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Invitation card for Mazeコミュの15th card ;オハイオの切り裂きジャック

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……29年にも及ぶ長い道のり

罪を犯した者を裁く法理論の大原則には「疑わしきは罰せず」と
云うものある。よって、たとえ果てしなくクロ(有罪)に近い印象が
あろうとも、決め手となるべき物的証拠がなければ被告人の利益
となるシロ(無罪)と判定されることとなる。

被疑者として逮捕され勾留を経た後に起訴、裁判になったとしても
地方裁判所での判決に不服がある場合は高等裁判所、さらに高裁でも
納得出来なければ最高裁判所と3度にわたる裁判を受ける権利を有する
のも間違った判決を防ぐ為であり、被告人の人権を十分なまでに配慮す
るシステムとなっている。

にもかかわらず、我が国においては近年だけでも、確定死刑事案であった
『松山事件』『島田事件』『財田川事件』『免田事件』の4事件が再審
無罪になるなど被疑者の人生を蹂躙する冤罪が生まれている。

覚えている人も皆無に近いかもしれないが、前述した4事件のうちの1つ
である『松山事件』は、筆者が暮らす宮城県を舞台としたものであり、
我が国で最初に再審無罪を勝ち取った事件としても知られている。

『松山事件』が起こったのは昭和30年10月18日未明。宮城県志田郡松山町
新田で農業を営んでいたO原さん(当時54歳)方が焼け、焼け跡からO原さん
と妻(当時42歳)に加え四女(当時10歳)、長男(当時6歳)の焼死体が発見され
たのである。

失火による事故説、無理心中説なども囁かれたが、検死の結果、4体ともに
一酸化炭素を吸っていない事(発火当時既に死亡していた事を示す。ただ
O原さんには火事発生後も生きていた痕跡が見受けられた)、頭部などに
それぞれ複数の創傷がある事などから強盗殺人・放火事件として県警等は
捜査を開始した。が、被害者に恨みを持つ者がいなかった事や目撃証言が
なかなか得られなかった事などもあり捜査は難航を極めた。

事件が進展したのは同年12月2日。別件の傷害容疑で逮捕された同町に住む
S藤Y夫(当時29歳)さんが取り調べで、この強盗殺人・放火事件に関して自白
したのである。

その後、S藤さんは一貫して否認を続けたものの仙台地方裁判所古川支部で
死刑判決を受ける。この判決を不服としたS藤さんは当然の如く控訴したが、
仙台高等裁判所はこれを棄却。さらに上告をするも1960(昭和35)年11月、最
高裁で上告棄却となり死刑が確定する事となった。

当時は世間全般に於いて冤罪などと云う認識は無いに等しく、このまま死刑が
確定するかに思われた。だが、ここで息子の無罪を信じる母親のHさんが立ち上
がったのである。死刑が確定するに及び、Hさんは翌年3月第一次再審請求を起
こしている。この時の請求は最高裁まで争ったものの認められる事はなかった。
それでもHさんは挫ける事なく1969(昭和44)年には第二次再審請求を起こして
いる。以来15年間にわたりHさんは仙台などの街頭に立っては必死に再審請求の
署名を集め回った。仙台に住む年配の方々の中には署名をした覚えはなくとも、
Hさんのこのような姿を見聞きした方もいるのではないだろうか(実は筆者も
学生時代に署名した記憶がある。後に取材する事になろうとは当時、思いもよら
なかったが……)。

この第二次再審請求も仙台地裁古川支部では棄却されたが、抗告審の仙台高裁
は審理手続きを不備として仙台地裁に差し戻しを行い、その審理中に最高裁が
再審の流れを変える新たな判断を下したことにより1979(昭和54)年12月、仙台
地裁は再審開始の決定を下す事となった。

この際、仙台地裁は「確定判決が有罪の決め手とした法医鑑定と自白は証拠と
して信用出来ない」としたが、これを不服とした検察側が抗告。再審の法廷は
先延ばしされる事となり、最終的に決定したのは1983(昭和58)年になってか
らであった。そして迎えた翌59年7月12日。仙台高裁は無罪の判決を言い渡し、
S藤氏は29年ぶりに社会復帰を果たしたのである。

筆者は平成10年にS藤氏、Hさん共に取材する機会を得、事件が発生してから
無罪判決を受けるまでの様子を詳しく聞く事が出来たが、「嫌で嫌で仕方な
かった。人生は終りだと思った」とHさんが語っていたとおり、その間の苦労
は筆舌を超えるものであった事は容易に推察された。

無論、釈放されたからと言ってS藤さん親子の29年という時間は決して戻る
事はなく、人生そのものがふいになったと言えなくもない。もちろん、現在の
警察や検察は正当な捜査・取り調べを行っている事は言うまでもないが、この
ような悲劇を2度と起こさない為にも裁判員として召喚される際は正しい判断
をしたいものである。

……首、両腕、性器が切り取られていた死体

この『松山事件』のように冤罪となる事件がある一方、限りなくクロに近い
容疑者が現れながらも迷宮入りしてしまう事件もある。1935(昭和10)年、アメ
リカはオハイオ州で発生した残忍な連続殺人もそんな事件の1つであった。

