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あざらしの談話室2コミュのFreedom-Fighter 27-1

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27 オーガンシティーの戦い その2


OCNUにはフリッツらが早く着いた。フリッツ、サレンス、カサネ、メンフィスが練習場に向かうと、ハスティーは一人部屋でぼーっとしていた。それになにか哀愁というか憤りさえ漂う雰囲気だった。長年戦場で一緒だった人間には、それがすぐに伝わった。

「どうしたの、ハスティー」

さすがにびっくりした…というか聞いておかなければいけないと思ったのか、サレンスが口を開く。しかしハスティーは「うん」としか答えなかった。それを聞いてフリッツのサレンスもメンフィスも、静かな憤りの理由を想像した。


エルバート軍の一部がオーガンシティーから撤退した


その場の全員の顔が凍り付いた。少し前にベルベットから緊急の秘匿連絡が届いていた。それは、オーガン基地がリジェルバルタの戦闘機、巡航ミサイルに襲われ基地司令部が壊滅、指揮官はじめ主要の士官らが軒並み戦死。これにより部隊の指揮系統は寸断、身動きが取れなくなった残存部隊は上層部の判断でオーガンシティーからの撤退をすることになった。

「じゃあ…この町はどうなるんですか?」

カサネのようやく出てきた言葉に、ハスティーは静かにみんなを向いて


ぼくたちが護るしかないんだよ


彼は今にも泣きそうだった。悲しさ、怒り、辛さ…いろんな感情が入り混じった、そんな表情だった。

「ハスティーくん、具体的にはどうするの?」

奥の部屋からリェスターが出てきた。手には何やら紙束が…

「まかりなりにもあなたは前線司令官。そんな人が感情に振り回されて指揮するのは部下に失礼だし、迷惑よ?」

リェスターの言うことはもっともだ。常に冷静で判断する彼と比べても、今のハスティーはらしくない。彼女は持っていた紙束を床に広げた。それを他の者が囲むように立つ。


「下士官の戯言として聞いてほしい。オーガン基地が放棄されているのなら、思い切って基地を占領するの」


驚いた。ロビンソンでさえ考えつかないかもしれない、思い切ったものだ。


「でもこれには、リスクも大きい。そこを…かつての特務小隊のメンバーがキーになるかもしれない」


実際のところ、オーガン基地にはまだ多くのエルバート軍兵士がいた。臨時第25特務隊らがOCNUに帰還した後、再度作戦会議が持たれ、翌日にリュージェ隊と第25特務隊による追加調査を実施。それで発覚したのは、残る兵士のほとんどは後方隊員で、戦闘に参加できる兵士は少ないとのこと。つまるところ基地に残る戦力に戦闘能力はないに等しい。


具体的な作戦会議はベルベットで行われた。そして正式に決まるまでは待機せざるを得なかった。


「准佐、お客様です」


場所は数日後のベルベットの野戦病棟。その一室にキックスはいた。ベットの上で上体を起こして読書していた。その隣で椅子に座りアリソンがこれまた読書。そこへ衛生兵が連れてきたのは…

