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Invitation card for Mazeコミュの13th card;皇女アナスタシア

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「文学的要素が高い」と評される事が多い私小説などの純文学に
対し、ミステリ(推理小説)は、どこかしら文壇(ぶんだん)の隅へ追い
やられていると云(い)った印象は否めない。

たしかに心象風景を描いていく事に重きを置く私小説の中には
読む者の心を揺さぶり多くの感動と共感を呼ぶ作品もあるだろう。

だが、ミステリというジャンルに置いてもエド・マクヴェイン著の『わが町』
シリーズを始め、有栖川有栖著『月光ゲーム』、法月倫太郎著『頼子
のために』など、事件そのものより登場人物の心理描写に注力
する事で感動を誘(いざな)う作品は少なからず存在している。

ただしミステリでは、登場人物の心理描写と云った文学的要素より
トリックや犯人の意外性が評価の対象として先んじられてしまう為、
総じて文学的評価が後手に回ってしまうのであろう。

ゆえに日本のミステリにおける三大名作と称される『虚無への供物』
(中井英夫著)、『ドグラ・マグラ』(夢野久作著)、『黒死館殺人事件』
(小栗虫太郎著)にしても文学的に見れば奇書と云う程度の評価
しか得られていない。

さらには耽美派作家として『卍』『痴人の愛』などの作品で知ら
れる谷崎潤一郎は『途上にて』を、『堕落論』『白痴』などを著
(あらわ)した無頼派作家の坂口安吾も『不連続殺人事件』『心霊
殺人事件』を始めとするミステリ群を綴っているが、文学史上で語られ
ることは少ないのが実情となっている。

ミステリを愛する者にとっては残念至極(しごく)という他はないが、
放浪の詩人アルチュール・ランボーの詩作や破天荒な画家ロートレックの作品が
死後初めて高い評価を得られたように、ミステリにも、いつの日か文
学的評価における光明が射す事を願うしかない。

それはさて措き、ミステリの魅力的プロットとして多くの作者が描いて
いるのが『ハウダニット』(HOW DONE IT=どのようにして犯罪が成さ
れたかを謎の中心に置くミステリ)と『フーダニット』(WHO DONE IT=誰
が犯人であるかが謎の中心となっているミステリ。いわゆる犯人当て)
である。

ただし『ハウダニット』をプロットにしているミステリの場合、綾辻行人著『十角
館の殺人』『人形館の殺人』などTVプログラムや映画といった映像では
表現出来ないケースも少なくない為、実際に映像化されるのは『フーダニット』
をテーマにしたものが圧倒的に多い。

とりわけTVプログラムにおける2時間サスペンス物はほとんどが『フーダニット』
といっても過言ではないであろう。

しかし2時間という時間的区切り(CFが入るので正味90分強)がある為、
どう贔屓(ひいき)目に見ても、「お粗末(そまつ)」としか云えない作品
が大多数を占めているのが事実である。

たとえば某作品では警察が犯人と目星をつけている容疑者宅から
殺人に使われた凶器が発見され、捜査陣が改めて犯人である事を
確信する、といったシーンが描かれていた。

ちなみに、このシーンに至るまで犯人と目される男は容疑を完全に
否認し、発見された凶器には指紋すら付着していないのにである。

普通に考えても、凶器から指紋を拭き取るという慎重な行動を
とった男が、自宅に凶器を隠すような軽率(けいそつ)な行動を
取るわけがないだろう。にもかかわらずサスペンスドラマに登場する
捜査関係者は何の疑問すら懐(いだ)かないのである。

日本の警察が世界的にも有能であることは周知の事実であり、
いくら素人探偵の活躍を派手に描きたいにしても、ここまで警
察が愚(おろ)かでない事は多くの視聴者が知るところであろう。

また相変わらず、誘拐(ゆうかい)などの脅迫電話シーンにおいて、
「逆探知に失敗しました」などの台詞(せりふ)が見受けられるが、
一般家庭における電話にもナンバーディスプレイが普通になっている
現状を鑑(かんが)みれば、こんな事態が有り得ない事は火を見る
より明らかである。

もし本当に逆探知に失敗しているとすれば警察が持つ技術力は
一般家庭にあるナンバーディスプレイ機能を備えた電話より劣るという
事になってしまう(実際の捜査に使用される逆探知に関する機器
は着信から0.2秒で送信先を確認出来るの)。

「どうせサスペンスを見ている視聴者のレヴェルなんてこんなもの……」
と思っているのだとすればTVプログラムの制作者側には猛省(もう
しょう)を促したい。

彼女は何者だったのか……

視聴者を愚弄したようなTVのサスペンスは別として、ミステリで数多く
描かれている『ハウダニット』『フーダニット』以上に不思議なストーリーを
自らの人生で綴(つづ)ったのが1984(昭和59)年2月12日、アメリカ・
バージニア州シャーロッツヒルにあるマーサ・ジェファーソン病院で息を引き取った
アンナ・マナハン(享年82歳)なる女性である。