事件が幕を開けたのは同年9月。同州クリーブランドで男性の死体が発見されたのだ。
死体には首が無かっただけでなく両腕・性器が切り取られ傍らに置かれていた。

通報を受けて駆けつけた警察は直ちに周辺を調査。約30フィート離れた地点に同様
の死体をもう1体発見した他、すぐ近くで切断された2つの首も見つけている。

指紋照合や司法解剖などの結果、被害者の1人は質の悪い飲んだくれとして知
られるエドワード・アンドラシー(当時28歳)と判明したほか、悍(おぞ)ましい事には
生きたまま首を切られた事、また手首にきつく縛られた痕跡などがある事から
吊されたまま肉屋を思わせる包丁捌きで殺害された事なども推察された。だが、
被害者の足取りなどが掴めなかった事もあり捜査は難航し膠着状態となった。

事件が再び動き出したのは年が開けた1月。同州に位置するとある工場で再び
女性の死体が発見されたのだ。死体は4ケ月前に発見された物同様に頭部・左腕
のほか両足が膝から切断されていた。その後の捜査で被害者は娼婦(当時41歳)
と判明。死体発見から2週間後には現場から持ち去られていた左腕と両方の膝
下部分が近隣の空地から発見されている。

しかし容疑者を特定するには至らず、新たな捜査責任者として禁酒法時代
にシカゴのギャングを一掃した事でも知られるエリオット・ネス(映画『アンタッチャブル』に
も登場した名刑事)が着任した。住民はエリオットが指揮を執る事で早期における
事件解決を期待したが、この期待は見事なまでに裏切られる事となる。

1936(昭和11)年夏、首を切断された男性の死体(検死の結果、最初の死体同様
生きたまま首を切られた事が判明)が発見されたのを皮切りに、その3週間後
には首と性器を切り取られた男性の死体、翌年2月には女性の死体、その9ケ月
後には切断された黒人女性の頭部と男性のバラバラ死体、さらに又9ケ月後には
別の女性の死体の一部、その翌年8月にはバラバラにされた女性の胴体と別の
男性の骨が相次いで見つかったのである。

もちろん捜査陣もその間、手をこまねいていた訳ではない。被害者の多くが
浮浪者であった事から同州のスラム街として悪名高いキングスベリー・ランを焼き払い
多くの浮浪者を逮捕したほか、女性被害者の1人と同棲していた男を逮捕した
が、いずれも犯人ではなかった。

エリオットは以上の事実などから犯人は浮浪者などではなく、死体を持ち運ぶ車、
生きたまま首を切断する場所となる自宅や倉庫などを所有する上流階級の
人物で人体の切断に慣れている医者などと推理した。また、発見現場に残され
ていた靴跡から、かなり大柄な人物である事が明らかとなった。

結果。サンドハイムと呼ばれる上流階級に属する男が有力な容疑者として浮上した。
サンドハイムはかなりの長身であり、過去に精神病院への通院歴を持っていた。ただ
当時の風潮として上流階級の人間を容易に取り調べる事は難しく、すぐに逮捕
する訳にもいかなかった。

そこでエリオットは苦肉の策としてサンドハイムと食事名目で会い、「貴方が連続殺人事件
の犯人ではないのですか?」と、その場で直接問い質した。サンドハイムは「証拠はある
のですか」と応じただけだったが、直後自ら精神病院に入院し、入院先で自らの命
を絶っている。以降、死体を切断する殺人事件が発生する事はなく、エリオットが推理
したとおりサンドハイムが犯人だった蓋然性は限りなく高いと言えるであろう。

……浮浪者や娼婦だけを狙った理由

この事件が欧米などで発生した他の連続殺人事件と明らかに異なるのは、
男性・女性ともに被害者となっている点であろう。カリフォルニアの連続殺人鬼Zo
diac(ゾディアック)のようにカップルを狙って男女共に殺害した例もあるには
あるが、イギリスのJack The Ripper(ジャック・ザ・リッパー=切り裂きジャック)のよう
に娼婦などの女性だけを被害者に選ぶのが通常言われるところの連続殺人
のパターンと言えよう。

では何故、サンドハイムは男女の別なく殺害したのであろうか。正式な取り調べと
呼べるものが1度も行われなかった為、推測するしかないのだが、サンドハイムにと
っては男女の別よりも浮浪者や娼婦と云った身分の方が大切だったのではな
いだろうか。精神病院への通院歴が判明しているとおり精神に何らかの異常を
きたしていた事は明らかだが、その事実が上流階級における自らの立場を苦し
いものにした事は容易に推察出来る。それでもなお彼は上流階級に属する者と
して威厳を誇示する為に下位の身分である浮浪者や娼婦の殺害に至ったので
はないだろうか。
 
生きたまま首を切断し、死体を切り刻んだのも医者と同じ技術を持っている
事を示したかったのであろう。無論。これらはあくまでも推測の域を出るも
のではなく、精神に異常をきたした者が起こした、いわれ無き連続殺人事件
かもしれない。ただ、もしそうであったとしても貴重な人命が幾つも奪われた
ことは事実であり、決して許されるものでは無い事だけは明らかであろう。

コメント(2)

ありがとうございます。

これでもプロの物書きですからペン

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