「准佐殿は恋愛小説に夢中のようだな?」

訪れたのはロビンソンだった。その後ろにティッピー、メランコリー、アンリエッタ。

「ゆかに勧められたんだ、なかなか面白いです」

もはや『ゆか』と呼ぶことに迷いはないようだ。ロビンソンはにやつく…

「あまりまったりしすぎるのは…ラプターに怒られるぞ」

キックスは思わず笑った。そして、本を閉じた。

「みんなには心配と迷惑をかけました」

そのままの体勢のまま、頭を下げた。するとロビンソンは高笑いし、お前には休養が必要だったんだ、そう考えて休んでいろ…そう言った。

「彼女とゆっくり過ごせるなんて、そうないかもしれないんだよ?」

ニヤニヤしながらアンリエッタも続いた。アリソンは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

「開戦してから、みんないっぱいいっぱいなんだ。どこかでガス抜きをしておかないと、命に係わるからな」

ロビンソンはそういうと、フリッツとラプターにも交代で休養を与えたいくらいだ、こうも語った。

「そう言うなら、ずっと休んでいたいよ」

キックスは笑って言った。

「あぁ、休めるときには休んでおけばいい。もうじき、君の代わりの部隊が動き出す。そうなれば少しは楽になるだろう」

ロビンソンの言葉に、キックスの目付きが変わった。続く言葉を聞いて彼は「そうか」と一言呟いて、本を開いた。

「第5戦隊って…まさか…」

アリソンは驚きと同時に嬉しさの表情を浮かべた。APURG第14特務隊第5戦隊といえば、それ以上は説明不要だろう。

「やつの身体はいずれ研究検体になるかもしれないな」

もちろん冗談だが、あまり笑える話ではない。その第5戦隊は、ボエラニアで盛んに戦闘訓練を重ねているらしい。

「しかし、オーガンシティーがあぁなるとは思わなかったな」

ロビンソンは真顔になりキックスのそばに腰を下ろした。もちろんなんのことかさっぱりなキックスは、当然のごとく質問する。さすがに気になったのか、アリソンも…。

「オーガンシティーが、事実上の陥落よ」

トーンを下げたアンリエッタ。メランコリーもどこか寂しげだった。

「どういうことだ!」

思わず声を荒げるキックス。アリソンに至ってはびっくりのあまり声も出なかった。ロビンソンは彼を落ち着かせて話を始めた…基地が空爆で壊滅、指揮系統も寸断、もはや継戦能力を失ってしまっていること…キックスも絶句していた。

「じゃあ…これからどうなるんですか? OCRGは?」

アリソンはショックのあまり泣きそうだった。

「6番隊、8番隊はほぼ全滅、10番隊も半数がやられてる…旗色は今のところ最悪よ」

メランコリーの言葉に、アリソンもキックスも、黙りこんでしまった。ロビンソンはそこで、さっき決まった新たな作戦を2人に説明し始めた。


オーガン基地占拠


「実はオーガンシティーにリュージェがいるらしい。彼女にも協力してもらい、部隊の拠点をオーガン基地に構えるつもりだ」

次から次に2人を絶句に追い込むロビンソンら。すでにリェスターの第301戦術海兵師団がオーガン基地に向かう準備を進めていた。さらにOCRG10番隊、久斗率いる10番戦車隊、支援要員としてAPURG第14特務隊第1戦隊(OCRG6番隊の残存メンバー含む)、第24特務隊(8番隊残存メンバー含む)も参加する。ほぼ総出といっても過言ではない。

「数日のうちに制圧は終わるだろう。基地には大きなシェルターもある。そこに避難民を集めたら、少なくとも彼らを死に追いやることはないだろう」

ここまでやれば、さすがにエルバートも黙ってはいないはずだ。しかし実際のところ主力部隊のオーガンシティー撤退の話は、民衆の間にも信憑性の高い話としてかなりの勢いで広がっていた。また、かつてエルバート軍海兵隊に存在した極秘の少年兵部隊が救国に立ち上がって活動を開始しているという噂も…。

「へぇ〜そうなんだ?」

2日後、OCNUに多くの避難民がやってきたのだが、そのほとんどが子供を連れていたのだ。その相手をミルフィー、そして前日にやってきたティッピーが担当していた。

「おかあさんがね、いってた!」

まだ4つ5つくらいの女の子が、嬉しそうに言っていた。

「へぇ〜そうなんだ? かっこいいのかなぁ?」

ミルフィーはうれしそうに会話していた。

「すごくかっこいい人なのかなぁ?」
「どうだろうね…かっこいいお兄さんだといいね!」
「ミルフィー、どうしたの? すごく笑顔じゃん」

そこにやってきたのは『噂されていた少年兵』のひとり、フリッツだ。ミルフィーは「昔エルバートを救ったかっこいいおにいさんの話」を丹念に説明した。そばでティッピーがクスクス笑っていたのに気付いていたかいなかったかは別にして、フリッツは照れ臭そうだった。

