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あざらしの談話室2コミュのFreedom-Fighter 23-4

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キックスも…変わったね…


出入り口の壁に、中からは見えないようにもたれて静かにつぶやくアカネ。そこへたまたま通りかかったはフェリスとミューレンス。

「なにしてんの?」

「あ、ミューちゃん」

「おやおや、あれはキックスと女子大生!」

「こら、フェリス。水をさしちゃダメ」

アカネが慌ててフェリスを引っ張る。

「へぇ〜あのキックスが…」

ミューレンスはそうは言いながらも特に驚いた様子はない。が、フェリスに関しては彼女の好きな恋ばな、しかも一切噂のないキックスとあって興奮ぎみ。アカネが必死になって彼女を抑え込みながら…


意外でしょ?


ミューレンスにニヤニヤ顔を見せた。

「もうあたしたちも、あいつらもいい年じゃん。恋のひとつやふたつ、許してもらえると思うんだけどな?」

そう語るアカネは、キックスとアリソンの事情はもう知ってる。アリソンが想いを寄せ、それに気付いたキックスがそれを受け入れ…

「でも、告白はしてないんでしょ?」

アカネに羽交い締めされながらも会話に加わるフェリス…。

「告白しないと2人の仲が深まらないことはないの。お互いをパートナーと信じてるから、今さら告白はできないでしょ。ま、プロポーズは別だけど?」

ミューレンスもニヤニヤ顔。


でもさ…


アカネは中をチラッと覗いて、再び頭上の星空を静かに仰ぐ。


キックスも…成長したんだね


キックスの恋愛不器用は仲間内では知れた話だ。というより、彼ら5人は青春期というものを、戦争に費やしてしまっている。ハスティーこそキャンパスライフを謳歌していたが、他の4人はそれはおろか、前の大戦が終わったあとも軍属として過ごしていた。基地内でかわいい女性隊員を見ることはあっても、プライベートの付き合いはないに等しい。


キックスは…コトちゃんのこともあるしね…


コトちゃん…かつて『STAR-ANGELS』で共に戦ったコトレア=ヨークのことだ。トサノコク攻防戦でパニックに陥り敵陣に突撃を仕掛けてしまい戦死してしまった。そのコトレアはキックスと仲が良かった。恋仲になることはなかったが、もし生きていたら…。


アリソンは、キックスが初恋なのかなぁ?


フェリスの素朴な疑問。アカネとミューレンスは同時にそれはないだろと否定する。今の大学生は恋愛し放題なんだ、とか根拠の所在を確認したくなるような会話が続いた。3人は場所を自分達のスペースに移して、真夜中まで話の花が咲いたらしい。平和な世の中ではごく当たり前にあるような、そんな空気が彼女達を包んでいた。本来あるべき姿というべきか、なんと表すべきか…。


翌日…それぞれの準備を始める日…一番恐れていた事が起きてしまった。早朝、ヘテロクロミアキャットからガーランドへ、艦載ヘリで移乗してきたのは、ハスティーとミルフィー。これで治療中のウイングを除いた全員が上陸することになる。2人は上陸用舟艇には乗らず、ガーランドに便乗した海兵隊ヘリコプターに乗り換えそのままキャンプベルベットを目指した。しかし途中でキャンプから緊急連絡が入り、急遽砂浜ギリギリの高度でホバリング、ぴょんと飛び降りることに。


2人は急ぎ砂浜から離れて防風林に駆け込む…


「なにがあったんですか?」

息を切らしてミルフィーはハスティーに聞いてみた。しかしハスティーも『異変が起きた』としか答えられなかった。その異変はすぐに何かはっきりした。2人が迎えの車を待っているときだった。遠くで風を切る音が聞こえ、やがて山腹に連続した爆発音…。それは砂浜からでも確認できるものだった。黒煙が上がる。キャンプベルベットの方角だった。


砲撃だ…まさか…


直後にアリシアが猛スピードで車を走らせてきた。

「キャンプベルベット付近に着弾、急いで!」

言われるがまま2人は車に乗り込んだ。アリシアはすぐにキャンプベルベットに向けて車を走らせる。

「…あたしに状況を聞かないでね」

アリシアも状況がわからなかった。が、方角からしてキャンプベルベットであることはわかっていた。

「多分、新式の散弾式ミサイルだと思う…」

リジェルバルタが新たに開発した遠距離攻撃ミサイル。一種の弾道ミサイルだ。目標上空で内蔵の小型爆弾を拡散させて攻撃する。無差別に攻撃するためにある武器である。

「一部が目標から逸れたのか…完全な流れ弾だな」

流れ弾だとすれば、本来の攻撃目標は、オーガンシティーとなるのだろうか。キャンプベルベットに近付くと、あちこちに着弾の痕が確認できた。単なる流れ弾にしては少々多い印象だった。入り口まで来ると状況はかなり混乱していた。数人が担架に乗せられて救護スペースに運ばれていた。

「先輩っ!」

ミルフィーがアリソンの姿を見つけた。彼女はひとり座り込んでいた。様子がおかしい。ハスティーも駆け寄った。アリソンに怪我はなかった。

「ハスティー!」

アカネとマリミーナが走ってきた。顔色は明らかに悪かった。


キックスが負傷した


ハスティーは言葉を失った。聞けば、その時アリソンと2人で散歩をしていたらしい。散歩と言っても、4番隊と5番隊の出発見送りのついでだ。そこへ突然風を切る音が聞こえ…周囲に計7発の着弾があったのだ。キックスはアリソンを庇い伏せたのだが、その際に破片が脇腹を刺さった…という。

「それで、アリソンは自分のせいでって…」

ハスティーはアリソンを一瞥して

「アカネ、悪いが、マリミーナとアリシアとミルフィーと一緒に…いてやってくれ」

そう言って歩きだした。

「ハスティーは…?」

マリミーナが呼び止めた。ミルフィーも続く。

「先輩も一緒にいてもらえませんか?」

ハスティーはそのまま立ち止まったが、振り返り…


ぼくは、キックスの代わりに仕事しなきゃいけない…。これでも、この作戦の、APURG部隊の隊長なんだよ


そう言い切り、苦笑いして見せた。その表情ですべてを悟ったかはわからないが、ミルフィーは頭を下げて


頑張ってください


これにはハスティーも笑ってしまった。ミルフィー、それは皮肉にもとれるよ、と笑いながら、その場をあとにした。

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