じつは、この女性こそ終生にわたり「自分はロマノフ王朝の皇帝ニコライ
2世の四女アナスタシア皇女である」と主張しつづけ、裁判まで起こした
人物なのだ。

ちなみに現在定説とされてる史実に基づくとロシア革命の際、ニコライ
2世と彼の家族はエカテリンブルグで全員虐殺された事になっている。
ただし家族全員について遺体が発見されたわけではなく、一部には
生存者が居るのではと云う説を唱える学者もいる事は事実である。

そのせいもあってかロシア革命後のヨーロッパ各地において「自分はロマノフ
王朝の末裔(まつえい)」と名乗る者が相次いでいる。

もちろん、ほとんどは即座に偽者と看破(かんぱ)され、信用を得るに
値しなかったが、その中で最後まで本物か偽者か判断がつかなかった
のが前述したアンナ・マナハンだったのである。

事の始まりは1920(大正9)年に遡(さかのぼ)る。
2月27日夕刻。1人の女性がベルリンにある運河へ投身自殺しようとして
警察官に保護されたところからストーリーは始まる。

身分を証明する物は何一つなく体中傷だらけだったこの女性は、ひど
く衰弱していたことから病院へ収容された。

数か月後にわたる入院の間、「礼儀正しく非常に上品である」と評判
になるほど彼女の言動は洗練されたものであった。

そんなある日。彼女はふいに「私はロマノフ王朝の皇帝ニコライ2世の四女アナスタシア
皇女です」と名乗ったのである。さらに「皇帝と家族が虐殺された時に気
を失っい、気づいた時にはエカテリンブルグの護衛兵に助けられていた」事、
「その後彼と共にベルリンまで逃れてきたが、その彼が突如として行方不明
となり絶望のあまり身投げしようとした」などと語ったのである。

彼女の発言が報道されると同時にヨーロッパに亡命していたロシア人の間から
「彼女は本物だ」と支持者が現れる一方、当然のごとく否定する者も数多
く現出(げんしゅつ)した。

ただし、アンナはアナスタシア本人である事を明らかにする為の物的証拠を
何一つ身につけていなかった為、その後も彼女が本物であるか偽者
であるかという論争は繰り返された。

そして迎えた1950年代。アンナは遂にベルリンの裁判所に対しロマノフ王朝の
財産相続に関する訴訟を起こしたのである。

以降、裁判は1979(昭和45)年まで続く事になるが、旧西ドイツの最高
裁判所は最終的に彼女の訴えを退けている。が、アンナ・マナハンが皇女アナ
スタシアであるかについては「どちらともいえない」と云う極めて曖昧
(あいまい)な結論を示すに止まっている。

その後、アンナは渡米しアメリカ人でロマノフ王朝に関する研究者として名高い
歴史学教授ジョン・マナハンと結婚。バージニア州へと移り住み、波乱(はらん)
に満ちた生涯(しょうがい)を終えている。

20年近い裁判が行われたにもかかわらず、アナスタシア皇女本人かどうか
分からなかったアンナ・マナハン。彼女は果たして何者だったのだろうか。

史実は間違っていたのか……

もちろんアンナ本人が亡くなった今となっては、彼女の主張が真実か否
(いな)かを完全に導き出すことは不可能に近いと言わざるを得ない。

ただし、アンナの主張が正しかったのではと思わせる外電が1993(平成5)
年7月、日本にも伝えられている。

この報道によると1991(平成3)年にロシア東部で見つかったニコライ2世と
彼の家族とされる遺体を、ロシア皇帝の遠い親戚にあたるエリザベス女王
の夫フィリップ殿下や皇帝の末裔などの協力を得てDNA鑑定したところ
98・5%の確率で当人たちである、と云う結論を得られたというのだ。

ただしDNA鑑定の対象とされた遺体の数は史実で伝えられている物
からは1体足りず、ニコライ2世と彼の家族のうち誰か1人が生き残った
可能性を示唆(しさ)するものであった。

アンナがアナスタシア皇女として認められなかった理由の1つにロシアで育ち
ながらロシア語を一切話せなかったと云うものがある。が、逆に考え
れば、だからこそ本物であるとも言えるのではないだろうか。

日本人でさえも英会話スクールへ通えば、まがりなりにも英語を話す
事が出来るようになるのだから、もともとロシア人のアンナであれば、も
し偽者であったとしてもロシア語を学びさえすれば話す事はたやすか
ったはずだろう。

にもかかわらずロシア語を話さなかったのはトラウマにも似た精神的ショック
もしくはそれ以上の重篤(じゅうとく)な事態がアンナの身に起こった
からではないのだろうか(目の前で家族全員が虐殺されたような)。
また偽者であったのなら、20年もの間裁判を続けたであろうか。

ジャック・ザ・リッパーの正体が同様のDNA鑑定でほぼ判明したように、今後、
歴史の闇に葬(ほうむ)られていた犯罪や史実そのものが覆(くつがえ)
される事も少なくないのではないだろうか……。

今、真実として伝えられている歴史は、単なる誤解にしか過ぎない
のかもしれない。

いつの時代にあっても唯一の真理は愛であり、希(ねが)い懐き
未来を紡(つむ)いでいく人は、過去さえ塗り替えてしまうだろう。

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