「そっか…みんな知ってるんだね」

フリッツは女の子の頭を撫でながら言った。それを見て羨望の目で見てたティッピーには気付かず…。

「もしかしたら、会えるかもしれないよ?」

そう言うと頭をポンポンとしてその場を離れた。


とし坊にも、あんな一面があったなんてね〜


フリッツがビクッとして、ゆっくり声のした方をむいた。セミロングの金髪、平均的な身長、なによりサレンスと同等かそれ以上の気の持ち主。

「りゅ、リュージェ…」

名前をいい終える前に抱きつかれた。

「なかなか話しかけられなかったからさ〜。こっちもいろいろ忙しかったし?」
「ちょっと、離してよ〜」

パッと離れる。フリッツの動揺をよそにリュージェはにこやかだ。その後ろに珍しくひきつり顔のサレンス。そして小さく謝るポーズ。

「教えたらあんた逃げ回るでしょ? それに涼と一緒のとこにこの人連れてくのも、さぁ」

一応気を遣ってくれたらしい。ちなみに土浦はあと30分くらいしたらやってくるようだ。

「結構かわいらしい子じゃない。サレンスとか真逆ね」

もはや2人とも苦笑い。リュージェはOCNUに着いてすぐにAPURGメンバーのことを調べていた。もっとも調べると言ってもかつてのメンバーから雑談がてら聞いただけだか。


聖戦義勇兵団と一緒にいたみたいね


フリッツの目付きがわずかに変化した。

「そんな目をしないの。フリッツらしいなって思ったのよ。安心してる」

きょとんとした顔をするフリッツ。


あの兵団、最後はどうなったか知ってる?


フリッツはわからなかった。厳密には停戦までには全滅したがそれ以外は全く、といった感じだ。

「女性陣は確かにあの作戦のあと解放された。でも兵団の一部が再度呼び寄せていた…それが、クーベルト閣下の耳にはいった」

どうやら彼の逆鱗に触れたようで、トサノコク攻防戦にとある部隊の先鋒として回され早い段階で全滅したという。

「あの子、兵団と行動した女性陣の唯一の生き残りよ」

知らなかった。恐らく本人も解放されて以降は離れていたため、情報は知らないはずだ。

「まぁ、再度呼ばれたらしいけど、逃げ出したそうよ。捕まったけど、たまたまそこにミューレンスとウイングが通りかかって…」

兵団はクーベルト軍のケリー=ランドルフの隊に全員が拘束され…。

「だから、あの子を守れるのは、あんただけよ?」

フリッツの顔からは『今さらそんなこと…』と言わんばかりの意思が伝わってきた。もちろんリュージェもサレンスもわかっていた。

「まさか、こんな立場になるなんて思わなかったよ」

嬉しさと戸惑いと、そして不安が入り交じった表情を見せる弱冠22歳のバックス フリッツ…。それがかわいく見えたのかはたまた母性か、リュージェは彼を優しく抱きしめたのだ。驚いたのはフリッツ、そしてサレンスと…。


何をしてるんですか?


背後からの声に振り向いたサレンスの目には、この場を一番見てはいけない人物が映った。

「ちょっとリュージェっ!」

珍しく慌てた彼女は全力で2人を引き剥がす。そして2人もすぐに状況を把握するのだった。

「えっと…この人、昔からこんなだから、別に深い事ではなんだよ?」

珍しく慌ててフォローするサレンス…。涼は最初こそなにも言わなかったが「ロビンソン閣下がお着きです」そう言い残してその場を去っていった。


あたしだって…


サレンスらには聞こえなかった一言…しかし偶然入れ違いでやって来たツインサクラメントがそれを聞き逃さなかった。

「…どうかしたの?」

マリミーナが不思議そうに質問する。もっとも最後の一言はリュージェ、サレンス、フリッツには聞こえていなかった。すぐ直前の顛末をサレンスから説明してもらい、状況が繋がったのか、2人して苦笑い。

「きっと涼ちゃんもしたかったに違いない!」

ウキウキしながら涼の後を追いアリシアはその場を去った。


あ!ホームランのお姉ちゃんだ!


あれよあれよと子供に囲まれるマリミーナ。どうも先日子供たちに混じって野球をしたときに、特大のホームランを放ったとか。これをきっかけにその場は野球の話になってしまう…。

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