が、胸を撫で
下ろしたのはつかの間の事であった。遭難者を全員救助したはずである米軍掃
海艇2隻が情報の発信源である米軍当局に生存者は1人もいないと報告した旨
を知る事になり、それまでの救助情報全てが誤報だった事が判明してきたので
ある。海上保安庁では巡視船を出し、舞阪沖の調査を徹夜で行っているが、結局
何の手掛かりも得られる事はなかった。

もく星号が発見されたのは翌10日。前日とは打って変わった晴天の基に行われ
た捜索で日航機てんおう星号が大島三原山噴火口の東方約1km、海抜2,000フィート
地点でバラバラになっているもく星号の機体を発見したのである。当然のように
乗客・乗員は全員死亡していた。

以上が、もく星号遭難から発見までの経緯であるが、なぜ米軍が誤報を流し続
けたのか、という大いなる謎が浮上してくるのではないだろうか。

もく星号の機長、副操縦士は両名ともアメリカ人で共にノース・ウエスト航空のパイロットで
あった。アメリカによる占領政策が敷かれていた当時、日本の航空活動は禁止され
ており、GHQ(連合軍総司令部)の指示のもと1951年に日本航空は設立されてい
るが、日本が携わったのは営業だけであり、運行はノース・ウエスト社が担っていた。

事故を起こした機長はアメリカで8.000時間のフライト経験があるベテラン、副操縦士は
既に同コースをフライトした経験があり、事故原因については時限爆弾による墜落説、
乗客の中にいたただ一人の女性がダイヤを密輸しており、このダイヤを奪う為に
爆発させたといったダイヤ強奪説、機長が酩酊した末の操縦ミス説など様々な憶測
を呼んでいる。

ただし、強奪する為に爆発させたのでは強奪した者までが飛行機事故で死亡し
てしまい、論じるに値しないのは当然として、時限爆発が発見される事もなけ
れば、機長が酩酊していたという証拠を掴む事も出来なかったのである。

……隠蔽(いんぺい)された事実

これらの説の真偽はさて措き米軍は何故誤報を流す必要があったのだろう。
事故説の中には米軍の管制塔が飛行に関する間違った指示を出してしまった
為、これを隠す意味で誤報を流したのでは、と推測する物もあったが、前述した
とおり当時の日本は米軍の占領政策下にあり、たとえ実際にミスがあったとして
も、知らぬ存ぜぬを押し通せる立場であった為、このミス説は真相ではないであ
ろう。とすれば、事態はもっと深刻だったのではないだろうか。

このもく星号墜落事故から20年後、社会派推理小説で知られる松本清張が『一
九五二年日航機「墜落」事件』(角川文庫)という著書をしたためている。この中
で清張は、もく星号は三原山に激突したのではなく朝鮮戦争の前線から戻った
米軍の戦闘機が仮想敵国の戦闘機に見立てて撃墜した、というストーリーを展開させ
ている。

事故の可能性が低い以上、清張の推理は当たらずと言えども遠からず物と言え
るのではないだろうか。
 
ただし、清張が展開したストーリーである仮想敵国の戦闘機に見立てたと考えるより
は、占領下である日本領空で、敵機を見たと錯覚し、米軍機が誤爆してしまったの
が真相だったのではないかと筆者は考えるのだが、関係者のすべてが死亡してい
る現在においては、すべてを推測するしか術はない……。

コメント(2)

面白いですね!

松本清張って、犯人は「GHQであろう」だったり、
「外国人宣教師にちがいない」だったり、
「外国帰りのエリートだ」とか、
社会派っていうよりただの欧米嫌いだな!
って感じが滲みまくってません?

日本人は弱者で真実を知っていても明らかにできないんだよっていう。
それが当時の真実だったんだよと言われれば、よくわからないけど……。
日本人は、外国人の陰謀だって言われると全部そんな気がしちゃうので、
ずるいところに話を落ち着けて読者を納得させる癖があるよな、と思います。
>オジロさん

お久しぶりです。
コメントありがとうございます。
しかも「面白いですね!」は
何より嬉しい言葉です。

ご指摘のとおり、きっと清張は外国人
コンプレッスの塊だったのかもしれないですね。

まぁ日本人そのものが、謂れのない外国人
コンプレックスを持ってるので、ソレで納得して
しまうんでしょうが、やっぱりチョット哀しい
気がします……。

ってか、カナリ遅れましたが、
誕生日おめでとうございますバースデー

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