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あざらしの談話室2コミュのFreedom-Fighter 23-1

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23 オーガンシティー展開 その3


「慌てるな!ゆっくり乗り込め!」

APURGの強襲揚陸艦『ガーランド』では、先行上陸するAPURG第301戦術海兵師団の隊員が上陸のために舟艇に乗り込んでいた。その師団を指揮する者は…


あのリェスター・バーナードだった


この第301戦術海兵師団はつい先日結団された新しい部隊のひとつで、隊員の半数以上が元リジェルバルタ軍の兵士や、リジェルバルタからの移民で今回の戦争で志願した者、かつてリジェルバルタに進駐していた元エルバート軍の兵士が占めている。

兵士を乗せ終えた舟艇は次々に発進、ガーランド他舟艇輸送艦の周囲で待機した後、足並み揃えて岸を目指し始めた。

「諸君ら第301戦術海兵師団が、実戦部隊として最初に戦場に投入される。OCRGの戦友は我々が上陸地点を固めないと安心して上陸することができない」

リェスターは出撃前の、ロビンソンの訓示を思い出していた。今回の作戦はあくまでもリジェルバルタの侵略領土拡大を阻止することだ。

「リジェルバルタをエルバートの外に追い出したら作戦は終了…とはいかないだろう。しかし、リジェルバルタの中にも、我々に賛同するメンバーがいる。彼らと共に解放するためにも、是非命を大切に頑張ってもらいたい」

彼女は、ただリジェルバルタを討つことをよしとしないロビンソンの考えに驚いた。そしてなにより命を守れということに、疑問さえ抱いていた。それをガーランドに乗艦する際に訊ねていた。


君の任務を代わって遂行できる者は、探せばいるだろう

しかし、君自身の代わりはいないんだぞ?

生きていれば戦い続けることができる

君がこの世に授かった本当の意味を知るべきだ

戦争で死ぬことが授かった意味ではないはずだ


リェスターはダガイで捕虜となった時に死を覚悟したらしい。銃撃戦で付き人は戦死、しかも見事に頭を撃たれていた。リェスター本人に銃撃戦の負傷はなかったが、足を滑らせその場に倒れてしまった。

「敵には頭をきれいに撃ち抜く腕を持つ者がいる…」

これまでに感じたことのない恐怖に身体が震えた。その直後にウイングが走ってきたのだ。

ウイングはすぐには撃たなかった。彼が見たときにはすでに仰向けに倒れていて、起き上がろうとしていた。でも表情がこわばっていた。さらに手元に武器がなかった。それがわかると、彼は拘束することにして、仲間を呼び寄せ連行したのだ。


攻撃意思のない人間を撃つ理由はない


偉いさんなら殺さずに捕獲したほうが有益だ、というのがウイングの考えなのだ。本心は極力無駄な殺生をしたくないのだが…。

「いいか!絶対に死ぬなよ!」

乗り込む舟艇に同乗する兵士達に話し掛けた。

「ガーランドより、舟艇発進連絡。あと数分で到達するかと…」

一方、上陸地点では、APURG第24特務遊撃隊のアンリ、コリーがスタンバイしていた。またルッカ・アカネ・フェリスがこの日付けで第24特務遊撃隊の第102支援小隊に配属となった。

「もうすぐ輸送車第一陣が着くって」

ルッカが飲み物を持ってアカネの隣に座った。第一陣にはアリシアが、第二陣にはマリミーナがそれぞれ同行していた。

「しかし、トサノコクも思いきったことをするよね」

前の大戦で一番被害を被ったのはトサノコクである。そのトサノコクが、一歩間違えたら再び国が燃えるかもしれないという、バクチに出たのだ。もちろんこれは公式な行動ではない。

「そりゃ、いろいろあるからね、この国は…」

アカネはそう答えた。トサノコクには、裏でAPURGを全面バックアップしているリミテッド社の航空機部門がある。戦闘機を作る特殊航空機部門も山あいになるが、存在している。特殊航空機といっても、救難飛行艇やヘリコプターであって、表向きには戦闘機生産は行っていない。

「人道的立場とはいえ、軍用車両を運用するわけだからね…」

「難しいね」

そこへフェリスがやってきた。同時にかすかにエンジン音が聞こえてきた。スタンバイする隊員達が慌ただしく動き出した。波打ち際に近付いていく。暗闇だが、肉眼でも上陸用舟艇の形がはっきりわかってきた。

船首底が砂浜に接地、扉がゆっくり前に倒れ、隊員達が足早に扉をつたい砂浜に上陸を始めた。

「そのまま木陰まで行け!装備を解くのはそのあとだ!」

上官の指示に従い静かに上陸していく隊員。夜の始め、月明かりでかろうじて姿は確認できる程度。ぞろぞろと動くそれは仲間でさえ不気味に感じた。

「リェスターさん」

アカネがリェスターを呼び止めた。彼女も気付きアカネの元へ…。

「もしかして…アカネ・レギュース?」

「はい、少佐。お久しぶりです」

リェスターは思わずアカネを抱きしめた。

「あのときのあなたが、生きていたのね」

この2人、実はかつて一度だけ戦場で出会っている。それはアカネが足を吹き飛ばされた時だ。もちろんフェリスもその場にいた。アカネとフェリス、他に陸軍兵士3人がいた。が、3人はその時に戦死、フェリスがアカネを庇い左腕を撃たれた時に現れたのがリェスターと4人の部下だった。

「あのときは驚いたわ…まだ10代だったでしょ? 連れていく気も起こらなかったもの」

連れて帰れば丁重に扱われないと知っていたリェスターは、そう易々と捕虜としたくなかった。その思いが天に通じたかは別にして、直後に爆発を聞きつけたエルバート海兵隊がラプター先頭に現れたため、リェスターはアカネらをその場に放置して立ち去ったのだ。

「海兵隊が来ていなかったら、一度陣地に連れ帰って、民間人として保護しようかとも考えたけど…海兵隊が来たから任せようって」

あの時は、涙が止まらなかった。まだ10代の少女を戦士に訓練したエルバートが許せなかった。が、それよりも、アカネの足を吹き飛ばした自責の念のほうが強かった。


なにもあんな女の子の足を奪わなくても…


後日、上官には「これが戦争なのだ。幼い少女を兵士に使うのがエルバートなのだ」と言われた。理由はない、エルバートだからだ、それだけだった。そんな軍が嫌になっていた。しかし、彼女には老いた両親がいた。そしてなにより、稼ぎ頭がリェスターだった。

「私が軍を辞めたら、両親の面倒を見る人がいなくなる…だから、退役は考えられなかった」

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